猫耳少年と青年
今現在と表記してますが実際に関係はありません。
あくまでも物語での現在という意味です。
今現在、地球に生存する希少種はほぼ絶滅してしまった。
地球に存在する生き物は人間と共存するペットだけとなった。
そんな時代に一人の少年が産まれた。少年は幼くして両親を失い、施設で暮らしていた。
だがある日を境に少年の身に変化がおとずれた。
頭から覗く獣の耳と尾てい骨から伸びた尻尾が突然姿を現した。
多くの人が好奇な眼差しで見つめ同時に恐怖の顔を浮かべた。
施設側はそんな少年を化物扱いし、追い出してしまった。
行く当てもない少年は街の奥地へと姿を消した。
後になって施設側は後悔するのだった。
それは少年がかつて生存していた人種の生き残りかもしれないと知ったからだ。
それが事実であればその価値は計り知れない物だった。
だがそれもすべて後の祭り。少年の消息はつかめなかった。
街の奥地へと足を進めた少年はその外観に驚いた。同じ街とは思えないほど廃れていたからだ。
「おぉ、いいもん着てんじゃねか」
「何だぁ?その耳。ファッションか?」
冷やかし気味に少年を囲む二人組の男。
「まぁ、いい。金だせや」
「・・・もってない」
「あぁ!?だったら今着てるその服置いていけや」
声を荒げて怒鳴る男に少年は静かに従った。
するとそこに誰かが駆け込んで来たかと思うと少年の手をとった。
「走って!」
少年の手を掴みながら促す青年に少年は必死に走った。
咄嗟の事に遅れをとりながらも後を追いかける二人組に青年は顔を顰めた。
「チッ。ホントしつこい!!」
辺りにあるゴミをなぎ倒しながらどうにか逃げ延びるのだった。
「はぁ、はぁ。やっと撒いたか」
息を整えながら安堵する青年に少年はお礼を述べた。
「・・・ありがとう」
「そんじゃお礼くんない?」
にこやかに手を差しだす青年に少年は首を傾げた。
「・・・いや、だからお礼」
「・・・お礼ならさっき言った」
「いや、そうじゃなくて謝礼金」
先ほどの二人組となんら変わりない請求に少年は首を振った。
「・・・ありません」
「えぇ!?嘘、マジか。助け損だわ」
酷く後悔する青年に少年は俯いた。
「じゃあいいや。お前の親どこ?」
「・・・居ない」
「ハッ?嘘だろ!?」
頭を抱え顔を顰める青年に少年はミミを垂れ下げた。
「・・・まぁいいわ。なら名前は?」
「イノ。藤咲イノ」
「変わった名前してんな。本名かそれ?」
聞いておいて文句を言う青年に不信感を募らせながらもイノは問いかけた。
「あの、貴方の名前は?」
「あっ?俺は須賀謙吾」
「・・・ケンゴ」
「何だ?初対面でもう呼び捨てか」
わしゃわしゃと髪を撫でられ迷惑そうな表情を浮かべるイノ。
「ん?つかお前この耳マジで生えてんのか!?」
頭の付け根から生える猫ミミによやく気付く謙吾。
「・・・くすぐったい」
興味津々に触る謙吾を嫌がるようにミミを動かした。
「おお、すげぇ!!これは一稼ぎ出来んじゃねぇ?」
まるで人を見せ物のように言う謙吾にイノは後退りした。
「何なのあんた。助けといてさっきの奴等と変わんない」
「今度はあんたか?近頃のガキは可愛くないな」
警戒心剥き出しのイノに興味なさそうに呟いた。
「安心しろ。俺は現金にしか興味ねぇ」
「けどさっきは金になるって・・・」
「それは出来たらって話してだ」
「・・・出来たらって、やろうと思えば出来るんじゃないの?」
「あんなぁ、こっちで商売したってたいした金になんかなんねぇーの!」
「・・・そうなの?」
不思議そうに問い返すイノに謙吾は目を丸くした。
「お前あっち側の奴なのにこっち側の事知んねぇの!?」
心底驚く謙吾にさっぱり理解出来ないイノだった。
「いいか。これは常識だぞ?よく覚えとけ」
そう話す謙吾の言葉にイノは小さく頷いた。
この街は目には見えない境界線があり、その線を超えれば一般的な生活が約束された。
だがある一線から陥るとそこには貧しさしか残らなかった。
そんな街で稼ぐことは愚か、生活する事すら危うい状態だった。
「一度こっち側に陥たら二度とあっち側の生活には戻れない。それが今ある現実だ」
「・・・お兄さん何か悪い事したの?」
「ハッ、今度はお兄さんか?そうじゃねぇけど色々あんだよ」
軽く受け流されてしまいイノは何となく察した。
「・・・そう。大変だね」
「ハハっ。ガキに言われたら俺もお終いだな」
呑気に笑い飛ばす謙吾の姿に悪い人では無いと直感的に感じるイノ。
「・・・あの!俺行く場所なくて困ってたんだ。だからあんたの所に住ませて欲しい」
突然の申し出に心底嫌そうな表情を浮かべる謙吾。
「冗談じゃねぇ。何で俺がガキの世話なんかしなきゃなんねぇんだ」
「世話なんてしなくていい。ただ住む場所が欲しいだけ」
「何だって同じ事だろ?ごめんだね」
頑なに拒む謙吾の脚にしがみつくとイノは執念深く返した。
「・・・良いって言うまで離さない」
「・・・チッ。メンドクセェー事になったな」
諦めたように嘆く謙吾にイノは猫ミミを勢いよく立たせた。
「言っとくが俺も居候の身だ。そいつに許可貰えるかはテメェ次第だ」
「・・・わかった」




