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政略結婚 1

辺境領モアナ領は重要領地に格上げされる事となった。

騎士団の兵舎は急ピッチで増設され、大量の騎兵が配置された。


ロイ「騎兵200、壮観ですな。」


騎士団詰所の出入り口で新たに配属になった騎士たちを眺める。

車椅子のロイの瞳は少年のようにキラキラと輝いていた。彼が軍人を目指した理由を垣間見た気がする。


アミナス「騎兵は1000人配置される予定です。まだまだこれからどんどん来ますよ。」


オルガ「楽しみですね?大佐!」


その両隣を挟むようにして立つ僕とオルガ姉。オルガ姉はまだ彼の指揮下で動く騎士たちを想像している様子だった。


ロイ「おいおい私はもう、大佐じゃないよ。」


オルガ「そ、そうでした!すみません。大佐!」


ワッハッハッハ……!


そのやりとりがおかしくて、みんなで笑う。入場する騎士たちはそれを不思議そうに眺めるのだった。


ダリア「あ、いたいた、アミナス様!」


アミナス「ダリア、どうしたの?」


そこへ騎士団詰所内からダリアが出てきた。むさ苦しい男たちのいやらしい視線に不安そうな表情を浮かべている。


ダリア「わかってるわ、ママ。」


魄神しきがみと契約し直したダリアは独り言が多くなった。頭の中で魄神と会話しているのだとか。詳しいことは知らないが?


ダリア「えっと、ネーベルホルンさん。頼んでた魔女さんたちがお見えですよ。」


ロイ「よかった!来てくれたか!」


アミナス「早いね!」


ダリア「お二人は“私の患者はどこだー”って張り切ってますよ!」


オルガ「行きましょう!足を上げてください。」


オルガ姉はロイの車椅子を押して詰所内に戻っていった。それに僕もダリアと手をつないで入っていった。




騎士団詰所医務室の隣のロイの部屋


ダリア「こちら右から内科医のケーメリアさんとリハビリ担当のメディトさんです。」


ケーメリア「こいつか?ワタシノ患者は?ジジイじゃないか、不味そう。」


ショートカットの細身の魔女が言う。笑い方が不気味で怖い。


メディト「ネブリナも顔が広いよな?」


ガシャガシャガシャ……


何かをシェイクしているムキムキマッチョの魔女が言う。総じて魔女は個性が強い。かわいい系のダリアが普通に見える。


ネブリナ「わたしゃ、こう見えて人世ひとよ慣れしてるんだ!」


ドタプン!


大きな大きな2つのお山が揺れる。


ロイ「よ、よろしく。」


ロイは握手のために左手を出したがケーメリアたちは動かなくなった右側に興味を示した。


ケーメリア「外傷によるものだ。グレダに見てもらったほうが早いぞ?ジジイ。」


グレダ?外科の魔女の名前だろうか?


メディト「まぁ、それでも内科的に治したいんだろ?変な趣味だよ。」


ケーメリアの話にムキムキマッチョの魔女は続けた。シェイクしたものを流し入れるように飲んでいる。

プロテインか?


ロイが外科的治療より内科的に治していこうと考えたのは、

もう急ぐ必要がないし、ある程度治って自立できればいいと言う本人の希望からだった。


ネブリナ「お代は今日入ってきた奴らでいいよな?お前ら。」


騎士たちのことかな?人命に関わることじゃないよな?


ケーメリア&メディト「かまわないよ。」


メディト「私はソイツのでもいいぞ?」


人を指さしてソイツ呼ばわりされた。が、お代ってなんだ?


