戦闘
ルイス達は戦闘に突入する。
見通しの良い場所の山道には、ディトロナクス家の特徴的な緑色の鎧を纏った精鋭部隊が、目立つように待ち構えており、その姿を見たアズマッシュ兵士達は、まっしぐらに突撃を開始したのだが、両側の森から突然大量の矢が放たれ、アズマッシュ部隊の先頭にいた兵士は、ソレに対抗する事ができず、かなりの数が地に伏した。
何故アズマッシュ兵士達は、森の中に居たイスディニア王国軍を発見出来なかったのか。
少佐に任じられているルイスこと、ディトロナクス子爵の領軍は、山道の両側に広がる森に潜伏していたのだ。
それだけならアズマッシュ国兵に発見されたであろう。
だが、ルイスの作戦により、イスディニア国兵士達は、布をその身に纏っていた。
誰も見たこともない異様な模様の布だった。
その布は、緑色と黒色のマダラ模様で、森の薮などに潜まれると、人と認識するのが困難になる物だった。
簡単に言うと迷彩服の布版である。
タイガー迷彩と呼ばれるタイプの布を、ルイスは作らせて、兵士達に支給していたのだ。
混乱するアズマッシュ兵士達に、ディトロナクス領軍の精鋭、06小隊が馬を駆って突撃していく。
これにより、さらにアズマッシュ兵の数を減らすことに成功する。
だが、まだまだ敵の数は多い。
その時、遠くから銅鑼を打ち鳴らす音が聞こえた。
するとイスディニア側の兵士は、凄まじいスピードで撤退していく。
アズマッシュ兵士はいったい何事かと思ったが、逃げる敵兵を目の前にすると、追いかけてしまうのは兵士の性である。
だが、森の中に足を踏み入れた途端、アズマッシュ兵士達は宙を舞うことになる。
足を捕縛したロープが、兵士の体を跳ね上げたのだ。
ルイス直伝の獣用の罠が、そこかしこに設置されていたのだ。
助けようにも何処にあるのか分からない罠に、兵士達は二の足を踏む。
そうこうしているうちに、イスディニア側から大量の樽が、投石器により一斉に投げ込まれる。
コレを、パロウから話に聞いていたアズマッシュの指揮官は、
「てっ、撤退だっ! 魔族モドキの魔術が来るぞ!」
そう叫んだのだが、時すでに遅かった。
何故ならもう火矢が迫っていたからだ。
轟音と共に吹き飛ばされるアズマッシュ兵士達。
手足を吹き飛ばされ、うめき声を上げながら横たわる爆発に巻き込まれた兵士達。
だが、残りのアズマッシュ兵士全てを吹き飛ばすほどの威力は無かった。
ルイスにしても、さすがにそんな大人数で来ると思っていなかったからだ。
「出し惜しみするわけにもいかん。次の用意を!」
ルイスが指示する。




