怪我の原因を作った令息が私に会いに来ました
翌日、なんだかティーナ様に会うのが気まずくて、午前中に退院手続きを行い、屋敷に戻ってきた。一応ティーナ様にはもう退院したことを伝えてもらう様、使用人にお願いしておいた。
1日ぶりの我が家、やっぱり我が家は落ち着くわ。家に着くと、まずは紅茶でティータイムだ。一応私は令嬢なので、包帯とガーゼが取れるまでは学院をお休みしようと思っている。
先生の話では、2週間くらいで取れるだろうとの事だ。ただ最初はやはり傷口が目立ってしまうため、出来れば前髪で隠したいのだが、生憎剣が飛んできた時、前髪も上手に切れてしまっている為、傷が丸見えだ。
こうなったら、前髪だけでもカツラを被ろうかしら?そんな事を考えていると、メイドがやって来た。
「お嬢様、カルミア様とファリサ様がいらっしゃいました」
「まあ、2人が来てくれたの?」
どうやら私を心配して、2人がお見舞いに来てくれた様だ。急いで2人が待つ客間へと向かった。
「カルミア、ファリサ、来てくれたのね。ありがとう」
「ローズ…あぁ、何て事なの…可哀そうに…」
そう言って私を抱きしめてくれたカルミア。
「それにしても、令嬢が近くにいるのに剣の練習をするだなんて。本当に何を考えているのかしら。そうそう、あなたが今回怪我をした件、学院内でもかなりの噂になっているわよ」
そう教えてくれたのは、カルミアだ。
「噂になっているのね…お昼休みに中庭で怪我をしたのだから、仕方がないわよね…」
「それで、相手の令息たちは謝りに来たの?令嬢の顔を傷つけたのですもの。ただじゃ済まさないわよ!」
「そうよね、慰謝料をたっぷり貰わないと!そもそもこんな酷い怪我を負わせておいて、お咎めなしだなんて、本当にこの学院はどうかしているわ!ローズ、ここはしっかりと抗議をした方がいいわよ」
私の為に怒ってくれる2人、有難いわ。でも…
「私の為に怒ってくれてありがとう。でも私は、彼らを罰して欲しいとは思わないわ。きっと彼らもわざとではないのだから…それからね、実は昨日、アデル様から恋人役の契約を解除されたの…」
「やっぱり噂は本当だったのね。ローズとアデル様が別れたって、クラスの令嬢たちが騒いでいたの。どうやらアデル様自ら流したみたいだから、どうなっているのかあなたに聞こうと思っていたのよ。でもアデル様も酷いわよね。怪我をした令嬢に向かって、急に契約を解除しようだなんて。周りも“ローズ様がお顔に怪我をしてすぐに別れを切り出すなんて…”て、あなたに同情的だったわよ」
「そんな!お優しいアデル様はきっと、私の事を考えて契約を解除してくださったのよ。それなのにアデル様を悪く言うなんて…」
なんだか胸が締め付けられる。
「落ち着いて、ローズ。それでもアデル様は人気が高いから、他の令嬢たちが今度は自分と付き合ってもらおうと、既にアデル様にまとわりついているから、大丈夫よ!」
既にアデル様に、令嬢たちがまとわりついているのね…それはそれで、なんだか複雑だわ。
「とにかく、あなたは怪我を治すことだけを考えてね。しばらく学院はお休みするのでしょう?授業に遅れないように、しっかりノートをとっておくから、安心して」
「ありがとう、そうしてくれると助かるわ。そうだ、せっかく来てくれたのだから、お茶にでもしましょう。すぐに準備するわね」
近くにいたメイドに指示を出した時だった。
「お嬢様、マイケル・クラステーヌ様という方がお見えになっておりますが、どうなされますか?」
「マイケル様?一体誰かしら?」
聞いたことがない方だ。そう思っていると
「ローズ、あなたに怪我をさせた張本人よ。きっと謝りに来たのよ。どうする?あなたが会いたくないなら、私たちが追い払ってあげるわよ」
「それじゃあ、剣の打ち合いをしていた殿方なのですね。せっかく来ていただいたのだから、会うわ。隣の客間に通してくれるかしら?」
「はい、かしこまりました」
メイドが急いで部屋から出て行った。
「ごめんね、2人とも。少し彼と話をしてくるから、ここで待っていてくれるかしら?」
「何言っているの!私たちも一緒に行くわ。ローズにこんな酷い傷を負わせたのですもの。一言文句を言ってやらないと、気が済まないわ!」
えっ…文句…
「ちょっと2人とも、文句だなんて…」
さすがに止めて!そう言おうとしたのだが
「さあ、早速行きましょう」
凄い勢いの2人に圧倒され、これ以上何もいう事が出来なかった。結局2人に連れられ、隣の客間へと向かったのであった。




