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エピローグ


「で、結局、収まるところに収まったのね」


 呆れたと顔に書いてあるヘザーに私は苦笑いするしかない。

 屋敷でヒューイットとの濃密な日々を過ごしていた私だったが、ようやく外出する許しをもらいヘザーの店を久しぶりに訪れていた。

 これまでの出来事や事情を伝え、店で働き続ける事が難しいことを素直に謝る。

 結婚までは続けても良いのではないかと少し考えていたのだが、ヒューイットに断固として反対されたのだ。


「ごめんねヘザー」

「どうして謝るのよ。仕方ないって。未来の伯爵夫人をこんな店で働かせるわけにはいかないでしょ」

「うん……」

「ま、こいつの本音は悪い虫が付くのが嫌なんだろうけどね」


 こいつ、と指さされたヒューイットは「ふん」と鼻を鳴らして腕を組んでいた。

 一人で来ると言ったのに、頑なに一緒に来ると言ってついてきたヒューイットは私の隣にぴったりとくっつくように座っている。


「まったく……リメルが捜査に協力するっていいだしたときからこうなる予感はしてたけど……本当に手の早いお坊ちゃんだこと。その上、嫉妬深いし」

「うるさい!」


 からかうヘザーに怒るヒューイット。

 懐かしい二人のやりとりに私は声をあげて笑ってしまう。


「リメル。この男は本気であんた一筋だから、重たいわよ。本当にいいの?」

「な!! 余計なことを言うなよ!」

「ふふ。大丈夫よヘザー」


 ね? とヒューイットに微笑めば、彼は嬉しそうに頬を緩め「ああ!」と胸を反らす。


「俺は絶対リメルを幸せにするからな」

「ありがとう」

「うっわぁ……でもまあいいわ、おめでとう。二人がちゃんと結ばれて、本当に嬉しいわ。リメルの家も再興できたことだし、結婚に何の障害もないわけでしょ? こんなにうまくまとまるなんて逆に怖いくらいよ。お坊ちゃんの執念は怖いわねぇ」

「お前はいちいち突っかかるな。ふん、どうせ俺にリメルを取られるのが嫌なんだろう」

「っ! ええそうよ! もうっ! 私の大事なリメルを泣かせたら絶対許さないからね。覚悟しときなさい」


 びしっと音がしそうな勢いでヒューイットを指すヘザーは、少し涙目だった。

 私もつられたのか、涙腺がツンと痛くなる。


「幸せになってね、リメル」

「……うん」


 親友の祝福に頷きながらヒューイットの腕に自分の腕を絡めた。

 私を見つめるヒューイットは幸せそうに微笑みながら寄り添ってくれる。

 胸いっぱいに広がる幸せを噛みしめながら、私もまた笑顔を浮かべたのだった。





 それから数ヶ月後。無事にリーム子爵家令嬢に戻った私は、ヒューイットと無事に婚約した。

 スタン家のご両親は泣いて喜んでくれて、何度も息子を頼むと頭を下げられた。

 知らぬは私ばかりだったようで、周囲の人々はヒューイットが本気で私を女性として好いていたのをわかっていたらしい。

 だから結婚の報告への反応は驚きより「よかったなぁ」と、長年の片想いを成就させたヒューイットへの激励の方が多かったくらいだ。


 私が元々住んでいた家はすでに人手に渡っていたため、両親たちは取り戻せた叔父の家に移り住むことになった。

 市井暮らしにようやく慣れたのに、と母は少し不満そうだったが、出稼ぎに出ていた父と再び一緒に暮らせることは嬉しかったらしい。

 叔父の行方は未だにわからないが、いつかひょっこり帰ってくるのではないかと思っている。


 結婚までは両親と一緒に暮らすつもりでいたのだが、ヒューイットがもう離れたくないとごねたため、私は婚約早々にスタン家の住人になることが決まった。

 私の部屋がヒューイットの隣室だっと知ったときには、さすがに乾いた笑いが漏れたけれど、おおむね順調に過ごせている。


「えっ!? ヒューイットが騎士になったのって、私のせいなの?」


 部屋の中、長椅子に座った私の膝に甘えるように頭を乗せて横になっていたヒューイットから告げられた突然の告白に、驚きで大きな声が出てしまう。


「ああ。リメル『結婚するなら、騎士様がいい』って目をキラキラさせてさ……あの頃の俺はチビでひょろひょろしてたから、リメルの理想じゃないんだって知ってめちゃくちゃショックだったんだぜ」

「ええぇ……?」


 なんとか幼い記憶を掘り起こせば、そんなことを言ったような気がしなくもない。

 でも恐らくは、子どもならではの一瞬の憧れだ。ヒューイットから聞かされるまでは、全く思い出せなかったのだから。


「その頃からかな……リメルに甘えるのが恥ずかしくなってつっけんどんな態度しかとれなくなった。そしたら余計にリメルはお姉さんぶって、俺と距離をとるから意地になったんだと思う」

「そっか」

「でも騎士になるって決めたおかげで俺は成長できた。きっかけは確かにリメルの言葉だったけど、選んだのは俺だし、後悔もしてない。むしろ感謝している」


 ヒューイットが体を横にして、私のお腹に顔を埋めながら腰を抱きしめてくる。


「後悔してるのは、素直になれなかったことだ。お前の家があんなことになる前に、婚約しとけば、もっと早くこうしていられたのに」

「ヒューイット……」


 私にしがみつくヒューイットの頭を優しく撫でる。

 すっかり大人の男性に成長したはずなのに、こうやって甘えられるとやっぱり可愛く思えてしまう。


「今、俺のこと可愛いとか考えたろう」

「えっ!?」


 突然、心の内を読まれ私はうわずった声を上げてしまう。

 ちょっと拗ねた視線に目をそらせば、私の腰を抱いていた腕が不埒な動きをはじめる。


「アッ、ちょっとヒュー君! あ!」

「その呼び方をしたらお仕置きだって約束だったよな」


 にやり、と嬉しそうに笑いながらヒューイットが体を起こし私を抱き上げた。

 ちゅっちゅっとわざと音を立てるようにキスされ、足取りも軽く寝台に運ばれてしまう。


「まって! まだ昼よ!」

「やだ。リメル、いいだろ?」


 こんなときだけ甘え上手になるヒューイットのおねだりに、私は反論の言葉を失ってしまう。

 ゆっくりと重なる唇を受け入れながら、私は彼の背中にそっと手を回した。




 それから一年後。私たちは無事に夫婦になった。

 ヒューイットは騎士として日々切磋琢磨しつつ、伯爵家の跡取りとして頑張っている。

 驚いたことに何がどうしたのかビルクとヘザーは現在婚約中で、もうすぐ夫婦になる予定だ。

 人生とは何か起きるかわからないものだと思いながら、私は膨らんだ自分のお腹をそっと撫でたのだった。


勢いだけで書いてしまった作品ですが、一生懸命な年下にほだされるお姉さんというお話をかけて本当に楽しかったです。

ちょっとワケありな騎士団長ビルクと商魂たくましい男爵令嬢ヘザーのお話もそのうち書きたいな。


面白かったよ!と思っていただけたなら

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次回作の励みになります!

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