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プラテラの戦い

僕は予定通りプラテラに布陣した。


完成した建物は2,3件で、騎士団詰所もまだ建設途中といった具合だったが、それらを解体して何層かの馬防柵を作ることにした。


オルガ「馬防柵の間に落とし穴も掘ろう。オスカー側から見えないように天幕を張れ。」


夕日に染まるオスカーには第三王子の軍がこちらの動きに呼応して陣を敷いている。


アミナス『一瞬即発だなぁ。』


ダリア「思えばここが始まりの土地でした。」


ダリアは自分が倒れていたであろう場所を探すように馬防柵の前を歩いている。


ダリア「プラテラ。テラは星って意味ですよね?」


アミナス「僕にはラテの印象が強いかな?」


ダリア「アハハハ!そうかもですね。」


馬防柵建設の現場指揮をしていたオルガ姉が僕らを見つける。


オルガ「お~い、そこにいちゃ危ないぞー?」


アミナス「大丈夫だよ、オルガ姉。ここまで矢は届かないよ。」


オルガ「そうだけどさぁ。」


ダリア「私は、この戦争を早く終わらせて、アナタとオルガ様と一緒に暮らしたい。また、お屋敷で。」


アミナス「その時はダリアはメイドじゃなくてお妃様かな?」


ダリア「聖女ですよ!」


なんか、気に入ってんだ、その言葉……


僕はその時、オスカーから伸びるたくさんの煙の筋を見つけた。


アミナス「ご飯でも食べるのかな?」


オルガ「……ありゃ、今日、明日くらいに総出で攻めてくるぞ?」


アミナス「温かいものってだけじゃないの?」


オルガ「体が温まったら何する?」


アミナス「そりゃぁ、高ぶって……」


ダリア「アナタ、鼻の下が伸びてますよ。」


おっと。


オルガ「……戦の前の力飯だ。アミィはスケベ男に変わったなー。」


ダリア「前はもっと、かっこよかったですけどねぇ。」


アミナス「うっぐ。いいじゃないか。」


悪いことではないはずだ。多分。(褒められることではない)


オルガ「コチラも悟られぬように、全軍に知らせておこう。」


ダリア「今のうちに仮眠しときましょう。」




暗闇の世界、輪郭だけが光って見えるだけの不思議な世界で僕らは立ち話をしている。空には月も星もない。


???「田舎の領主から王にのし上がる物語。いよいよラストが近づいてきたな?」


アミナス「ノーマルモードに戻したから、そこそこの難易度って感じだね?」


???「言っとくが、コンティニューは無いぞ?」


あ、そうなんだ?


???「それと気づいてると思うけど、ガイアエピタフも回数制限付きだ。ハードモードだったらとっくに使用限界さ。」


アミナス「無限にはならない?」


???「そんな事したら、ゲームにならないだろ?」


おいおい、これってゲームなの?断言したのか?


アミナス「誰がやってるの?プレイヤーは?」


???「それはー」




ユサユサ……


誰かに起こされる。気づけば、辺りは暗く夜霧が出ていた。仮眠のつもりが寝入ってたらしい。


ダリア『行きますよ。アナタ!』(ヒソヒソ)


何で小声なんだ?


すでに騎乗していたオルガ姉も小声で叫ぶ。


オルガ『全軍、静かに進め!気取られるぞ!』


ダリア『相手は奇襲のために軍を割いてます。今が好機!行きましょう!敵の本陣へ!』


僕とダリアも馬に乗った。




オスカー近郊


オルガ「かかれ!」


小隊毎に部隊を分け魚鱗ぎょりん陣を敷き、敵の動きに柔軟に対応する。

突出してきたら正面の部隊を下げ、他の隊に側面をつかせる。


オルガ「兵力差はこちらが上だ!押し切れ!時間との勝負だぞ!」


「報告!敵の奇襲部隊が馬防柵の落とし穴に引っかかっている模様!」


オルガ「よし!だいぶ時間を稼げるだろう!」


「報告!敵は鶴翼かくよくの陣!堅く守り、時間を稼ぐつもりです!」


オルガ「陣形変更!車懸くるまがかりの陣!」


アミナス「なにそれ?」


オルガ「固い守りなら、こちらが疲れる。疲れた隊を後ろに戻して、新しい隊をぶつける。これで突破口を開く!」


ダリア「それなら私の出番ですね!」


アミナス「魔女の戦略魔法”タルタマ"だね!よし!休憩してる隊のところに行こう!」


ダリア「聖女ですー!」


僕はダリアを連れて陣の中ほどで休んでいた部隊を鼓舞した。


ダリア「神よ!この者たちに加護を与え給え!」


アミナス『え?そんなセリフいるんだっけ?』


「おお!聖女様だ!」


「すげぇ!疲れが吹き飛んだズラ!」


「ありがてぇ、ありがてぇ!」


お、拝まれている……


ダリア(ムッフー!)「さあ!神のツワモノたちよ!立ち上がるのです!」


オオー!


