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アダマンタイト

カウテースの機動兵器を打ち負かし、僕らは大手を振って凱旋。


……とはならなかった。


ロイ大佐は重症だし、

50騎いた騎士は35騎に減ったし、

オルガ姉の方天画戟はおられたし、

機動兵器はセントローゼに回収されたし、


そして…………


ネブリナ「正体を現しな、シュピーゲル。いるのは分かってるよ。」


ダリア「ふん、同種にバレたか。まぁ、仕方ないね。」


声がいつものダリアのではない。どこか大人っぽい。


騎士団詰所の取調室に入るのはこれが2度目だ。今度は取調をする側だが。


中央の机に魔女の二人が互いに顔を向かい合わせて座っている。


アミナス「ダリアは僕らを救ってくれたんだからそれでイイんじゃないの?」


ネブリナ「ダリアの戦略魔法はタルタマだ。それは間違いない。」


ダリア「そうだな?この子のはあいにくタルタマだった。」


ネブリナ「しかし、それに加えて辺津鏡へつかがみもだと?そんなの魔女のオリジナルのアヌ、かもしくは、魄神しきがみでしかありえない。」


ダリア「私はそのどっちだと思う?ムニムニ。」


ネブリナ「はは!言うじゃないか?ここは魔女集会所みたいに封魔のブレスレットはしてないぞ?シュピーゲル。」


ダリア(?)の煽りに一瞬即発になる二人の魔女。その髪の毛は風もないのにユラユラと揺らめき始めた。


僕は魔女の会話に正直、ついていけてない。専門用語ばかりで何のことかさっぱりだった。


アミナス「ネブリナ?そのシキガミ?ていうのは何なの?」


ネブリナ「しきは体っていみさ?神を体に飼うんだ。ソイツに魔法なりを行使させる。」


アミナス「じゃぁ。アヌ?てのは?」


ネブリナ「魔女にはオリジナルのアヌって言う上位種がいる。しかし、そんな奴は滅多に出てこない。」


ダリア「ムニムニは私をどっちか分かるのかな?」


アミナス「ダリアもネブリナにきつく当たるのやめてよ!」


つり上がっていた目がいつものくりくりしたカワイイ丸い目に戻る。ダリアの顔の雰囲気はスッともとに戻った。


ダリア「え?え?私なんでここに?機械は?!アミナス様?」


あれ?


ここまで自分の足で戻ってきてたのにダリアはそれを覚えてない?


本人ともども僕もそのことに困惑した。


ネブリナ「こりゃもう、魄神しきがみで決まりだね。人格ごと乗っ取るタイプとなると、ちゃんと契約してないなこの子は。」


アミナス「シキガミは契約する形と、しない形があるの?」


ダリア「?」


ダリアは僕とネブリナの会話を不思議そうに聞いていた。


ネブリナ「まぁね?契約してたら人格も記憶もそのまま。体の持ち主の同意なく神が取り憑いてたら、ダリアみたいに人格を乗っ取られて、その間の記憶を本人が覚えてないことになる。」


ネブリナはダリアに向き直り続けた。


ネブリナ「この子に取り憑いてる魄神はシュピーゲル。鏡の魔女のシュピーゲルだ。」




その後、ネブリナはダリアを連れて幽世かくりよに行ってしまった。魄神とちゃんと契約し直す、とか言って。


僕はオルガ姉と共に壊れた方天画戟を直してもらいに、たたら場のフォルジュ6のところに立ち寄った。


しかし、リーダーのレッドからそれとは別件と言われ一つの鉱石を渡された。


アミナス「なにこれ?」


オルガ「普通の石にしか見えないぞ?」


「ほぉれ?マロの言った通りでおじゃろう!人にはそれが鉄にも見えぬのじゃ!」


あ、紫の人かあれ。帽子を取ってるから誰が誰だかわからない。


レッド「ソレはアダマンタイトだ。ココの鉱山からはレアメタルも取れるんだ。」


アミナス「レアメタル?鉄とは違うの?」


レッドは頷いて話を進めた。


レッド「うまく加工すれば鉄以上の硬度になる。」


「そんなのが取れるんだから、近くに世界樹せかいじゅがあったんだ。」


また、専門用語だ。今日は質問する日なのか?つか、誰だあれ?


アミナス「世界樹?」


レッド「神代かみよの時代、大きな木があった。天まで届くような大きさを誇ったソイツを神々は世界樹って呼んでた。」


「その世界樹はレアメタルで出来てたって話じゃ!」


「うるせー!手元に集中しろホワイト!」


……もう、誰が誰だかはもうこの際置いといて、


アミナス「それって結構、重要なことじゃないの?」


オルガ「国に知らせたほうがいいんじゃない?」


どうしよう?

