28 幸せになるのは、あなたのそばで。
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白亜の神殿に鐘の音が鳴り響く。
白いドレスと、長いベール。完全に顔は隠されている。
おかげで、加護の力は参列者の誰にも及んでいないようだ。
――――普段からずっとベールをかぶっていたら、問題解決かもしれないわ。
私は、目の前のうつむきがちに私を待つ人に、ベール越しに笑いかけた。
でも、はっきりと目を合わせられないのは問題ね?
「きれいだ……。このまま、閉じ込めてしまいたい」
「気が早いです……。それに、いろいろなところに一緒に行きたいです」
私と見つめ合っている間の、蕩けた表情のせいか、最近冷酷騎士と言われることが少なくなってきたらしいゼフィー様。
そんなことが何より嬉しい……。
「好きです。ゼフィー様」
「間違いなく、その何倍も好きだ。あの日からずっと……」
そっと、ベールが取り払われる。
その、氷みたいな瞳に見つめられても、私のことが嫌いなんて思うことは二度とないだろう。
だって、その瞳は今、私のことを大好きだって言っているように見えるもの。
――――そんなことを思うのは、傲慢だろうか。
「ああ、そういえば誓いの言葉を言う前に、決闘の時のお願いをしてもいいですか」
「――――結婚しない、ということ以外で頼む」
なぜ、ここまできてそんな不安そうな顔をするのですか。
こんなに好きにさせておいて、今更そんなこと言うはずもないのに。
「ほかの人を好きになったりしないで、それから……」
「それは、きっと永遠にあり得ない。でも、二つ目があるのか? リアはいつの間にそんなに強欲になったんだ?」
「幸せに……なってください」
それを聞いたゼフィー様は、一瞬その目を見開いて、そして少しだけ眉を寄せたまま私に微笑みかける。
「……リアを幸せにすると誓う」
「……え? ゼフィー様に幸せになって欲しいんですよ?」
「リアが幸せそうに笑っているのを見るのが好きなんだ。……遠くから見ているだけでも幸せだったのに、近くで見ることが出来るなんて、こんな幸せなことはない。願いを叶えるから……どうか俺の妻になってください」
ああもう。そのまま誓いの言葉になってしまっていますよ?
「――――喜んで」
こうして、完全無敗の冷酷騎士をたった一人、決闘で打ち負かした私は、婚約破棄の代わりに幸せな結婚を手に入れたのだった。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
本編終わりましたが、登場人物たちの裏設定は、出しきれていません。後日談やsideストーリーも書こうかなと思ってます。ぜひ感想欄で、どのキャラクターの話が良いかリクエスト下さい♪
次回作も是非読みたいと思っていただけましたら、『☆☆☆☆☆』からの評価いただけると嬉しいです。
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