結婚式(仮)
コーラス領新領主となって初めての領民会議は麦の収穫の直前に行われた。
刈り入れしたら、その処理で農家の方々が参加できないとかで。
アミナス「うーん、地域おこしかぁ。」
ナイトベルガー「今までは奴隷労働の安い人件費で売上を上げてたけど、今はそうじゃないからなぁ。」
「原材料で売ってちゃマイナスでがす。」
「足が出るでがす。」
アミナス「警備主任の意見は?」
ナイトベルガーはお門違いの領民会議に呼ばれて苦笑しっぱなしだった。
ナイトベルガー「うーん、騎士の私の意見かぁ……麦畑の観光地PRくらいしか思いつかない。遠駆けのとき地平線を見ながら平原を駆けると気持ちがいいんだ。」
「騎士様らしいでがす!」
ドッ
議場に笑いが起きる。
ジルゴリラの不安はきっと思い違いだな。領民にも慕われてて亜人にも優しく接してた御仁なんだから。
アミナス「とりあえず、持って帰って妻達に聞いてみるよ。」
「奥方でがす?」
「アミナスさまんとこさ、みんな聖女さまでがす。きっといいお告げがあるでがす。」
「でがす!でかす!」
なんか、アントルイスのウィルがたくさんいるみたいだ……
アベナ屋敷 夕食
アミナス「……ということなんだ。皆は何かない?」
アルメア「この前、視察に行ってきましたけど……。」
ネブリナ「何ーもないね?ここは。」
ダリア「抜け道の高地も岩肌だらげですし。地下水は?なさそうです。」
アミナス「だ、ダウジングとかも無理そう?」
ネブリナが顔を横に振る。
ネブリナ「ちゃんとした地質調査に出さないと無理だわさ。広すぎる。」
ところで……
オルガ姉が静かだ。
いつも山になってる皿が半分も進んでない。よく見ると、何やら分厚い本をペラペラとめくっている。
アミナス「オルガ姉は何見てるの?」
オルガ「え?通販カタログ。ダリアとネブリナに借りたんだ。」
ハラリ
ネブリナ「あー!その付箋、貼っといて!?私のやつ。」
オルガ「ごめんごめん。」
グッ
オルガ「よし!貼れたぞ!」
めっちゃ、めり込んでんだけど……
ダリアが横からオルガが持ってるカタログを覗き込む。
ダリア「そのピンクいの私のです。」
オルガ「えー、可愛いと思ったのに……」
ダリア「ダメですよ~、かぶっちゃいます!」
一体なんのやつなんだ?服だろうか?
アルメア「次は私が選ぶ番ですよ!選び直しはダメです。やるなら一巡してからです!」
アミナス「ねぇ、みんなで何見てるの?」
オルガ「何って、ウェディングドレス。」
ダリア&ネブリナ「あー!」
アルメア「言っちゃダメですよ!」
オルガ「あ、ごめーん!」
え?誰の?
ダリア「せっかくのサプライズがー。」(ガックシ)
ネブリナ「まったく、やるんじゃないかって思ってたわさ。」
アミナス「……僕の?」
女性陣は一様にうなずく。
そういえば上げてなかった。
一夫多妻の結婚式かぁ。怖いもの見たさはあるな。
アミナス『そのお金を貯めるためにも地域おこしをがんばらなきゃ!』
風呂上がりの自室
頭を乾かしながら、机に置かれた、執事に持ってきてもらったホットミルクに口をつける。
アミナス「あっま!」
めちゃくちゃ甘いんですけど……砂糖無しって頼んだんだけどなぁ?
アミナス「そうだ!コルボやディーネにも聞いてみよう。ケーメリアとメディトにも。」
ドクン
そうと決まれば、今あるアベナと漁村の特産品とかピックアップして一覧にしよう!
ドクン
アミナス『季節ごとの観光スポットは明日、ナイトベルガー主任に聞いてみよう!』
ドクン
ふわぁ~
アレ?眠いな。クソデカあくびをする。
手元のホットミルクを置く。
アミナス「明日にしよ。」
僕はその日は早めに寝ることにした。足元のシーツがよれてるベッドに入る。ベッドメイキングのメイドに新人でもいるのか?
のしっ
え?
ビュゥゥン……
コルボの顔が眼前にある。鼻息荒い。発情期か?
