その⑤ 携帯電話のカメラ
スマートフォンではなく、昔の携帯電話の話。
あの小さい画面、カメラで、可怪しい写真が撮れた。
私が何の気無く、務め先の工場を外から撮った時。
壁の向こうからこちらを覗く、明らかにこの世のモノでは無い、男が写っていた。
そう思ったのは、男があり得ない位置に写っていたからだ。
覗き込む男は建物の三階部分、階段も、立てるような出っ張りも、身を乗り出す為の窓も、何も無い筈の、建物の外側に写っていた。
慌てて、直ぐ様、同僚に見せた。
「うわ、マジだ。写ってんじゃん、やべー」
皆が同じような反応だった。
次の日。
あの写真もう一回見せて、という同僚にせがまれ携帯に保存した写真を見せる。
「あれ?あいつ消えてね?」
言われて写真を確認する。
私の目には変わらず、男が写っている。
昨日よりも、近付いて来ている様にも見えた。
「え?俺には見えないけどな」
同僚はそう言っていた。
次の日。
一人であの写真を確認する。
昨日よりも、更に近付いて来ている。
既に、その顔が判別出来るくらいには。
男は、泣いている様な、笑っている様な顔だった。
次の日。
同僚に、体調が悪そうだと言われた。
一人で写真を見るのが怖かったので、同僚と一緒に見てもらう事にした。
「いや、やっぱ消えてるよ」
そう言われて、意を決して画面を見る。
いつもより、画面が少し暗く見えたが、写真の中の男は消えていた。
次の日。
不安から解放された安心感からか、微熱が出たので休んだ。
一人で写真を確認しても、もう何も可怪しい事は無かった。
現在。
携帯からスマートフォンに時代は移り変わる。
でも僕は、二度と写真を撮らない。
渡すものか。僕のものだ。
了




