07/05
「終末なんて、ねえじゃねえか」
7月5日、太陽は昇った。
結局、終末なんてのはガセネタだった。
「……あると思ったんだけどな」
「なんでそう思ったんだよ。よくある陰謀論、オカルトだろ」
「……俺が、そう願ったから」
俺の質問に、いとりはそう答えた。
いとりの声は、今までにないほど静かだった。
「願うって、なんで」
「……夢に見たんだ。俺が、このまま迎える『将来』のこと……俺は受験に失敗して、友達関係を全部切って、LINEは相変わらずハメドリ君のアイコンで、それなのにマチアプをやってるような奴になる」
「ずいぶん具体的だな」
「だから、全部壊してやろうって、そう願った」
冗談のように言いながら、俺は笑えなかった。
俺も、将来が見えていたら、その将来が苦しみの連続だったら、同じことを願っていたかもしれない。
「けど……そうだな。お前が、止めたんだろ、終末」
「ああ、俺が/prayした。そうしないと、7月が終わらないから」
いとりがふっと笑う。
何か吹っ切れたようだ。
「あ~あ! 結局こうなんのか! わかった! わかったから。俺も、先に進むよ」
「その時は、一緒に飲もう。あと、ぬきたしをやれ」