コルボ「私がどうしたって?」(ンフー)
ガシッ
体は挟まれて動かせない。
アミナス「いやぁ、漁村の特産品とかあるかなーって?」
コルボ「へぇ、熱心じゃないか?ただのイカ臭い少年と思ってたよ。」
イカ……
アミナス「みんなは珍味とか作れる?」
コルボ「塩辛みたいなやつ?」
アミナス「そうそう、東洋のだしをとるやつとか?」
コルボ「まぁ、今度みんなに聞いてみるよ。つか、この状況でよくそんな話できるね?」
いつの間にかボタンは外され、半裸状態である。
コルボ「助けは呼ばないの?」
アミナス「呼べば、君がどうなることか。」
コルボ「心配してくれてんだ?一応、ありがとう。」
ギンギンですよ、神。
次の日、
コルボ(ツヤツヤ)を伴って漁村に行く。開発がすでに開始されており、建築ラッシュのような喧騒である。
コルボ(ツヤツヤ)「村の公民館はここ。私は村長連れてくるから待ってて?」
アミナス「分かった。」
しばらく、公民館の席に座っていると、いつの間にか横にダリアが座っていた。
アミナス「辺津鏡は便利だね?休んでてよかったのに。」
ダリア「私、鏡の聖女ですから。あなたはホッといたら、変な虫が寄ってくるじゃないですか。」
うぐぐ。
ダリア「女遊びはほどほどにしてくださいね!」
アミナス「はい……。」
コルボ「連れてきたよー。」(あっ)
猫村長「おお、聖女様も!」
ダリア(ニコニコ)
オーラが笑ってないんだよなぁ……
コルボ(ダラダラ)
目の泳いでる泥棒猫は冷や汗をかいている。
村長は色々話してくれたと思うんだけれども、ダリアの揺らめく髪が気になって、話が全然入ってこなかった。
ダリア(サラサラ)
羽ペンを辺津鏡からだしたダリアは書紀のような役割を果たしてくれていたので、後で議事録を読ませてもらおう。土下座して。
それが終わると、アントルイスの工房から呼んだディーネの待つアベナの屋敷の応接室に入った。監視も一緒に。
ディーネ「何だよ?話ってのは?」
アミナス「ディーネは工場とか作れる?」
ディーネ「魔導兵器でも量産するの?」
アミナス「いやいや、ビールでも作ろうかなと。」
ダリア「ビールですか?」
アミナス「うん。麦がたくさん取れるからさぁ?」
ダリア「セラのビールと競合しますよ?地下水ビールに勝てないですよ。」
アミナス「あ、そっか。そしたらどうしよう?」
ディーネ「その前に、私にはその手の工場は作れないぞ?プラント設計の魔女に頼まないと。」
いろんな、専門家がいるんだな?魔女って。
ディーネ「今度連れてきてやるよ。紹介料はいつも使わさせてもらってるレアメタルでいいや。」
アミナス「一応、聞くんだけど、その魔女のお代は?」
ダリア『結構、そこ重要ですよね。』(ヒソヒソ)
ディーネ「なんだっけ?まぁ、直接聞いてみなよ。」
アミナス「あ、それとケーメリアとメディトにもこの話ししてもらえる?」
ダリア「地域おこしのアイデアの件ですね。」
ディーネ「えー?めんどくさい。」
アミナス「そこをなんとか?」
朝の日差しが差し込むステンドグラスの煌びやかな光が僕らの足元を照らす。
色とりどりのウェディングドレスに身を包んだ花嫁達が僕の前に慎ましく並んでいる。
アミナス「みんな、綺麗だよ。よく似合ってる。」
ウフフフ……
神父が咳払いをして指輪の贈呈式が進められる。
「まずは正妻ネブリナ。」
アミナス「これからもよろしくね?ママ。」
ネブリナ「”お前がママになるんだよ"って?」
「コホン、次に側室オルガ。」
アミナス「食べるのはほどほどに。」
オルガ「はーい。」
「続いて、側室ダリア。」
アミナス「大好きだよ、ダリア。」
ダリア「女遊びはほどほどにお願いします。」
うっぐ。
「続いて、側室アルメア。」
アルメア「今度、山にムカデを取りに行きましょう!」
えぇ……
「続いて、側室ディーネ。」
え!手も出してないけど?!
ディーネ「べ、別にこれはレアメタルのためなんだからな!か、勘違いするな!」
「続いて、側室ケーメリア。」
ケーメリア「美味しそう。」(ニタニタ)
ひぇぇ
「続いて、側室メディト。」
メディト「私のはダンベルでいいぞ?」
…………勘弁してください。
「続いて、側室コルボ。」
えぇ?!種が違うんですけど?
はっ!
アミナス「ゆ、夢か。なんちゅう、夢なんだ……。」(はーはー)
けど、まぁ。
みんな綺麗だったなぁ。ツヤツヤモードというより、キラキラモードだった。
時計を見ると、まだ夜中の3時前だ。
アミナス『……夢の続きでも観よう。』(ドキドキ)
しばらくして
麦の備蓄庫にあったやつでビールを試作してみた。農家の方々に試飲してもらう。
コーラス領まで輸送が開始されてたセラの地下水ビールと比較してもらいながら。
「まずいでがす。」
「地下水ビールと雲泥の差でがす。」
ダリア「やはり、ビールにするのは無茶なのでは?新規参入しようにも競合他社が強すぎます。」
ビール精製キットを貸してくれたディーネが口に手を当てて何か考えている。
ディーネ「強い?……そうだ、もっと強い酒にしたら?」
アミナス「どうするの?」
ディーネ「焼酎にするんだ。待ってろ、蒸留キットを持ってきてやる!」
……焼酎?




