パロウ再び
なんとか絞り出しました
パロウを乗せた馬が、緩い崖を駆け上がってくる。
そうルイスに向かって一直線に。
「とりあえず逃げてみるか。行くぞタライトン」
そう言って馬の腹を蹴ったルイス。
「はっ!」
と、タライトンも同じく馬を走らせる。
ルイスを目掛けて、馬で崖を駆け上がってきたパロウは、
「貴様! 逃げるのか!」
と二人の背中に大声で叫ぶ。
馬を走らせたまま振り向いたルイスが、
「よう、パロウ。いや、パトリシアちゃん」
と、揶揄うような声をかけると、
「やっと見つけたと思ったら、即座に逃げるとか卑怯だぞディトロナクス! 二年前の恨みを晴らす時が来たのだ! 戦え!」
そう叫びながら、ルイス達に向かって馬を走らせるパロウ。
「恨みをって、そっちが攻めてきて返り討ちにあっただけだろう?」
「うるさい! 私にはお前を倒さねばならん理由があるのだ!」
理由……それは、アズマッシュ国の王族の未婚の娘は、顔や手足以外の肌を他人の異性に見せてはならないという決まりがあった。
だが、ルイスには見られてしまった。
見られた場合はどうするのか?
見た相手と婚姻を結ぶか、相手を殺すかの二択だ。
パロウことパトリシアは後者を選んだ。
まあ、当然の選択だろう。
父であるアズマッシュ王からも、『殺してこい』と言われている。
『殺すまで帰ってくるな』とも。
パトリシア本人もその気だし、二度目の敗北は許されない。
一度の負けは〈時の運〉と言い訳できても、二度目の負けは、とある決まり事により、パトリシアの運命を左右するのだ。
馬を走らせるルイスとタライトンと、それを追うパトリシアの距離が徐々詰まってくる。
「振り切れそうにねぇなぁ」
若干の諦めムードなルイスに、
「どうします?」
と尋ねたタライトン。
「とりあえず二人で奴の両側から攻撃してみようか」
「承知!」
ルイスとタライトンは馬のスピードを少し落とし、パトリシアの左右に分かれ攻撃を開始する。
「馬上で二人がかりとは、やはり貴様らは卑怯者だな!」
パトリシアは二人の攻撃を、馬のスピードの緩急と、その手に握る槍を使って回避する。
その手捌きは見事というしかない。
「うるせぇ!こちとら死にたくねぇんだよ!」
とパトリシアに向かって怒鳴ったルイス。
「死を恐れる軟弱者めがっ! 名誉の死をくれてやるから大人しく我が槍の錆びとなれ!」
「死んで名誉より生き恥を選ぶんだよ俺は!」
「いかにも平民上がりの野蛮な考え方だ!」
「野蛮だろうが、卑怯だろうが勝てば良いんだよっ! タライトン⁉︎ 」
ルイスがパトリシアに叫んていた途中、パトリシアの槍がタライトンの乗っている馬に刺さり、タライトンが馬上から地面に叩きつけられ、その場を転がっていく。