知らせる◀

黙ってる


ぴっ


アミナス「わかったよ。国王陛下のところに行ってみるよ。」


オルガ「つか、私の方天画戟は直る?」


フォルジュ6の誰かが言う。


「そんな古いの作り直したほうがええ。」


「ワシの出番じゃ!任せよ!」


「方天画戟か、最近ではあんまり見ない長物だ。」


オルガ「そりゃそうさ、うちに代々、受け継がれてきてたやつだからな!」


「へー、物持ちのいいこった。気に入ったぜ!」


「そうじゃ、試しにレアメタルで作るのはいかがでおじゃろう?」


「そりゃいい!」


オルガ「やった!これでまた戦えるぞ!」




国にアポイントメントを取るため、鉱山でレアメタルが取れるとの内容を報告し、待つこと数週間、ようやく、謁見が許され、今日セントローゼの王宮へ向かうこととなった。


馬車には僕とオルガ姉と幽世から帰ってきたダリアがいる。


アミナス「オルガ姉、ロイ大佐は?」


オルガ「ダメだね。1人で立つこともできやしない。仕方ないけど、引退するしかなさそうだ。」


アミナス「それってまずくない?」


オルガ「うん。」


ダリア「そうだ!魔女にいい医者の方がおられるのでその方に見て頂くというのはどうでしょう?」


アミナス「イイね、それ!」


ダリアも役に立てて嬉しそうだ。


ダリア「では、今度ネブリナさんと行ってきますね?」


オルガ「頼むのよ!」


そうこうしていると、馬車は王宮の敷地内に入った。




謁見の間


右大臣「リヴィエール公!アントルイスに新しく出来た鉱山でレアメタルが取れるとはまことか?!」


左大臣「陛下、わが配下の者のうらないによりますれば、この者は予算欲しさに嘘を言っておるのです!」


アミナス「申し上げます。陛下。」


オルガ「嘘を申してなどいません!」


左大臣「うるさい、黙れ!猪武者!お前に聞いとらん!」


オルガ『ぐ、腐れ野郎がっ!』


アミナス「私どもには普通の鉄鋼にしか見えませんが、製鉄所の目利きが言うには、これはレアメタルだと言います。」


僕は仰々しく、カバンから鉄鋼石を取り出して横にいた役人に渡した。


それを控えていた大臣たちが検品する。


点数を稼ぎたくてホラを吹いたのか?はたまた、ホントに目利きができたのか?は置いといて、大臣の一人が鉄鋼石を持って叫ぶ。


まぁ、どっちでも思惑通りだ。


「鉄とは違う輝き!間違いない!コレはレアメタルです!」


ザワザワ


国王「であれば、お主の領地の重要度は上がり、徴収する税率もその身にのしかかる責務も上がる。そのことは分かっているのかリヴィエール。」


アミナス「モアナは私が命に変えても守りまする。」


国王「よくぞ言った。終いだ。その方ら、よいな?」


左大臣「……わかりました、陛下。」


右大臣「これにて、閉廷。」


「国王陛下、ご退座ー!」


国王がいなくなると謁見の間は僕らをうらやねたむ王族、貴族たちの視線であふれれかえった。


アミナス『これからは、足元や夜道に注意しないとな。』


オルガ『大丈夫だよ、アミナス。お前は私が守る。』


国一の武芸者と幼なじみなのは大きい。


僕らは視線をさけるように謁見の間をでた。




騎士団詰所


アミナス「ってことなんですロイ大佐。」


ロイ大佐は医務室の隣の部屋のベッドに寝かされていた。


ロイ「ソレは、願ったり叶ったりですな。」


オルガ「また戦場に立てますよ、大佐!」


ロイ「私はね、少佐。兵の増派のことを言ってるんだ。この体のことじゃない。」


オルガ「またまたぁ!」


ロイ「私は平民出身だ。金のために軍人という職業を選んで、たまたま立案した作戦が当たって、今の地位に就いた。だからもう、退役して、年金ぐらしもいいかと思ってたんだよ。」


オルガ「まだ早いですよ!」


ロイ「いや、そのためにアミナス様に兵法の勉強をしてもらってたんだ。」


それを聞いてオルガ姉の顔は曇った。


オルガ「本当なのか?アミナス?」


僕は頷いた。


アミナス「最初は、作戦立案の補佐ができればと思ってたんだけどね?」


ロイ「でもまぁ、不自由なままより、元のように自分の足で立てたほうがいいかな?」




その後、ロイ大佐から正式に退職届が出された。彼を疎んでいた中央の総合参戦群はすぐさまそれを受理した。

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