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フォルジュ6

鉱山の出口付近にたたら製鉄工房建設が開始された。


ロイ「資金は潤沢、いいのができそうですな!」


アミナス「鉄鉱石で売るより、製鉄したほうが高くで売れるんだからそっちのほうがいいよね。」


前回、鉄鉱石を売りに行った時にもらった相場価格の書かれたプリントにオルガ姉と共に目を通す。


オルガ「このアーハンソーってとこは?丸が一つ多いじゃん。」


リーゼントをやめて前髪はピンで左に寄せたオルガ姉は前より女性らしくなったように思う。


ロイ「そこは近年、急速な工業化で再開発が盛んなんだ。」


アミナス「確か、首都のセントローゼの西に位置する街だね。持っていくならそこかなぁ。」


僕らの会話にダリアも時間を気にしつつ、参加してきた。


ダリア「できてからですけどね。アミナス様、そろそろ出ないと。」


アミナス「あぁ、そうだった!」


馬車を待たせてることをすっかり忘れていた!


屋敷がなくなって以来、ダリアはメイドではなく僕の秘書の仕事を任していた。


オルガ「アミナス、どっか行くの?」


ダリア「穀倉地帯セラです。」


アミナス「地下水を使ったビールの本契約をしに行くのさ。」


オルガ「へー。お土産期待してていい?」


アミナス「いいよ!」


ダリア「アミナス様、お仕事で行くんですよ!」


アミナス「わかってるよ。視察だよ視察!」




穀倉地帯セラ


アントルイスから新しく南に通した街道を使ってセラに向かう。

穀倉地帯ということで広大な平野が続いている。町を中心に地平線、見渡す限りに麦がなっているが、

今は収穫も終わって荒涼とした畑が広がっていた。一部の畑では、土地を休めずにカブなどを植えている。


アミナス「セラはまだ暑いね。」


ダリア「アントルイスは標高が高いですし、セラは南にあるからですかね?」


ビールを製造している工場はセラの町の中ほどにあった。ビール製造工場の敷地に麦芽を熟成している建屋がいっぱいに並んでいる。


その端にある事務所の入り口の前に従業員らしき人が帽子を持って僕らを待っていた。


その人は停車した馬車に駆け寄ってきて自分はここの工場長だとあいさつした。


アミナス「こんにちは。僕がリヴィエールです。うちの地下水で作ったビールができたそうですね?」


工場長「はい。お待ちいたしておりました。リヴィエール公、社長がお待ちです。どうぞ中へ。」


工場長の案内に続いて僕とダリアも事務所の中に入った。案内された応接室で社長と農家の皆さんが待っていた。


社長「ようこそ、おいでくださいました、リヴィエール公。今しがた、みんなで試飲をしてたところなんです。」


「味もフルーティーじゃけん、疲れも吹っ飛ぶったい!」


「ウマカー、よかビールったい!」


「是非に酒場に提供しなすってくだーさい!」


農家の皆さんには好評のようだ。


工場長「うちの従業員にも大変好評でしたよ!」


社長「是非うちと契約してもらいたいです!よろしくお願いします!」


アミナス「こちらこそ、よろしくお願いします!」


僕とビール工場の社長は力強く握手を交わした。




汲み上げた地下水のピストン輸送が始まる頃にはモアナ領への交付金は見直された金額が入るようになった。


お金はどうにかできたし、製鉄所建設も順調だ。僕はネブリナから借りた魔法の教科書で勉強をしていた。


コンコン


アミナス「どうぞ?」


入ってきたのはロイ大佐とオルガ姉だった。


アミナス「どうしたの?」


ロイ「領地への予算を使って、プラテラの砦建設を早速、開始したいのです。」


オルガ「領地交付金だからアミナスの許可がいるだろ?」


アミナス「あ、そっか、わかったよ。よろしく頼むよ。」『砦があったほうが僕らの生存確率が上がるんだし。』


オルガ「ついでにここの兵舎と備蓄倉庫を増設してもいい?」


お願い!オルガ姉のおねだりポーズだ。久しぶりに見た、その腰のフリフリ。(ギャップ萌え)


アミナス「よ、予算内ならいいんじゃない?」


希望が叶って2人とも喜んでいる。




たたら製鉄工房の内装を左官さん達が整えている完成間近の時にその6人組は現れた。


ダリア「フォルジュシックスと名乗る方たちが来られてます。」


騎士団詰所の自室で兵法書を読んでた時に僕の所にダリアが突然入ってきて、事の次第を話し始めた。


ダリア「自分たちは製鉄の職人集団だと言って、ここで働かしてほしいと仰られてます。」


アミナス「まだ求人とか出してないけど、どうやって知ったんだろう?」


僕はとりあえず、会って話を聞こうとフォルジュシックスがいるという応接室に向かった。


フォルジュレッド「おっす!!俺がフォルジュシックスのリーダー、フォルジュレッドだ!」


アミナス「モアナ領の領主をしてますアミナス•リヴィエールです。」


太くゴツゴツと節ばった手と握手をする。力が強く、痛い。


フォルジュレッドと同様、みんな背が低かった。


フォルジュブルー「俺はブルー。」


フォルジュイエロー「同じくイエロー。」


そこで気がついた。その人たちが自分が名乗る色のついた帽子をそれぞれしていることに。残りは、白と黒と紫だ。


白「ネブリナが言ってた通りの若造じゃぞ?」


黒「大丈夫だろ?」


白「相手は人間、しかも若造。話が通じるのか心配なんじゃ。」


黒「見てみろ、あのお人好しそうな顔を。すぐ雇ってくれるさ。」


白と黒が顔を合わせて何やら相談し始めた。


レッド「俺たちがここの製鉄所使っていいか?」


どうする?

