こっち来んな
時は少し巻き戻り、大柄な男の悲鳴が山に響き渡る直前、小屋の中にいたチンピラは、サラの足に巻いていた縄だけ解き、ルイスのベッドにサラの体を両足を開かせてから縄で再び固定し、スカートを捲り上げるとサラが履いたままの下着を、ナイフでゆっくり端から切り裂いて遊んでいた。
ゲス野郎である。
サラは猿轡をされたままなので、悲鳴をあげる事もできず、目には涙を浮かべ、身を捩りながら男から逃げようとしていたが、縄は頑丈に結ばれ、逃げることが出来ないでいた。
下着は徐々に切り裂かれ、ついに腰の横の部分が切り裂かれたことにより、布がハラリと落ち、サラの体を包むという大事な仕事を放棄した。
「いい眺めだぜ、貴族のお嬢ちゃんよ。今まで散々いい思いをして暮らしてきたんだろうから、オレにもいい思いをさせてくれよ。今から俺がぶちこんでやるからな!」
チンピラがニヤつきながらそう言い、ズボンを下ろしたとき、大柄な男の悲鳴が、小屋の中まで響いたのだった。
「ブー?」
聞こえた悲鳴に、眼を細めたチンピラがそう声を漏らし、今下ろしたばかりのズボンを上げて、サラを放置し小屋から出ると、そこには手下が誰も居ない。
「いつの間にか、ガキが帰って来たのか? 4人もいりゃガキ一人くらい大丈夫だろうが、ブーの悲鳴が気になる」
独りごちたチンピラが、小屋から離れてあたりを捜索すると、斧で頭部を割られたノッポを見つける。
「ヒョロ……チョロ達はどこだ……」
チンピラがさらに捜すと、息絶えたのかピクリとも動かない、小柄な男を見つける。
その横で、今まさに立ち上がろうとしているルイスも。
「ガキがっ! ぶっ殺す!」
ルイスを睨みつけながら、チンピラがそう言った時、さらに奥から悲鳴が聞こえた。
それはモヒカンの声だった。
チンピラがモヒカンの声がした方を見ると、モヒカンが走って来る。
だが、モヒカンの後ろがオカシイ。
「なんか、黄色と黒のまだら模様が……」
チンピラが呟いた時、
「親分っ! キラービーだぁあ! 助けてくれぇ!」
モヒカンが、叫びながらチンピラに向けて走り寄る。
「あの馬鹿! キラービーの巣でも蹴りやがったか! テメェこっち来んな!」
そう言って、チンピラが慌てて逃げ出す。
「そんな事言わねぇで、助けてくれよおおお!」
モヒカンは必死にチンピラを追いかけるのだった。
モヒカンとチンピラが走り去った後、ようやく立ち上がったルイスは、
「いててて。あー酷い目にあった。ツイてないなぁ。あ! ハチは?……いない……よな? 助かったあぁ。今のうちに小屋に戻ってって、何これ! 死体だ! てか誰これ? 知らない人だよなぁ? 冒険者って感じでもないし? まあ、それよりハチだ。さっさと帰ろ」
そう言って、薄情にも死体を放置して、家に帰る事を優先したルイスは、足早に山を移動し小屋を目指すのだった。