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どうしてそんな瞳をしているのですか?

私が過去の思い出に浸っている間に、セントラル学院に着いた。この場所に、アデル様も…


考えただけで、一気に胸の鼓動が早くなるのを感じる。ダメだわ、変に緊張してきた。


「お嬢様、どうかされましたか?」


私が中々馬車から降りないものだから、御者が話しかけてきた。いけない、早く馬車から降りないと。


「ごめんなさい、それじゃあ、行ってくるわね」


急いで馬車から降り、入学式が行われるであろう会場へと向かう。その時だった。


「ローズ、おはよう。今日から私たちもセントラル学院の1年生ね」


話しかけてきたのは、友人のカルミアだ。


「おはよう、カルミア。今日からよろしくね」


「ええ、もちろんよ。同じクラスになれるといいわね。でもローズは、私よりアデル様と同じクラスになりたいわよね」


そう言ってクスクスと笑っているカルミア。


「もう、からかわないでよ」


「ごめんごめん。あら?あそこ、すごい人ね。それにファリサもいるわ。行ってみましょう」


カルミアに手を引かれ、令嬢たちがたくさんいる方へと歩いて行く。そこには、もう1人の友人、ファリサの姿も。


「ファリサ、一体何の騒ぎ?」


「ローズ、カルミア、おはよう。ちょうどよかった、ローズ、あなたを探していたのよ。それにしてもアデル様、すごい人気ね」


そう言って苦笑いしているファリサ。令嬢たちが取り囲んでいたのは、なんとアデル様だ。5年ぶりに見るアデル様は、カッコいいなんて言葉では表せない程、素敵な美少年になっていた。でも…


令嬢たちが嬉しそうにアデル様に話しかけているが、当のアデル様は上の空だ。


「悪いがもう僕は行くよ」


そう断りを入れ、その場を立ち去ろうとするアデル様。立ち去る寸前目が合ったが、そのまま去って行った。


「ローズ、入学早々アデル様に会えて、よかったわね。あなた、ずっとアデル様の事を好きだったのだから。それにしても、アデル様、すごい人気ね。これは大変だわ」


「そうよね、アデル様はこの国で上位3本の指に入るほど人気が高いのよ。アデル様のお兄様でもある、グラス様も人気が高いし。でも、グラス様はティーナ様一筋だから」


ティーナ様…

彼女はアデル様のお兄様、グラス様の恋人。水色の髪に桃色の瞳をした、女神の様に美しい女性なのだ。ただ、あまり性格は良くないという噂だ…


「ローズ、アデル様を手に入れるには、多数いるライバルを蹴散らかさないとね」


そう言って笑っているカルミアとファリサ。もう、好き放題言ってくれて。


それよりも、アデル様の瞳…

彼の瞳からは、全てを諦めたような、絶望とも感じ取れる瞳をしていた…

その瞳を見た瞬間、胸をぎゅっと締め付けられるような、そんな痛みを覚えた。5年前にアデル様に会った時は、あんな瞳をしていなかった。この5年で、一体彼に何が起こったのだろう…


どうしてもアデル様のあの瞳が、脳裏に焼き付いて離れない。


「ちょっとローズ、アデル様があれほどまでにモテる事に、ショックを受けているの?大丈夫?」


考え込んで何も話さない私に、2人が声を掛けてきてくれた。


「大丈夫よ。それより早く入学式の会場に行かないとね」


気を取り直して、3人で入学式の会場へと向かう。会場に着くと、アデル様の姿が目に付いた。やはり何とも言えない瞳をしている。


その瞳を見た瞬間、再び胸が締め付けられる。それと同時に、どうにか彼に元気になってもらえないか、それが5年前の恩返しになるのではないかと考えたのだ。でも、一体どうやって…


そもそも、なぜアデル様はあんなにも悲しそうな瞳をしているのだろう。その原因を探さない事には、どうにもならない。


そんな事を考えている間に、入学式が終わってしまった。そして、各自教室へと向かう。


「ローズ、ファリサ、私たち3人同じクラスよ。やったわ。でも、アデル様とは別のクラスね。ローズ、残念だったわね」


そう言って私の肩を叩くカルミア。確かに残念だけれど、こればかりは仕方がない。それよりも、アデル様の身に何があったかという事の方が重要だ。もしかしたら、2人なら何か知っているかもしれない。


「ねえ、カルミア、ファリサ、なんだかアデル様、寂しそうなお顔をしていたわ。何か知っている?」


「えっ、そんな顔していたかしら?」


「特に普通だったと思うけれど…それに、グリースティン家は貿易がうまく行っていて、増々繁栄している様だし。令嬢たちに囲まれて、機嫌が悪かっただけじゃない?」


2人とも首をかしげている。令嬢たちにかこまれて機嫌が悪かったか…違う、そんな風には見えなかった。きっとアデル様には誰にも言えない様な、心の傷があるのだわ。


一体彼の身に何があったのかしら?

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