ダリア「この人はだめです!」


あ、なんかわかった……


察したロイも苦笑いしていた。


その後、ゲッソリした騎士たちが続出した……。




アダマンタイトで作った方天画戟ができた。その知らせにオルガ姉はウキウキしながら出かけた。


オルガ「♪~」


アミナス「待ってよ!オルガ姉!」


僕とダリアはオルガ姉をおいかけるよう、たたら場に入った。

今日はたたらを休ませてるのか中は冷えた鉄のせいで逆にひんやりしていた。


ダリア「いつもこうでしたらいいのに。」


アミナス「まぁ、暑いからね普段は。」


そこではもう、出来た方天画戟を検品するオルガ姉とフォルジュ6の誰かがいた。


頼むから帽子を取らないでくれ……


オルガ「月牙ゲツガが大きくなってる!刃渡りを延長してくれたのか!」


「他の部位も延長しといたぜ?内なんて引っ掛けるように特化させて刃にはしてないんだ。」


オルガ「あ、ほんとだ!掻き切れないじゃん!」


大昔の戦で使われていた武器の話となると、もう素人の僕では詳しいことは分からないが、


アミナス「それって普通の鉄とは違うの?」


あ、ためそう。


みたいな顔で2人に見られた。なんか目がギラギラしてていつもと違うな、オルガ姉は。


早速、オルガ姉は出来た方天画戟を持って騎士団詰所に帰っていった。


アミナス「武器、ありがとうございました!」


「おう、かまわねぇよ!」


「そうじゃ!ココのヤツらの武器も新調してやるのもいいかもしれん!」


アミナス「是非、お願いします!」


「お代はいつものビールとツマミでいいぞ?」


「衣食住は足りてるからな!」


アミナス「助かります!」


ドワーフたちも給料は現物支給のほうがいいという。


魔女同様、人の寿命より長い年月を生きる彼らは、その国で使われてた通貨がいつの間にか使えなくなっていた。と言うことが過去にあったのだとか。


「ところで、ソチは世界樹跡地は探さんのかえ?」


アミナス「?どういうことでしょうか?」


「やっぱり知らんぞ。」


「人間だからか?」


「焚書じゃ、嫌じゃのう。」


「戦乱はこわい、こわい。」


ドワーフ達は人を恐れているかのように僕に背を向けて話し合っている。

僕は世界樹跡地に何があるのか興味がわいて聞いてみた。


アミナス「そこに何かあるんですか?」


「ココの鉱山より、レアメタル埋蔵量が豊富だし。」


「何より、ガイアエピタフのアクセスポイントがあると思うぞ?」


ガイアエピタフ?




ダリア「なんだか不思議な話でしたねー?」


その後、ドワーフ達にガイアエピタフなるものについて聞いてみたがよくわからなかった。

騎士団詰所に帰る道すがら僕はダリアとそのことについて話した。


アミナス「わかったのは、許可が降りれば超人的な身体能力や魔女の戦略魔法に対抗しうる特殊能力を身につけられるけど……」


ダリア「ガイアエピタフに拒まれたら廃人になるんでしたっけ?」


詳しい話は魔女たちに聞いてみよう。あ、ダリアも魔女か。けど彼女は魔女の学校は出てないとかでガイアエピタフの事は知らないと言った。


アミナス『ダリアの家系は人に紛れて暮らしてたからなぁ。魔女学校を卒業したネブリナとかに聞いてみよう。』




騎士団詰所に帰ると僕宛てに手紙が来ていた。


アミナス「また、召集令状?領地のことかな?」


しかし、そこには、


アミナス「……は?婚約?」


自室で封書を開封して中身を見る。何回見てもそこには、アルメア•ルドハネと言う公爵家のご令嬢との婚約話が書いてあった。




オルガ「本決まりじゃないんだから、断りなよ。」


ネブリナ「まだ、10歳のケツの青い子供じゃないか!」


ダリア「そうですよ、結婚(仮)なんてネブリナさんだけで十分です!」


騎士団の食堂でみんなに集まってもらって相談する。


ケーメリア「会ったこともないんだろ?」


メディト「まぁ、行くだけ行ってみたら?結構なべっぴんさんかもよ?」


ダリア「ダメです!」


うーん、どうしよう?

行く◀

行かない


ぴっ


アミナス「とりあえず、先方にも悪いから、会うだけ会ってみるよ。」


公爵家ルドハネと言えば王位継承権4位がいる名門だ。金融で財をしこたまこさえてるらしいし、敵には回られたくない。


アミナス『まぁ、相手もモアナの鉱山、炭鉱、地下水の、利権目当ての政略結婚狙いだろうが。』


ダリア&ネブリナ「……………………。」




アミナス「この話は置いといて、魔女のみんなは世界樹跡地のことについて知ってる?」


え?!と言う顔をするケーメリア。何かあるのか?


メディト「あ、あんな所に何の用があるんだよ?」


アミナス「いや、ガイアエピタフについてみんなはドワーフより詳しいかなと。」


ネブリナ「あんなとこ行くな!」


ケーメリア「そうだよ!廃人になっちまう!」


オルガ「何?その世界樹跡地って?」


僕はガイアエピタフについて知ってることをオルガ姉に話した。


メディト「ガイアエピタフ、私らの天敵じゃないか。」


ネブリナ「アレは、アヌや魔女に対抗するために星が作り出した抗体反応だから。」


抗体反応?


オルガ「アレルギー的な?」


アミナス「そんなにやばいの?」


ネブリナ「世界樹を切り倒したアヌ達の子孫だからね、私ら魔女は。」


メディト「魔女は行けない。殺されちまう。」


ケーメリア「クッソ、アイツラ私たちを目の敵にしやがって!」


アイツラ?複数形?


オルガ「うーん、けど超人的身体能力か。興味あるなー。」


ケーメリア「筋肉だるまはメディトだけで十分だよ!」


オルガ「誰が、筋肉だるまだ!」


メスゴリラだっけ?この人のあだ名は……。


とりあえず、後日、オルガ姉は騎士を連れて世界樹跡地を探しに行くという。


アミナス「僕も行くよ!オルガ姉は無茶するから。」


オルガ「うん。」


自覚があるのか……

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