アデル様のお陰で心が軽くなりました
翌日、重い足取りで学院に向かう。
「ローズ、おはよう」
馬車から降りると、ものすごく機嫌がいいアデル様が待っていた。
「おはようございます、アデル様」
なんだかアデル様の元気なお顔を見たら、私も少しだけ元気が出てきた。
「ローズ、どうしたんだい?ちょっとこっちにおいで」
急に真剣な表情になったアデル様。そのまま手を引かれ、校舎裏へとやって来た。どうしたというのかしら?
「ローズ、昨日君、泣いていたね。目が少し腫れているよ。一体何があったんだい?誰かに虐められたのかい?まさかマイケルが!!」
1人興奮気味のアデル様。どうして私が泣いていた時が付いたのかしら?朝顔をしっかり洗い、鏡でもチェックしてきたはずなのに…
「アデル様、私の顔、どこかおかしいですか?」
もしかしたら、目が腫れていたのかもしれない。そう思って聞いてみたのだ。すると…
「いいや、いつもと一緒だよ。ただ…なんだか朝から暗い顔をしていたし。それに、ほんの少しだけ、目が腫れているような気がしたんだ。それで昨日、泣いていたのかなって思ったんだ」
どうやら私のちょっとした変化に気が付いたようだ。この人、意外とよく人をみているのね。
「それで、一体何があったのだい?やっぱりマイケルが!」
「いいえ、マイケル様は関係ありませんわ。大したことではないのですが…その…来月の学院主催のパーティーなのですが、仕事が忙しい様で、親が参加できないのです…それで…」
「そうだったのか。可哀そうに…そういえば、ローズのご両親は仕事熱心な人だったね。でも、心配する必要は無いよ。きちんと理由を話せば、1人での参加も認められるはずだ。それに当日は、僕がずっと傍にいるよ。家の両親には、兄上の方に行ってもらおう。そうすれば、ローズも寂しくはないだろう」
「そこまでしていただかなくても…」
「僕がしたいんだ。ローズには入学してから、随分と世話になったしね。それなのに僕は、ローズを傷つけるような事ばかりしていた。本当に反省してもしきれないくらいだ。だから、どうかこれからは僕を頼って欲しい。それとも、僕じゃあ頼りないかい?」
悲しそうに私を見つめるアデル様。
「そんな、とんでもありませんわ。ありがとうございます。早速先生に相談してみますわ」
「それじゃあ、僕も一緒に行くよ。さあ、行こう」
アデル様がスッと私の手を取って歩き始めた。相変わらずお優しいのね…またアデル様に助けられてしまったわ。
5年半前も、親が来ていない事で犯人にされた私を庇ってくれたアデル様。やっぱり私、アデル様が大好きだ。アデル様が私の心を軽くしてくれた分、私もアデル様の力になりたい。
素直にそう思った。
「ローズ、いい顔に戻ったね。やっぱりローズは、そうやって笑顔でいる方がずっと素敵だよ」
「もう、何をおっしゃっているのですか。からかうのはお止めください」
急にそんな事を言われ、恥ずかしくなって俯いてしまう。本当にアデル様ったら!
「顔を赤くするローズも可愛いね。その顔…マイケルには見せないで…」
「え?」
「いいや、何でもないよ。さあ、職員室に着いたよ。行こうか」
「はい!」
その後アデル様が先生に一生懸命説明してくれたお陰で、私の1人での参加が認められた。先生の話では、毎年何人かは1人で参加する生徒もいるから、そんなに気を病むことはないと言ってくれた。それに…
「娘の怪我の時ですら来ないんだもんな…ローズ嬢、気にする事はないからな」
そう言って先生が励ましてくれた。先生も家の親の事はよく知っている様だ。
「よかったね、ローズ。これで安心して参加できるね」
「はい、アデル様のお陰です。本当にありがとうございます」
「僕は何もしていないよ。それに、ローズが参加しないパーティーなんて、行く意味がないからね」
「え…」
さっきからチョコチョコ変な事を言っているアデル様。一体どうしたのかしら?
「何でもないよ。気にしないで。さあ、そろそろ教室に行かないと、授業に遅れるよ。行こうか」
そう言うと、アデル様が私のクラスまで送ってくれた。本当に何てお礼を言っていいやら…
アデル様には感謝しかない。
アデル様、私もあなた様と一緒に参加出るパーティー、楽しみにしておりますね。そっと心の中で呟いたのであった。




