25 心強いです。
駆けつけてきたゼフィー様が、私の腕を引く。
ちょっ……、踵高いんですからすぐバランスが崩れて。
ポフンッと、ゼフィー様の胸に飛び込むみたいになってしまった。
……ただでさえ、注目を浴びているのに。それに、あとから駆けつけてきた父も、いつもと違って素敵ですし。
ロード様も、騎士の正装が似合ってカッコいいです。
でも、男女比が高すぎる。と言っても、私は家にこもっていることが多かったので、女性の友達が少ない。
その時、燃えるような赤い髪が視界に飛び込んできた。
「ヘレナ様っ!」
私が、ヘレナのそばに行くと「目立っていたわね……」と、ため息混じりに微笑んでくれた。
ヘレナは、リアン伯爵家の次女。幼い頃に友人関係を結んで以来、フローリア伯爵家が没落しても、仲良くしてくれている得難い友人だ。
私と違って社交的で、大人びたマーメイドラインの華やかなドレスがよく似合う。
「貴女が、カフェでも異性から注目を浴びていたのは気がついていたけれど、ここまでとは……。それと、それマダムルーシーのドレスよね? しかも、ランディルド様の瞳の色って……やるわね」
「やっぱり、目立ちすぎかな?」
「ふふ、最高に似合っているわ。だから、そちらのグレーの髪と瞳が素敵な騎士様を紹介してくれる?」
「え?」
その色合いをした騎士様、私はロード様しか知りませんけど。
たしかに優しそうで、カッコ良いですよね。
「行きましょ?」
腕を組んで、元の場所に戻る。
「ところで、リアスティア様のお父様って、こんなにカッコよかったかしら?」
「うん、思うところがあったのかもしれないわ」
お互いの様呼びが、少しくすぐったい。
ここに、ヘレナがいてくれて良かった。社交はこれから頑張るにしても、知り合いがいるのは心強い。
「はじめまして。リアン伯爵家の次女、ヘレナと申します」
ヘレナは、淑女の礼さえ華やかだ。
「ああ、いつもリアスティアと仲良くしてくれているそうだね。感謝している」
父がよそ行きの笑顔で微笑みかける。ヘレナの頬が赤くなる。イケオジは罪だ。
続いて、ゼフィー様とヘレナの目が合う。
「……っ。はっ、はじめま、し、て」
急に震え始めるヘレナ。顔色が悪い。芯が強いヘレナの変化に私は驚く。
ゼフィー様の、瞳に宿る加護の威力を初めて目の当たりにした。
「すまない、目が合ってしまったな。……ゼフィー・ランディルドだ。これからもリアスティアと仲良くしてもらえると嬉しい」
「こ、こちらこそ申し訳ありません。そして、喜んで」
「……いや、驚いた。ずいぶん度胸があるな? 俺の目を直視して、まだ話せるとは」
「だって、リアスティアの旦那様になる人、ですから」
ーーーーゼフィー様が、はっきりと目を見開く。そして、まるで雪解けのように煌めく笑顔を見せてくれた。
まるで、その瞬間だけは加護の力なんて消えてしまったかのように、会場中がゼフィー様の笑顔に釘付けになっている。そんな気がした。
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