表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼の幸せを願っていたら、いつの間にか私も幸せになりました  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/87

体調を崩しました

グラシュ国に来て、1ヶ月が過ぎた。すっかりグラシュ国にも慣れ、毎日何不自由なく過ごしている。特にアリサお義姉様が私の事を物凄く気に掛けてくれ、先日はお義姉様の友人たちと一緒にお茶をした。


皆いい人たちばかりなのだが、ついカルミアやファリサ、ティーナ様の事を考えてしまう。さらに先日、ついにアデル様から“いい加減に帰ってくるんだ!”と、強く言われた。


私も帰りたい…

でも、親切にしてくれるアリサお義姉様や、毎日嬉しそうにしているおばあ様の顔を見ると、どうしても帰りたいと言い出せない。それどころか、2年生からラーディエンス学院に編入する話まで出てきている。


このままだと、本当に国に帰れない。とにかく、早く皆に話して、帰国しないと!


今日も朝からおばあ様と一緒に、中庭でお茶を飲んでいる。今日こそおばあ様に“国に帰る”と言わないと!そう思っていたのだが…


「やっぱりローズがいてくれると、心が安らぐね。ローズがいなかった7年は、本当に心にぽっかり穴が開いたみたいで…ローズ、グラシュ国に来てくれる気になってくれて、ありがとう。私は今が一番幸せだ」


「急にどうしたのですか?おばあ様ったら」


「昨日、ローズが私の前から去っていく夢を見てね。何度も“ローズ、行かないで!ローズ!”と叫んでいるのに、どんどんローズが離れて行ってしまって。それで、なんだか急に怖くなってしまったんだよ。またローズが私の元から離れてしまうんじゃないかって…」


そう言って涙を流すおばあ様。そんなおばあ様の背中を、優しく撫でる。


「もう、おばあ様ったら。私はどこにも行きませんわ」


本当は国に帰りたい、今日こそは言おうと思っていたのに…私ったら、バカよね。こんな嘘までついて…


おばあ様とお茶をした後、1人部屋に戻ってきた。


「は~、私ったらどうしてこうも自分の意思が伝えられないのかしら?どちらかと言えば、はっきり言うタイプなのに。いざというところで、言えないのよね」


ついため息が出てしまう。本当にこのままだと、帰れない。さすがにアデル様と1ヶ月以上会っていないのだ。寂しくてたまらない。それに、あまりアデル様と離れ離れの状態が続いてしまったら、もしかしたらアデル様は私に愛想をつかしてしまうかもしれない。


せっかく両思いになれたのに…


なんだか急にアデル様が恋しくなって、枕に顔をうずめて泣いた。大好きな家族と一緒なのに、こんなにも寂しいなんて…それだけ私にとって、アデル様はもうかけがえのない存在になったという事だろう。


結局私は、泣きながら眠ってしまった。



*****

「…嬢様、お嬢様、起きて下さい」


誰かが私に声を掛けている。一体誰?


ゆっくり目を開けると、そこにはメイドの姿が。あぁ…私、あのまま寝てしまったのね。


ふと窓の外を見ると、薄暗くなっていた。


「お嬢様、晩御飯のお時間ですよ。それにしても、こんなに長い時間お休みなるなんて…て、お顔が真っ赤ですわ。大丈夫ですか?」


顔が赤い?そういえば、なんだか体がだるいわ…それに、頭も痛い…


「ごめんなさい、なんだか体がだるくて…起きられそうにないわ」


「まあ、何て事でしょう。すぐに医者をお呼びいたします。とにかく、お着替えを。氷とお水も準備しないと」


数名のメイドたちが、慌ただしく動き始めた。あっという間に着替えさせてもらい、おでこには冷たいタオルが乗せられた。


「ローズ、大丈夫かい?体調が悪いらしいそうじゃないか?」


「ローズちゃん、大丈夫?お昼ご飯のときも姿を見せなかったから、心配していたのだけれど、まさか体調が悪かったなんて」


心配して私の元にやって来たのは、お兄様とアリサお義姉様だ。


「…大丈夫…と言いたいところですが、だるくて…」


「なんて事だ。すごい熱じゃないか!おい、医者はまだか」


「今呼んでおりますので、もう少々お待ちを」


お兄様やお義姉様も不安そうだ。その時だった。


「大奥様、お嬢様はお病気なのです、万が一大奥様に移りでもしたら大変ですので、どうかお部屋にお戻りください」


入り口の方を見ると、杖を突いたおばあ様の姿が。心配そうにこちらを見つめていた。


「おばあ様、ローズちゃんの部屋には近づいてはいけないと言ったでしょう。とにかく、部屋に戻りましょう」


アリサお義姉様がすぐにおばあ様に駆け寄り、連れて行こうとするが…


「でも、ローズがあんなに苦しそうなんだよ。もしもローズが死んでしまったらと考えたら、部屋でゆっくり何て出来ないわ。ローズ、可哀そうに」


そう言っておばあ様が私の方に来ようとしている。


「…おばあ様、心配かけてごめんなさい。でも、私は大丈夫ですわ…ですから、どうかお部屋に。おばあ様に移してしまって、万が一の事があれば、私は悔いても悔いきれませんので」


「ほら、ローズちゃんもそう言っているし、看病は私がしますから、どうかおばあ様はお戻りください。診察結果もすぐに報告しますので」


何とかお義姉様がおばあ様を説得してくれ、しぶしぶ部屋に戻ってくれた。私ったらおばあ様にも心配をかけて、何をしているのかしら?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