車懸りの陣はものすごい速さで回転サイクルした。


オルガ「これで、すぐにオスカーに入れる!聖女様サマサマだ!」


しかし、第三王子の奇襲部隊が戻ってくるのが思った以上に早かった。


オルガ「くそ!もう来たか!アミナス!ここは任せた!後ろは私が押さえる!」


アミナス「オルガ姉!無茶しちゃダメだよ!」


それと同時に前線でも夜霧に聞き慣れない音が響き、兵士たちの動揺と悲鳴が上がった。


カッ


ドカーン!


夜霧に閃光が光る。


硝煙の中、出てきたのは見覚えのある、首のないダチョウのようなフォルムをした魔導アーマーだった。


アミナス「いつぞやの!修復されてたのか!」


ダリア「!」(ブチッ)


それを見たダリアは混乱する兵士たちをかき分けて魔導アーマー(リペア)の前に出た。


ダリア「くたばれー!」


アミナス『えー?!』


魔導アーマー(リペア)は地面に空いた穴に落ちていった。


恐るべし、辺津鏡インベントリ


ダリア「もう、私がやる!うちの娘の旦那の邪魔をするな!」


ダリアのお母さんだ!!


ダリアの周囲の空間が揺れる。


ドヒュヒュヒュ……!


光の矢がオスカーの敵陣にとめどなく降り注ぐ。


アミナス『魔女は戦を一変させるな……怒らせないようにしなくちゃ。』


オスカーの陣から白旗を掲げた一団が出てくる。


ダリア「あ?許すわけねーだろ。」


ドヒュッ!


ドススス!


アミナス「あわわわわ……」


第三王子の奇襲部隊もオルガ姉の前に粉砕され、縛られた第三王子が僕の前に連れてこられた。


オルガ&ダリア「………………」


第三王子「わ、我々の負けだ。命だけは助けてくれ!」


僕が口を開く前に第三王子の体は空間に飲み込まれ、驚愕を浮かべた首だけがその場に残った。


ダリア「これでよし!」


オルガ「ま!生かしといたらまたいつ挙兵するかわからんしな!」


アミナス「おおう……」




その後、首都セントローゼの王宮に、第三王子の首を持って入った僕らは正式に港湾都市までの領地を得ることとなった。


アミナス「これで残すは左大臣の勢力だけだ。」


僕はラウト王国の3つの領地を得て最大勢力となった。




ディーネ「アーハンソーとか言う工業都市でプラント作っていい?」


ファクトリアを伴ったディーネが僕のいる王宮にフラッと姿を現した。魔女はアポイントメントとか言う習慣はないらしい。


アミナス「なんか、作るの?」


ディーネ「アントルイスのレアメタルで魔導兵器の量産プラントを作るんだよ!」


オルガ「へぇ、そりゃいい!」


ダリア「けどアレ、足がめっちゃ遅いですよ?」


ディーネ「大丈夫だよ、今度のは!」


ファクトリア「ディーネちゃん、ほんとにやるの?人多くない?私、怖い……」


あぁ、この子は下半身にくる!


ダリア(ユラァ)


アミナス「ひっひぃぃ!ゴメンナサイ!」


オルガ「?」




コーラス領に首都の大軍を送り、カウテースに備え、ネブリナとアルメアをセントローゼに呼び寄せる。


ネブリナ「アンタ!」


アルメア「アミナス様!」


ギュ


オルガ「これでみんな揃ったなぁ。」


アルメア「まさか、私が王宮住まいになるなんて……」


アミナス「なんかあるの?」


アルメア「いえ、山が遠いなーと。」


……首都暮らししてましたよね?


ダリア「落ち着いたら、アントルイスにピクニックに行きましょう!」


ネブリナ「いいね!あそこにはいい思い出ばかりだよ!」


オルガ「それよりさぁ、こっちしようよ!」


一同「?」


オルガ「じゃーん!」ゼクシィー


ダリア&ネブリナ&アルメア「おおー!」(キラキラ)


アミナス『まっ眩しい!』


妻達は鼻息荒くページをめくっている。

ラウト王国を統一したら挙式してあげなくちゃ。




それまでの戦時経済をやめて領地間の交易、商売や外国との輸出入を再開する。


王宮の執務室に詰めた僕とダリアは市場の動きをチェックしていた。


ダリア「地下水まだセラに送れないんですよね~」


アミナス「ビールもセラがない分、市場の需要に対して供給が間に合ってない。」


アミナス&ダリア「あっそうだ!」


二人して同時に言葉を発する。それがおかしくて笑ってしまう。


アミナス「アベナに送ろうか?」


ダリア「ですね!」




僕は流れで王宮暮らしを始めたが、正式にラウトの国王に選出されることとなった。


右大臣「これからはアナタが国王ですぞ!」


アミナス「玉座に座るとか夢のまた夢だと思ってたよ。」


オルガ「これで左大臣をラウトの南の領土を不法に占拠してる逆賊とすることができる。」


ネブリナ「いいことづく目さね!」


アミナス「そうだ、コーラス領に領主を置かなくちゃ。」


アルメア「それでしたら開発資金を出してくれているルドハネで決まりですよ!」


ちゃっかりしてるなぁ。まぁ、そのための政略結婚だけども。反対するところもないし……


アミナス「じゃぁ、コーラスはお義父さんに任せるかな?あの人ならうまくやってくれるだろうし。」


こうして、緩やかに新しい時代が始動していった。

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