アデルとマイケルの会話~アデル視点~
「マイケル、放してください!僕はまだローズに話したいことがあるのです!」
必死にマイケルを振り払おうとするが、さすが騎士団で鍛えられているだけの事はある。全く歯が立たない。結局馬車に押し込められてしまった。
仕方なく腰を下ろした。何が悲しくて狭い馬車の中で、恋敵と一緒にいないといけないんだ。
「アデル、どうやら吹っ切れた様だね。あれほどまでにローズを避けていたのに。今日はお見送りかい?」
涼しい顔をしているマイケル。その余裕な表情がやけに腹ただしい。
「そうですよ、僕は元々、ローズと別れたくて別れた訳ではありませんから。だから僕は…」
「僕はまた自分の気持ちを伝えて、ローズと付き合いたいと思っている!とでも言いたげだね。俺は君たちがどんな理由で別れたかは知らないよ。でも、どんな理由であれ、君から別れを告げたのだろう。それに、俺が見た感じだと、君たちは恋人らしいことをしていなかったみたいだし。そもそもどうして付き合う事になったんだい?」
「何がいいたいのですか?別にあなたには関係ない事だと思いますが…」
「そうだね。変な事を聞いてごめんね。ただ…怪我をしたとき君は、恋人ではなく兄の恋人を庇ったよね。もしかして君、ティーナ嬢の事を好きなのでは?ティーナ嬢も好きだけれど、ローズも好きだなんて、気の多い男だね」
「変な言いがかりはよしてください。確かに僕はティーナが好きでした。でも今は、ローズだけを愛しています。怪我の事だって、ローズを守れなかった自分の不甲斐なさを悔いて、それであえて別れを切り出したのです。けじめをつけるために!」
「けじめねぇ~。でもさ、ローズの気持ちは全く無視なんだね。君はさっきから、いい訳ばかり。はっきり言って、ローズに君はふさわしくないよ!それに昨日まではローズを避けていたのに、今日はローズに絡んで!ローズが君に若干引いていた事、気が付いていないのかい?」
「引いていた?ローズが?て、どうしてあなたにそんな事が分かるのですか?さっきちらっと見ただけでしょう?」
「君たちがテラスでお茶をしている姿を見たんだ。君がグイグイ来始めたから、顔が引きつっていたよ」
この男、僕たちの事を盗み見してたのか。気持ち悪い男だな!
「とにかく、ローズをこれ以上混乱させることはよしてくれ。彼女は人一倍気を遣う性格なんだ。特に君は、友人の婚約者の弟だからね。ローズも無下には出来ないのだろう」
マイケルの言う通り、僕を無下に出来ないのは確かだ。だからと言って、どうしてこの男にこんな事を言われないといけないんだ!
「とにかく、あまりローズを困らせてはいけないよ。それじゃあ、俺はこれで」
いつの間にか、あいつの家の前に停まっていた馬車。そのまま涼しい顔で、マイケルが降りていく。
結局僕は、マイケルを送って行った形になってしまった。
一体何なんだよ、あの男は!でも…確かにマイケルの言う通り、あまりグイグイ行っても引かれるかもしれない。
そもそも、ローズはまだ僕がティーナの事を好きだと思っているはずだ。だからもし今自分の気持ちを伝えても、断られるだけだ。
マイケルの事は気になるが、焦りは禁物だ!まずはローズに、僕の事を知ってもらい、興味を持ってもらわないと。
でも、ゆっくりしている間に、マイケルにローズを取られないだろうか。あいつにだけは、絶対に渡したくない。とにかく、出来る事は何でもやって行かないと!




