構文システム解説
作者もあまり構文って何だろうって感じです。構文の具体例を示していくとポジティブな言葉を話そうとかひろゆき構文みたいな話し方になるのであまり書いていません。とりあえず、話す言葉が人を作るなら、言論統制を完璧に行うことで優しい素敵な世界ができると思いました。
構文(Syntax)
言葉・表情・沈黙・動作など、すべての表現を記録・分析し、
「赦し」と「倫理」を数値化する制度。
発明者ジュリアノスによって設計され、「語る者に秩序を」「語られぬ者に赦しを」を理念とする。
最初期は言語ログによる数値構文、のちに色彩・音・感覚に拡張される。
β Interface
構文の改良型プロトコル。
「色で語り、色で測る」を基本とし、数値スコアに代わる彩度反応式を導入。
「共感語=淡橙」「誠実語=翡翠」「沈黙=灰」など、感情と語りの質が色で可視化される。
Aurora Protocol(Aur Protocol/オーロラ構文)
アイレイムの発声(Aur Ω)を契機に設計された次世代構文。
「数値でも色でも記述不能な語り」を測るため、未定義反応域(Aur)を中心定数としている。
愛・赦し・罪など、“定義される前の感情”を記録しようとする試み。
ジュリアノスによって構想されるが、ハルメアスはこれに懐疑的。
Aur Ω(オーロメガ)
アイレイムが発した分類不能な第一声/第三声の波形。
すべての既存構文と色体系を横断し、彩度/数値/倫理記録を同時に干渉・変異させる。
“語りの外側にある赦し”の象徴。
Aur Protocolの定数基準でありながら、誰にも再現できない。
彩度自治都市連盟(CCU)
灰霧事件後、各地の色派自治体によって結成された都市連合。
構文の“数値中心主義”に対抗し、「彩度による語りの自由」を主張。
Aur Protocolの導入を一部受け入れつつも、中央支配には批判的。
学園レ・ロゼはその象徴的中立地。
灰霧蜂起
構文統制に対抗して発生した暴動事件。
構文機器のリセット兵器〈Prism Zero〉が一部都市に灰色EMPを拡散し、全記録が一時消去される事態に発展。
記録されなかった罪、語られなかった赦しが浮上し、構文倫理が大きく揺らぐ契機となった。
Coloratura
ノアが開発した「音と色で語りを記録する演奏構文」。
各演奏はコード名(Φ、β、Ωなど)を持ち、色コード+数値+音階の組み合わせで共鳴を引き出す。
聴衆の端末が演奏に同期し、教室や街が色彩と和声で“語る”ことになる。
未分類発話(Non-Coded Utterance)
構文ログに収録できない発声・語彙・沈黙。
Aur Ω や子どもの発話、恋人同士の囁きなど、「文法にも構文にも翻訳できない語り」の総称。
構文社会において最も危険で、最も人間的な記録とされる。
赦し(Forgiveness)
この社会で最も記録され、そして最も破壊された語。
構文制度の中心理念であり、「正しく語る者は赦される」「語られぬ者も赦される」ことが前提。
だが制度が拡張されるごとに、「赦し」は数値、色、音、非記録領域へと分裂していく。
現在、誰も“赦された”と確信できない世界に至っている。
構文制度解説
構文制度とは、「語ることそのもの」を記録・分類・制御することによって社会秩序を維持しようとする統治機構である。発明者ジュリアノスによって設計され、その原初の理念は「語られぬ者を赦す」「語る者を正しく記録する」にあった。
本制度は言語のみならず、沈黙、動作、表情、色、音、さらには“発語されなかった感情”までを対象とする全方位記録型倫理構文である。導入後、あらゆる人間行動は「構文スコア」によって定量化され、スコアの高低によって個人の報酬、社会的信用、居住区、配偶、娯楽、宗教参加資格などが決定される。
