SS 二度目の夜会は水色のドレスで
応援いただいたおかげ様で、電子書籍化が決まりました。
発売日などは、詳細が決まり次第、告知します。
「夜会に一緒に来てくれないか」
ゼフィー様から、どこか遠慮がちに告げられたのは、夜会へのお誘いだった。
王家主催の夜会なので、どうしても断ることができないらしい。
「はい。よろこんで」
「……ありがとう、リア」
そっと手の甲に口づけが落ちる。
婚約者であれば、もちろんパートナーとして夜会に行くのは当然だと思うのですが?
どこか、私と夜会に行くのが嫌そうに見えるゼフィー様。
最近の様子から、私と過ごす時間はとても幸せそうだったのに? と首を傾げる。
「はっ、もしかして前回の夜会で粗相がありましたでしょうか」
「……え?」
不思議そうに私の瞳を見つめたゼフィー様。
目を見て話すと、相手に恐怖心を与えてしまう瞳を持つゼフィー様は、普段の会話で人の目を見て話すのは苦手なようだ。
だから、こんなふうに真っ直ぐ視線を合わせられるだけで、慣れていない私はドキドキしてしまう。
「そんなはずない。リアは、完璧で、誰よりも可愛らしかった。会場の中心で、リアだけに光が当たっているみたいだった」
「はぇ……」
ゼフィー様は、時々不思議になる程、私に対する評価が高くなってしまうらしい。
もちろん、貧乏とはいっても一応伯爵家の娘だ。最低限のマナーは、身につけている……はず。
最近はミリアお姉様に、公爵家の人間として、厳しくも暖かい指導を受けている。
「むしろ、俺が心配しているのは、夜会に参加するたびに、リアが社交界で注目されてしまうことだ」
「大げさだとは思いませんか。ゼフィー様」
「……リア」
そっと、ふれるか触れないかくらいの力で、頬に添えられた冷たい大きな手。
少しだけ俯けば、ブルーグレーの前髪とお揃いの色のまつ毛が、冷たいアイスブルーの光を隠す。
「……危機管理」
「え?」
「いや、そこが間違いなくリアの可愛いところだろう……。俺が、守ればいい話だ」
首を傾げた私が、ゼフィー様を見上げると、露骨に視線を逸らされる。
やっぱり、夜会で何か失敗してしまったに違いないわ……。
「あの」
「まあ、どちらにしても人目に触れてしまうのなら」
そっと手を引かれて、気がつけば腕の中にいた。
「俺の色を身にまとって」
ゼフィー様が、笑顔……。しかも、先ほどとは打って変わって嬉しそうだわ。
そのあともちろん、マダムルーシーの店に迅速に連れていかれた。
「あの……。マダム・ルーシー。どうして、水色のドレスがデザイン違いで、こんなにたくさん並んでいるのですか?」
「ふふっ。王都で流行っているのですよ? リアスティア様」
「そ……。そうですか」
けれど、夜会に参加したところ、私のドレスと色がかぶっている夫人や令嬢は一人もいなかった。
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