表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/81

撤退を決断する

ここも一話の範囲です



 その頃、パロウから距離を取ったディトロナクス少佐本人はというと、崖の上から少し離れた所で、部下達からの報告を聞きながら、指示を出していた。


 崖下に迫ったアズマッシュ国軍に向け石が落とされだし、弓矢による攻撃がはじまったようだ。

 崖の下から響く悲鳴が、ディトロナクス少佐のところにまで聞こえてきた。

 その直後、


「敵の大半が罠にかかりましたが、敵将パロウは罠地帯を抜けましたぁ!」

 その報告を聞き、ディトロナクス少佐は、


「マズイッ! 撤退しろっ!」

 と、即座に命令する。

 もう用意した兵器も作戦も、この場に無いからだ。


 敵将パロウは一騎当千と呼ばれるような猛者であり、数々の武勇伝を誇るし普通の戦闘で勝てる見込みは少ない。

 以前ルイスがやった戦法は、初見だからこそパロウに通用したと言ってもよい。

 同じ事は通用しないだろう。


「ディトロナクス少佐は?」

 この部隊の副官であるオワード大尉が、ディトロナクス少佐に聞くと、


「俺が一緒に逃げたら、パロウが追いかけてくるから、兵士が逃げられないかもしれないだろうが! アイツ、一度俺に負けたのを根に持ってやがるからなぁ。俺は別方向に移動してパロウを誘導するから、お前たちは砦に逃げ込めっ!」

 そう言ったディトロナクス少佐に、オワード大尉が、

「多少なりとも護衛を!」

 と提案するのだが、


「護衛って、パロウと追いかけっこ勝負とか、半分死にに行くようなもんに、仲間の命をかけられる訳ねぇだろうがっ!」


「しかしっ!」


「しかしもカカシもねぇ! 行けっ!」

 ディトロナクス少佐がキツく命令すると、渋々了承したのか、オワード大尉が、


「御武運を!」

 と、敬礼してから部隊を率いて砦に向かって去っていく。


 ルイスは部隊が去っていくのに、未だ動かないベガに向かって、


「ベガッ! 砦に置いてきた兵器の使用の指揮を! 俺以外ではウィンストン閣下とお前にしか使い方教えてないんだ。上手く使えっ!」

 と命じる。


「それでは閣下の護衛がっ!」


「俺より国だ! もっと言えばサラだ! お前にはサラの護衛を頼む! 俺はなんとか逃げるさ」

 ベガに、自分よりも妻のサラを守れと命じたのだ。


「本当に逃げて下さいよ! 死んだなんて報告は聞きませんからね!」

 ベガがルイスに敬礼する。


「中尉もベガと一緒に逃げろ!」

 ルイスはタライトン中尉にも撤退するよう命じたが、


「いえそれは!」

 と拒否しようとしたタライトン中尉に、


「上官の命令だっ!」

 キツく睨んでルイスが声を上げる。


「くっ、承知しました」

 納得いかない表情だが、タライトン中尉が敬礼する。


 その後、部隊が走り去る方向とは正反対の方向に馬を走らせるルイス。


「ふぅ。パロウのやつは何で俺なんかを、そんなに狙うのかねぇ……ちょっと凹ましてやっただけなのに。ほんと、ツイてないなぁ」

 ルイスの呟きに、


「パロウに唯一の黒星をつけたのが、『赤い斧』だからでしょう?」

 そう言った人物が居た。

 誰も居ないはずなのにだ。


 ルイスはその声に聞き覚えがあった。

 というか、さっき別れたばかりの人物だ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] (;´゜д゜)つ★★★★★
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