謀反
一通の手紙がとある人物に届く。
届いた家はディトロナクス家。
その宛名は、
[ディトロナクス家料理長アリストテレス]
となっている。
宛名の人物は、手紙を読み終えると、自身の膝の上に乗る男の子に、
「よしよし、エイスはかわいいなぁ」
と言うと、それを聞いていた側にいた女性が、
「ルイスはエイスにデレデレね」
と言った。
そう、ルイスと。
「家から出れないから、エイスを可愛がる事しかできないからな」
ルイスと呼ばれた男は、膝の上の男の子の頭を撫でながらそう答える。
誰がなんと言おうが、この男はルイスである。
ルイス・ウィンストン・ディトロナクスだ。
「タライトン様から手紙が来てたけど、なんと書いてあったの?」
「近々、こっちに遊びに来るってさ」
「あの方、半年に一度は来るわよね」
「友達が俺しかいないらしいよ」
「私とタライトン様が恋仲だって噂が広まってて、ちょっと面倒なんだけど?」
「もう少し我慢しておいて」
そう言って、妻のサラにタライトンからの手紙を渡すルイス。
ルイスはあの時、ウィンストンとリベアランスの話をテントの外で盗み聞きしたタライトンから、ルイス暗殺計画を知り、密かにお腹にタライトンが慌てて殺してきたゴブリンの血の入った革袋を仕込んでおり、リベアランス達には死んだように見せかけ、実は生きていたのだ。
タライトンがルイスの棺を誰にも開けて見せずにサラに託したので、この事を知る者はほぼ居ない。
今はディトロナクス“ 辺境伯 ”家の屋敷の中で、金儲けの知恵を出しつつ息子を可愛がる生活である。
ちなみにルイスの息子のエイスだが、サラとタライトンの子ではないかと貴族達が噂しているが、れっきとしたルイスの子である。
まあルイスの生存を知るのは、ディトロナクス辺境伯家の忠臣とタライトンのみなので、その噂も仕方ないだろう。
ディトロナクス辺境伯家や領地の運営は、サラが表に立ち、裏からルイスが指示を出している。
ディトロナクス辺境伯領という広大な領地を運営し、金と武器を集めて10年。
領兵を鍛えに鍛えて、準備も万端。
手紙の後、屋敷にやってきたタライトンと最後の打ち合わせをして、日時を決定したとある日、ディトロナクス辺境伯家とタライトンが正式に当主となった、リーディング侯爵家が同時にイスディニア王家に対して謀反を起こしたのだった。
ルイス生きてました^ - ^