さらに構文制度は、「語り」に内在する危険(嘘、扇動、暴力)を抑制する目的で「Aurora Protocol(オーロラ構文)」を発展させた。これは分類不能な発語や色彩反応を中心に、未定義語の観測と記録を試みる次世代構文である。これにより「赦し」「愛」「罪」といった人間の根源的情動にすら、数値と色を割り当てることが可能となった。
制度社会において市民は、日々の構文スコアに従って階級的に分類される。高スコア保持者は「黄金階層」に分類され、薬物・性愛・祈祷・教育・神語閲覧などにおける特権が与えられる。中位層「律民(Auditor)」は奉仕義務と報酬のバランスが取られ、低スコア保持者「沈黙者(Vox Silentium)」は発話や娯楽の制限対象とされる。スコアが一定値を下回った場合、存在そのものが“記録されなくなる”=「Null(空語)」として社会的実在から除去される。
具体的な報酬はスコア帯ごとに設計されており、以下のような構成である:
- 【95〜100】:選択性交配権、人工快楽剤の自由使用、神殿区域の住居権、複数言語の閲覧・使用許可、高栄養食の無償提供、礼拝免除権。
- 【85〜94】:娯楽区域への自由アクセス、週次祈祷式における上席参加、構文演奏会の座席指定、報酬型学習講座の優先受講権、信仰補助薬(オキシトシン系)受給権。
- 【70〜84】:食糧・住居保障、語彙補助ツールの使用権、娯楽映像の週次閲覧枠、構文朗読機の貸出申請権。
- 【50〜69】:基礎食料の給付、毎週の語録反省課題、公共祈祷への強制参加、服装色彩制限、語彙範囲の縮小。
- 【0〜49】:外出制限、言語剥奪装置の装着義務、単色服の着用、音楽・映像・言語補助の遮断、倫理再教育プログラムの義務化。
構文制度は宗教的構造をも内包している。神の定義は「語られぬもの」とされ、語ることでのみ現れる神格存在(Lex)を信仰対象とする。民衆(Vox)は語られることで存在が保証され、語られない者は“無”とされる。信仰、報酬、処罰、記録、薬物すべてが語りによって統一されるこの社会は「聖統倫理構文帝制(Theocratic Syntax Empire)」と呼ばれ、快楽と秩序を一体化させた“幸福な統治”を実現している。
構文制度下では反乱は原理的に起きにくい。すべての不満は予測可能な行動パターンとスコア変動として事前に可視化され、薬物・快楽・言語制限・記憶編集によって“行動を起こす前に沈静化”される。さらに語りを通じてのみ世界が認識されるため、「語られない=存在しない」という絶対的構造により、反体制者は「語源抹消(Null化)」という名の合法的消失に処される。
このように、構文制度は「語ること=従順」「語られないこと=死」という、従来の倫理・政治・宗教・言語の枠を超えた新たな支配体系であり、人間そのものを「語り得る構文単位」として統制する未来型制度である。
構文制度の世界的支配は一国の制度導入では終わらなかった。王都を拠点に構文国家が成立すると、ジュリアノスは構文制度を拡張的に輸出し、他国との通商協定に倫理スコアの適用を義務づけた。次に行ったのは、主要資源である石油の輸出停止と、それに連動したエネルギー制裁である。エネルギー依存国家は、構文制度を受け入れなければ社会インフラの崩壊を余儀なくされた。さらに、構文国家は独自の情報兵器と倫理制御AIを開発し、倫理的違反言語をリアルタイムで解析・遮断できる構文戦端末を配備した。これにより構文非加盟国は通信網を麻痺させられ、経済・軍事の中枢を一時的に封鎖される事態が相次いだ。しかし、構文加盟国内の住民には小型インターネット機器の無料配布や安定した衣食住の提供が行われ、非構文加盟国も参入をよぎなくされた。これらの働きにより徐々に構文制度が地球全土を支配するに至った。