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05

「え? デコピンで、だぞ? 知らな…ねぇのかよ?」

必死に取り繕う稔。

「も、申し訳ございません!」

ベンスはもとより、デルとラフェエルも慌てて土下座する。


機嫌を損ねるととんでもない事になるからだ。


「デコピンだよ、こう」

怒ることじゃないので、気にせず説明を始める稔。

「「「「「……」」」」」

いつもなら、ここからアレコレと始まるはずの嫌がらせがなく戸惑う5人。


「こういう風に」

気にせず説明する稔。

中指を親指に引っ掛けて軽く弾く。

「これをおでこにピンってするからデコピン」

「えー、はい、ええ」

微妙な顔で頷くベンス。

「いや、痛いでしょ?」

渋い反応に焦る稔。


しかし、日常的にモンスターを相手に戦っているベンスからすれば、指で弾かれる程度、痛くも何ともない。


「痛そうだろ!?」

しかし、そんな常識は想像出来ないのでついつい声が大きくなる稔。

デコピンの指の形でググッと力を入れる。

『ん?なんでしょうこれ?』

すると、頭の中に知らない文字が山ほど浮かび上がる。

ベンスの顔に彫ってあるのとも違う。


しかし、読むことが出来た。

クロウの記憶で知っている。

『これは魔法文字ですね』


回転寿司をタッチパネルで選ぶ気軽さで、それっぽい魔法をポチポチと選ぶ稔。

風魔法、斬撃属性付与、身体強化(強圧縮)などなど。


『なんか軽く見られてるようですから、魔法でビューンと何かが飛び出したら驚くでしょう』

ポチポチポチポチ……様々な魔法を付与していく。

『いや、待てよ』

が途中で止める。

『やり過ぎて怪我とかしてしまったら大変ですね…』

ポチポチポチポチポチポチ……付与した魔法を消していく。

『よく分かりませんが、この程度なら大丈夫でしょう』

「見てろよ?」

言うと、稔の指の周りにボボボボンと夥しい魔法陣が浮かび上がる。


「!? 逃げろ!!」

ラフェエルが叫ぶなり魔法陣を展開する。

「え!?」

「ディスペルシールド!!」

声に驚いて、思わず指が弾かれるのと、ラフェエルが魔法を唱えたのは同時だった。


稔と3人の間に薄く青い膜のようなものが現れる。

そこに、稔のデコピンから放たれた緑色の釘のようなものがぶつかる。


――パシャン――


緑色の釘がぶつかった青い膜は一瞬、撓んだかと思うと、音を立てて砕け散る。


「何っ!?」

ラフェエルが驚いて固まる。

そのラフェエルをベンスが抱え、緑色の釘の射線上から退かす。

緑色の釘は力を失ったようにヒョロヒョロと3人の真ん中を飛び、後ろにあった花瓶に当たって、ふっと消える。


「不完全だったとは言え、ディスペルシールドを貫通するなんて……」

目の前で起こったことが信じられないラフェエル。


――ズバーン!――

「「「「「「!?」」」」」」

その直後、釘が当たった花瓶が、真っ二つに割れる。

「何っ!?」

割れた花瓶の右半分は、一瞬でゴオッと燃え上がるなり灰となり、もう半分はビシィッと凍り付いた後、サラサラと砕け散った。


「「「「「「「………」」」」」」」

沈黙が部屋を包む。


「す、凄いでしょ、あ違う、凄いだろ?」

『魔法って恐ろしいですね!』

バクバクなる心臓を必死に宥めながら強がる。

「な、なんだ今のはっ!?」

クロウへの恐怖も忘れて、取り乱すラフェエル。


「か、風魔法でしたよね?」

「あんな略式発動で不完全とは言えディスペルマジックシールドを貫通するなんて……」

ラフェエルが咄嗟に放ったディスペルシールドという魔法は、魔法を無効化する防御魔法だ。


「風魔法に斬撃属性ならまだ分かるが……最後、燃えたり凍ったりってのはなんだったんだ!?」


風魔法というのは、そのまま風の力を操る魔法だ。

燃えるのは火魔法だし、凍るのは氷魔法の領域だ。


熟練者になれば、火と風の混合で熱風を出すとか、氷と風の混合で吹雪を起こすなどはあるにはあるが、風魔法で切り裂いた後、切り裂かれた対象に別属性の魔法が発動するなど聞いたことがない。


それ以前に、釘形は貫通属性であって、斬撃属性ではない。


魔法の天才ラフェエルをもってしてもどういう理屈であるか想像すら出来ないし、少なくとも指を弾いた程度で発動するレベルではない。


「えー、まあ、わた、ごほん、俺にかかればな」

『何かとんでもないことをしてしまった気配ですね…』

クロウが嫉妬する才能の持ち主であるラフェエルが、混乱していることに混乱しながら、チラッとベンスを見る。


「ヒィッ!?」

ベンスが真っ青になって震えあがる。

「え?」

「むむむむ無理です! 無理です! あれを受けるなど、無理です!」

「ベンスさんが死んでしまいます!」

『そう言えば、ベンスさんにデコピンするって話でしたね。ハッハッハ……出来るわけないでしょう!』


「ハハハ、まさかあれをそのままする訳ないだろう。えーっと、今のは、そう!デモンストレーションです! デモンストレーション!み…お前たちがデコピンを甘く見てたから、ちょっとビビらせただけだ」


デコピンが止まらないと聞いて青くなる3人。

『なんか可哀想になってきましたね…。でも、私はやりますよ! 私は人の嫌がることも気にせず出来るようになるんです!』

闘志を燃やす稔。


「ちょっと痛いだけだから」

『ただ加減は考えないといけませんね。さっきのから逆算すればなんとかなるでしょう』

「さあ、おでこを出すのです!」

そう言って指を構えた。


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