はい

いいえ

とりあえず、話を聞く◀


びっ


アミナス「この製鉄所はまだ求人を出してません、知り得た経緯を聞かせてもらっても?」


イエロー「ほれみろ!あやしまれとるぞ!」


ブルー「だから、待てって言ったんだ!」


レッド「う、うるせー!黙ってろ!」


レッドは咳払いすると、魔女づてでここの噂を聞いてやってきたという。


レッド「魔女集会でデケー魔女が言いふらしてたって言う話だ。」


あ、ネブリナかな?言いふらしてたのか。


ブルー「俺らは製鉄の職人集団だ。俺とレッドは製鉄。」


イエロー「俺はカナ細工。」


白と黒「俺たちは刀剣、武具担当じゃ!」


紫「マロは食器、茶器でおじゃる。」


レッド「どうせ求人はこれから出すんだろ?だったら俺らを雇ったらいい!」


僕は後ろに控えてたダリアに相談した。


ダリア「試しに何か作ってもらったら、どうでしょうか?」


アミナス「そうしよっか。」


僕は試用で何か作ってもらってそれから雇うかどうか決めると説明した。


白「儂らの腕を疑っとるじゃと!?」


紫「いい度胸でおじゃる!」


黒「腰を抜かすなよ!?人間!」


ん?この人たちもしかして人間とは違うのか?




フォルジュシックスがたたら製鉄工房に入ってしばらくするとネブリナが魔女集会から帰ってきたので話を聞いた。


ネブリナ「確かに、私が言ったんだ。魔女は情報には価値があるって知ってる。」


売ってきたのか……情報教材のバイヤーみたいだ。


ダリア「売った情報でこの前、エステに行ってきました。」(テレテレ)


なるほど。


ネブリナ「変なことは言ってないから安心しな。」


アントルイスに駐屯してる戦力とか僕の魔法、オルガ姉、大佐の事とかカウテースに詳細を知られたらまずいからなぁ。


なんか、魔女達にキ○タマ握られてる感じだ。


そこへオルガ姉が顔を赤くして帰ってきた。酒をひっかけてきた、わけではなさそうだ。


オルガ「ちょっと、ちっさいオジサンからコレもらったんだけど。」


その手には銀の指輪が2つ。


オルガ「結婚前のお嬢さんにって。」


ダリア「うわー、いいな!私も欲しい!」


ネブリナ「ドワーフは仕事が早いねぇ。」


アミナス「ドワーフ?」


ネブリナ「あ、そっか。今の時代、彼奴等あいつら、希少種なのか。」


金竜、銀竜みたいな?


オルガ「なにそれ?」


ネブリナ「昔は鉱山や製鉄所でよく見かけた鉄器の職人さね。

人より長寿で出生率が低いから、戦乱とかで数が減ってるけど、製鉄に関して言えば人間より腕がいい。」


じゃぁ、試作品が今から楽しみである。




たたら製鉄工房の試運転が始まって数週間後、試作品ができたから見に来いと言われて、僕はダリアとオルガ姉の二人を連れて見に行くことにした。


オルガ「こう見えて、武具の良し悪しはうるさいよ!私は!」


ダリア「その身を預ける貴重品ですもんね。」


工房に入ると、

たたらのフイゴを女の人たちが足であおいでいて、


その下の作業スペースで、

半裸のムキムキの背の低いおじさんたちが大きな金槌で黙々と赤い鉄を叩いていた。


一人が赤い帽子をかぶると、それがようやくフォルジュレッドだと気がついた。


アミナス『みんな同じような顔してるからなぁ。ヒゲもあるし……』


レッド「できたやつはあそこに固めておいてある。手ぇ切るなよ。」


(ドサッり)


部屋の隅には既にたくさんの鉄器が置いてあった。


アミナス「こんなに?!」『……試用とは?』


オルガ「すげーな、このはがねの剣。めちゃくちゃ斬れそう。ちょっと、詰め所で試し斬りしてきていい?」


答えを聞く前にオルガ姉はまだサヤのない抜き身の剣を持って、作業場を出ていった。捕まりそう……


ダリア「このカナ細工もらっていいですか?」


ダリアがドワーフに話しかけるが反応はない。皆、目の前の作業に夢中なのだ。


なんだか、楽しそう。


アミナス「いいんじゃない?試作品だし。売り物目的で作ってないから。」


ダリア「やった!」


ダリアは三日月に猫をあしらったカナ細工をもらえてはしゃいでいる。ペンダントにするらしい。




僕は彼らを正式に採用することにした。


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