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美しき教え  作者: 美しき教え
3/4

第3章 プロへの階段

いよいよ訓練も中盤に入った。

本物の飛行機に乗る、OJT(on the job training)に

移行できるのか?

美織の前にはまだまだ大きな困難が待っていた。

この作品は、noteにも掲載しています。


第3章 プロへの階段




CAになったら誰もが、あのカートを押して「お食事でございます」

などと言って、にこやかに

お客様にミールやドリンクサービスをすることに、憧れているが、

それにも置き方、ドリンクの注ぎ方、分量など、とても細かい

ところまで注意を受ける。


「お客様の期待を裏切ることはできません。お客様は飛行機の中で

暇な時、何をしていると思いますか。私たち客室乗務員を見ているんですよ」

と言われた時には、「確かに」と思い、一つ一つの所作にも

注意をするようになる。


さらに、少し雑な美織は、立ち方、お辞儀の仕方、物の渡し方まで

注意をされる。


「足を開いて立ってはいけません」

「指は揃えて」

など、本当に細かい。


あんなにあっさり一回の受験で合格できたんだから、きっと自分は

CAに向いていると思っていたのに、こんなにたくさん注意をされて、

こんなにたくさん怒られるなんて、全然向いてないじゃん、私、

と何度思ったかわからない。


なんで面接官は私を合格させたんだろう、と考えたこともある。

そんな時は、当然自信をなくしていて、

「向いてないなら辞めて福岡の実家に帰ろうかな」と

思ったことも、何度もある。


でも、やっぱり辞めたくないからなのか、自分に都合の良いように

考えて復活した。


それは、「私がCAに向いているかどうかは、自分ではわからない。

でも、プロである面接官が認めて合格した訳だから、どっか向いているところが

あるはず。君ならできるでしょ、と言われたのだ」と。


そうして、OJT、(On the jpb training,実際の飛行機に乗っての訓練)、

本物のお客様の前に出る前の大きな試験に、5人全員無事合格した。


ただ、同期の中で2名だけこの試験に合格することができなかった人が出た。

彼女たちは、契約通りこの日の夕方で契約が終了し、制服を返却し解雇された。

今は、解雇されることはなく、「リチェック」ということで、訓練を延長して受け、

再度見極めを受けることになる。


だが当時のこの厳しい現実に、教官も同期はみんな泣いていたし、

美織も同期を可哀想に思ったが、明日のOJTスケジュールが発表され、

フライトが決まっている今、自分のことで頭がいっぱいで、正直自分のことしか

考えられなかった。


そのOJTは、美織の今までの努力が吹き飛ぶくらい、ハードだった。


早朝便での訓練が多いので、朝2時おきで、3時に家を出て出勤する。

同期と一緒に会社が手配してくれたタクシーに乗っていくが、誰も車内で

言葉を発しない。

緊張と、暗記事項の確認で頭がいっぱいなのだ。


真っ暗な外の景色を時折眺めながら、あんなに好きだった空港が近づくにつれて、

胃がキリキリする。


「今日も頑張ろうね」

「うん」


みんな同じ気持ちなのだ。


とタクシーを降りて、みんなでロッカールームに向かう。


それでも、不器用な美織は、仕事が遅いし、雑だし、一点に集中してしまって、

先輩やお客様の動きに気づかない。

「ああ、また今日も仕事ができなかった」

と毎日思う。


先輩方からたくさんのアドバイスをもらうが、気持ちはどんどん落ちていく。



一人暮らしの自宅に戻り、ご飯を食べてから復習。

何も考えずただただ毎日やることをこなしていく。

同期とも、それぞれフライトが違うのでなかなかお茶をして帰る

機会もなくなっている。

どんどん追い詰められているのがわかる。




第3章 おわり


第4章につづく

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