自分の行動に猛反省です
学院に復帰た日の放課後、カルミアとファリサと一緒に、いつものレストランに向かった。
「ローズ、怪我の完治おめでとう。カンパーイ!」
「ありがとう、2人とも」
久しぶりに3人で食べるレストランでの夕食。つい話が弾んでしまう。
「それでローズはこれからどうするつもり?やっぱりマイケル様と付き合うの?」
急にそんなふざけた事を言いだしたのは、ファリサだ。危うくジュースを吹き出しそうになってしまった。
「ちょっと、どうして私がマイケル様と付き合うという話になるのよ!」
「だって、毎日マイケル様がお見舞いに来てくれたのでしょう。あの人、放課後になるといつも私たちの教室にノートを取りに来てくれたのよ。最初はね、ローズに怪我をさせた張本人という事で、絶対に許せない!って、思っていたけれど、誠実でとてもいい人じゃない。それに勉学も武術にも優れているし。マイケル様、密かに令嬢に人気があるみたいよ」
「確かにマイケル様はいい人だけれど、私たちはただの友達よ。それにそんなに素敵な人が、どうして私と付き合うという発想になるの?マイケル様に失礼よ!」
ファリサはすぐに恋仲にしたがる癖がある。本当に悪い癖だ!
「あら、ローズはとても魅力的な女性よ。それにマイケル様もまんざらではない様だし」
「もう、ファリサ、適当な事を言わないで!マイケル様は私を怪我させてしまった罪悪感もあって、色々と気に掛けてくれているだけなのよ。いい加減にしないと、本当に怒るわよ!」
「はいはい、ローズは鈍いのだから。マイケル様の事はまあいいわ。それで、アデル様の事はどうするの?アデル様、あなたが怪我をしてから、みるみるやつれちゃって…よほどあなたを守れなかった事を気にしていらっしゃるのね…」
「そうなのよ、アデル様、すっかりやつれちゃって。今日も悲しそうな顔をしていたし。やっぱり私の怪我を見ると、あの日の事を思い出して辛いのかしら?無理に顔を会わせない方がいいと思う?」
「あなた、アデル様の話になると急に食いついてきて…う~ん、そうね。やっぱりあなたの顔をみると、罪悪感が湧いてくるのではないかしら?ねえ、ローズ、あなたまだアデル様の事が好きなの?別れを切り出されたのに?」
「ええ、好きよ。別れを切り出されたのは仕方がないわ。だって私が、ティーナ様を悲しませてしまったのですもの。きっとアデル様、私を庇わなかった事をティーナ様に責められたのよ。それできっと、未だに思い詰めているのだと思うわ」
アデル様にとって、ティーナ様は全て。ティーナ様を悲しませる原因を作ってしまった事に、未だに後悔しているのだろう。
「ねえ、ローズ。本当にアデル様ってティーナ様の事が好きなの?」
今まで黙っていたカルミアが口を開いた。
「ええ、そうよ。本人からはっきりと聞いているもの」
カルミアったら、何を言っているのかしら?
「そうかしら…この2週間、私は何度もアデル様を見たけれど、本当に辛そうで、いつもため息を付いていたわよ。ティーナ様がいる場面でもね。本当にティーナ様が好きなら、どうしてそこまで落ち込むのかしら?だって、大好きなティーナ様は守れたのだから、それでいいじゃない」
「もう、カルミアは分かっていないわね。アデル様は人一倍心のお優しい方なのよ。役とはいえ、私を守れなかった事を悔いていらっしゃるのよ」
「たとえそうだとしても、あそこまでやつれるかしら?いくらなんでも、あの変わりようは異様よ」
「それだけアデル様は、今回の件でショックを受けているのではなくって?ねえ、ローズ。あなたまだアデル様の傍にいる気?ローズの顔を見ると、あの事故の時の記憶が蘇って、余計にアデル様は辛いんじゃない?あなたのおでこにはまだ、あの時の傷痕が残っているし、前髪だってまだちょっとおかしいわよ」
「確かにそうよね…ねえ、ローズ。あなたがアデル様の事が大好きで、やつれてしまったアデル様が心配でたまらないという事はわかるわよ。でも、あなたがアデル様に絡むことで、余計にアデル様を苦しめる原因になっているのではなくって?」
私が絡むことで、アデル様が余計に苦しんでいる…
その言葉が、胸に突き刺さった。
私、アデル様には笑顔でいて欲しい、そのために少しでも元気になってもらえたら。そう思って行動したつもりだった。でも、もしかしたら私がアデル様に絡むことで、余計に苦しんでいるのだとしたら…
「どうしよう、私、今日がっつりアデル様に絡んでしまったわ…今日のアデル様、本当に辛そうだった。もしかして、私の姿を見て事故の事を思い出したから…」
体中から血の気が引いていくのを感じた。私のせいで、アデル様が苦しんでいる…
「この世の終わりみたいな顔をしないでよ。とにかく、しばらくはアデル様とは距離を置いた方がいいんじゃないの?アデル様の気持ちが落ち着くまで」
「その方がいいわ。ついでにアデル様の事は諦めて、マイケル様との恋を本気で検討するのもアリよね」
「もう、ファリサは!どうしてそこでマイケル様が出てくるのよ。でも…2人ともありがとう。今日あなた達と話をしなければきっと私、明日からもアデル様を苦しめる事になっていたわ」
自分の浅はかな考えのせいで、もっとアデル様を傷つける結果になっていたかもしれない。今日2人と話が出来て本当によかったわ。
とにかく明日からは、アデル様にあまり近づかないようにしないと!




