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第10話 バーセリーの街

 バーセリーの門衛に、冒険者カードを見せるとすんなりと街の中に入れた。


 街は石造りの外壁で囲まれている。外から内側の様子が見えなかったが、中に入ってみるとロゼッタ村の10倍ぐらい人も家の数も多い。


 人間だけでなく、耳の長い美形のエルフ、背の小さいドワーフも見かけた。


 エルフとドワーフの容姿は、漫画やアニメの印象そのままだ。異世界から地球に広めた奴がいるのではと疑ってしまう。


 この街だけなのか、種族的なものなのかわからないが、階級的なものを感じる。

 わかりやすく例えるなら、エルフは貴族、ドワーフはスラムの住人のような雰囲気だ。エルフが道を歩くと、町民やドワーフはビクビクしながら道の端に避けている。


 俺は関わらないように魔石を売るため冒険者ギルドへ向う。


 ハリーさんから聞いた話だと、冒険者ギルドはどの街でも門から近い立地にあるらしく、簡単に見つけられた。

 

 ギルドの中に入ると、夕方だからか受付カウンターの前には10人ぐらい並んでいる。俺は魔石買い取りの窓口に並んだ。


 前に並んでいた冒険者、歳は40代ぐらい見るからに熟練の冒険者が話しかけてきた。


「おまえ見ない顔だな。どこから来たんだ?」


「ロゼッタ村からです」


「ロゼッタ村か。あの周りだとザコばっかりで儲からないからな。おまえ何ランクだ?」


 さすが熟練。とてもエラそうな物言いだ。


 個人情報を無遠慮に聞いてくるのはどうかと思ったが、この世界では常識の範疇かもしれないので、素直に答えることにした。

 

「……Fランクです」


「エ、エフ、Fランクだって。あははははっ、その程度で出稼ぎのためバーセリーに来るとか、おまえバカすぎんだろっ」


 Fランクってそんなにバカにされるのか。


「悪いことは言わないからロゼッタに戻れ。この街は最低でもEランクはないと死ぬぞ」


 少しずつ腹立ち始めるが、顔に出さないように教えてやる。


「いや、この辺の魔物なら簡単に倒せますよ」


「まあまあ、強がるなって。おまえぐらいの歳だとイキる気持ちはわかるけどよ。無理すんなよ」


 心配して言っているのか、悪意で言っているのか、俺は冒険者との付き合いなんてハリーさんしかいないのでわからない。けれど、俺はこのおっさんのことが嫌いだってことは確定した。

 

 おっさんがFランクと騒ぐから、まわりにいた冒険者の数人が、俺のことをチラチラ見て話している。碌な話じゃないだろう。俺が不機嫌になったのを察したのか、それからおっさんは話しかけてこなくなった。


 ――しばらくすると、受付の順番がまわってきた。


 受付の女性に冒険者カードとリュックから取り出した魔石を渡す。


 「タクミ様ですね。魔石をお預かりします。……これ全てタクミ様が倒されたのですか?」


 この二日間でスライム、ゴブリン、一角兎、コボルト合わせて50個近く魔石が溜まった。おっさんが俺の様子を少し後ろから覗いているのは気配でわかっていたので。


「この街まで移動しながらだったので、この程度ですが……」


 とオッサンに聞こえるように言った。


 チッ……と舌打ちが聞こえた後、オッサンの気配が遠ざかる。


 ふふふっざまないな。この魔石の量がどの程度なのかわからないが、オッサンの期待を裏切ったのは間違いないだろう。


「Fランクでこんなに沢山魔物を討伐するとはすごいですよ。コボルトもいますよね。……何か昇格したくない理由とかあるんですか?」


「ただ昇格条件を知らないだけです。どうすれば昇格できますか?」


「討伐含むクエストを1つ、他はなんでもいいので2つのクエストを完了させてください。それでEランクに昇格できます」


「そんな簡単なことで良かったんですね。明日にでもクエスト受けてみます」


「他にもわからないことがあればお気軽にお尋ね下さい。こちらが魔石の買い取り代金の250ゴールドになります」


 冒険者ギルドを出ると、おっさんがパーティメンバーらしき奴らと話していた。


 ん? エルフもいるのか。


 関わり合いたくないので通り過ぎようとしたとき、おっさんが話しかけてきた。


「おいまて、おまえ異世界人か?」


 おっさんは、どこまでも無遠慮な奴だった。


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