表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼の幸せを願っていたら、いつの間にか私も幸せになりました  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/87

俺の気持ち~マイケル視点~

「マイケル、そんなに気にする事はない。お前はローズ嬢にきちんと謝罪して、許してもらったのだろう?」


「そうよ。ローズ嬢のお兄様も、きっと妹可愛さにああいっただけよ」


パーティーの帰りの馬車の中、俺を慰めてくれる両親。確かにローズは許してくれた。でも、ローズの兄上に嫌われていては、意味がない。なぜなら俺は、ローズが好きだからだ。可能であれば、ローズと結婚したいと思っている。だから、ローズの家族に嫌われる訳にはいかない。


家に帰って来てからも、出るのはため息ばかり。


そもそも、俺とローズの出会いは最悪だった。俺の振り払った剣が、ローズの額を切りつけたのだ。大量に血を流し倒れるローズを見た瞬間、生きた心地がしなかった。


俺はこの令嬢の命を…そう考えただけで、震えが止まらなかった。ただ、幸いなことにローズはあの後すぐに目を覚ましたとの事。本当はすぐにでもお見舞いに行き、謝りたかったが、翌日には退院するとの事で、謝罪は翌日行く事にした。


両親からは“私たちも一緒に行く”と言われたが、これは俺が起こした失態だ。だから、1人で行く事を両親に伝えた。


正直ローズに会うのが怖かった。令嬢の顔に傷をつけたのだ。きっと怒り狂われるだろう。でも、それも仕方がない事だ。そう腹をくくり、ローズに会いに行った。でも、予想に反し彼女は非常に穏やかだった。さらに


「どうかあまり気にしないで下さい。この変な前髪はそのうち伸びますし、傷も痕は目立たないと言われております。それに、私も剣が飛んできた時、上手くよけられなかったも原因ですし」


そう言って前髪を掴み、ヘラっと笑ったのだ。あれほどまでに酷い傷を負わされた相手に、こんな風に接する事が出来るなんて。どうやらこの子は、誰かを憎んだり恨んだりすることを知らない様だ。


本当に優しさの塊の様な令嬢だ。それに、穏やかに俺にほほ笑むローズを見ていたら、何とも言えない気持ちに包まれた。


この子の笑顔を、これからも俺の手で守っていきたい。この子と共に、この先の人生を歩んでいきたい。そう思った。こんな気持ちは、生まれて初めてだ。


それからと言うもの、俺はローズに猛アピールをした。天敵であるグラスに邪魔されることもあった。さらにグラスの弟のアデルもローズにまだ未練がある様で、ある日を境にローズに猛烈に絡む様になってきた。


自分から別れを切り出したくせに、図々しい男だ。


とにかくアデルに負けたくなくて、必死にローズにアピールした。でも、ローズは非常に鈍い。全然俺の気持ちに気が付いてくれない。どうやら俺の事を、本当に友達としか思っていない様だ。


そんな中、学院主催のパーティーに参加するため、隣国から兄上が帰国していると聞いた。ローズが俺を全く意識をしていないなら、兄上を味方につけようと思ったのだが…


生憎このありさまだ。きっと近々ローランド殿はグラシュ国に戻るだろう。それまでに、なんとかしないと…このままでは、絶対にいけない。


そうだ、こんなところで落ち込んでいる場合ではない。明日もう一度、ローランド殿に会いに行ってみよう。



翌日、授業が終わると、すぐにローズの家へと向かった。多分ローズは今日もティーナ嬢たちとお茶をしているだろう。本当は俺も乱入したいが、生憎今日はローランド殿と話がしたいのだ。きっと一筋縄ではいかないだろう。それでも、やれるだけの事はやりたい。


そんな思いで、ローズの家へと向かった。


俺が会いに行くと、客間に通してくれたローランド殿。


「それで、今日は何の用だい?」



「はい、昨日の続きを話したいと思いまして。本当にローズの怪我の件、申し訳ございませんでした」


深々と頭を下げた。


「どうか頭をあげてくれ。昨日、家の執事に改めて話を聞いたよ。君はすぐにローズに謝罪に来たらしいね。そしてローズが自宅待機をしている間、毎日お見舞いに来てくれたそうじゃないか。そもそも、君と打ち合いをしていた相手は、一度も謝罪に来ていないらしい。その事を考えても、君が誠実な人なのだろうという事はわかったよ」


昨日とは打って変わって、穏やかな表情のローランド殿。


「それでも、私がやった事は許される事ではありません。ですから、もう一度きちんと謝りたいと思い、今日謝罪に来ました」


ローランド殿の瞳を見て、はっきりと告げた。すると、何かを考えている様なしぐさを見せるローランド殿。


「…君は、ローズの事が好きなのかい?」


急にそんな事を言いだしたのだ。一瞬戸惑ったが


「はい、ローズを愛しています」


ローランド殿の瞳を真っすぐに見て伝えた。


「そうか…グリースティン家のアデル殿も、ローズに気がある様だね。実はローズには“学生の家は色恋は早い”と伝えてあるんだよ。ローズは令嬢だ、万が一取り返しのつかない事になったら大変だからね」


「私は、そんな不誠実な付き合いは絶対にしません!」


「そうだろうね…君の真っすぐな瞳を見ていると、そんな気がするよ。ただ、やはり兄としては、妹の恋の話は聞きたくないし、妹が悲しむ姿も見たくない。だから、どうかがっかりさせるような事は…しないで欲しい…」


そう言うと俯いてしまった。きっと兄として、妹が誰かと付き合ったりすることは、嫌なのだろう。それでもローランド殿なりに、譲歩してくれている様だ。


「ありがとうございます。ローズに振り向いてもらえるかどうかわかりませんが、精一杯頑張ります」


ペコリとローランド殿に頭を下げた。そんな俺を見て、苦笑いをしているローランド殿。やはりローズの兄だけの事はある。大切な妹を怪我させた憎き相手でもある俺の事を、わざわざ執事に聞き、歩み寄ってくれるなんて…


ローランド殿の期待を裏切るような事だけは、絶対にしない。そう心に誓った。


ただ…ローズは非常に鈍い。俺の気持ちに、まずは気付いてもらうところから始めないといけないな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