刑事のよく行く喫茶店1-1
20XX年、京都のとある町に喫茶「なっちゃん」というレトロな喫茶店があった。だが常連客は20代から30代が多い。
「あー、聞いてよ!なっちゃん!」
深いため息をつきながらカウンターでコーヒーを飲む男性の名前は堂山剛。京都府警に勤める刑事だ。
「どうしたの?そんな暗い顔をして…。何かあったのか聞かせてくれない?」
そんなことを聞いてきたのは、喫茶「なっちゃん」のオーナーである北形山夏実だ。(通称なっちゃん)3年ほど前まで警察で働いていたが、ある事件が元で警察に嫌気がさして辞めたという経歴を持つ人物だ。
「実は…。昨日この近くで殺人事件があって俺もその捜査に駆り出されたんだけど、いくつも不審な点が見つかったんだが、その…上から指示で捜査がとまったんだよ!」
「つまり、こう言いたいのね…。『何かしらの形で警察幹部の関係者が関わっている』と…。
剛は本当にそう考えていたようで、夏実は少し考えるそぶりを見せて、答えた。
「そうね…、あながち間違いじゃないと思うけど…。私は少し違うと思う。警察関係者じゃなくて、もっと上の立場の人間、つまり検察の関係者という可能性が高いわね!」
それを聞いて、剛はほんの少しだが動揺していた。
「そっ、それは本気で言っているのか?もしそうだとしたらとてつもなく大事だぞ!」
「まぁ、証拠は何もないんだけどね…。所詮推測でしかないし、決定的な証拠があれば別なんだけどね」
それだけ言って夏実は剛に注文を聞いた。剛は『ブレンドコーヒー』と言ったのでブレンドコーヒーを剛に出した。
「やっぱり美味い!いつ飲んでも美味しいなぁ。なっちゃんのコーヒー!」
「ありがとう!そんなことよりもっと事件のこと教えてよ!殺人事件というのは分かった…。より分かりやすく教えてくれない?」
夏実がグイグイ圧をかけてきたので剛は仕方なく捜査状況を夏実に話すことにした。
「俺が言ったって言わないでね?さっきも言ったけれど昨日この近くで殺人事件が発生したんだ…」
剛の長い説明をまとめると次の通りだ。
『昨日の夜、喫茶なっちゃんの近くの住宅で1人の男性の遺体が発見された。目立った外傷はなく、最初は事故として処理されようとしていた。だが、とある小学生が警察に通報してきて言ったそうだ。“包丁を持った人が歩いているのを事件現場近くで見たと』
「最初はよくあるホラ話かなと思ったんだ。でも…」
「ホラ話にしては信憑性があったのね…。それで?」
「すぐに詳しい話を聞いたよ!それで似顔絵を描いてもらったらある人物にそっくりだったんだ。」
よっぽど信じられない人物だったらしい。とりあえず似顔絵を見せてもらうことにした。
「えっ、もしかして人気アイドル村瀬光じゃね?」
村瀬光というのは今売り出しの人気女性アイドルだ。クリーンのイメージが強く浮いた話や黒い噂も聞いたことがないほどだった。
「俺もこの似顔絵を見た時、ビックリしてよ…。まさか“あの村瀬光がそんなことをするはずがない”とそう思っていたよ…。」
「何か言いたげだけど…。言いたいことがあるなら言ってみてよ!別に怒りはしないからさ…」
「実はその村瀬光というのはあの東山俊介とつながっている可能性がある。だから上は捜査を中止しろと命じてきたというわけだ。」
東山俊介、表の顔はクリーンを装ってはいるが裏では収賄や企業献金などを行っているという噂がある政治家だ。それを聞いた瞬間、夏実はほんのわずかに手が震えていた。
「なるほど…。何で剛が言い淀んだわけがわかったよ…。私が怖気つくと思ってたんでしょ?昔私が追いかけていた政治家だという人物だから…」
そう、東山俊介という人物はかつて夏実が警察官だった時に、逮捕寸前まで追い詰めた経験があった。
「それももう昔の話よ…。そんなことで私が動揺するとでも思ったわけ?でもこの事件はとても興味深いわね…」
なんだか、夏実がとても興味を持ったのを察した剛は『これはチャンスだ!』と思い、さらに情報を夏実に共有することにした。
「それで村瀬光の犯行当日のアリバイってあったのかしら…」
「それは俺達も気になって調べたんだが…。村瀬光の犯行当日のアリバイはないらしい。」
それを聞いた夏実はニヤリと笑って、『村瀬光に話を聞きたい』と言い出してきた。剛は一瞬汗をにじませたが、結局は同意した。




