観察
ルイスは山道に部隊を配置し終え、一息ついたところだったが、遠く前方にとても山間部を移動してくる数ではないであろう大部隊を、ルイスは発見することになる。
ルイスが作らせた遠見筒で見て、
「ありえねぇだろ、なんだよあの数」
そう呟いた後、遠見筒をベガに渡す。
ベガが受け取って覗き、
「3000は居そうですね……」
と推測しながら、遠見筒をその隣にいる人物に渡す。
「ほう! これは素晴らしい。あんな遠くがこんな近くに見えるのですか!」
無邪気にそう言ったのは、タライトン中尉。
長い金髪を一つに纏め、整った顔立ちにスラリとした身体。身長は170センチほどであろうか。青い瞳は意志が強そうに見える。
赤い革鎧に身を包み、馬の背に乗る姿は凛々しい感じである。
今回ルイスの部下として、国軍、しかも王から直接派遣された人物だ。
この人物、とある貴族の子息であるが、その貴族当主からルイスに、
『戦に行きたいとワガママを言うので、頼むからなんとか生かして返してほしい』
とお願いされてしまったのだ。
そのとある貴族とは、ルイスも親交のある人物だったので断る訳にもいかないから、仕方なく部下に迎え入れたのだ。
その家とは、リーディング侯爵家。
チェリオット王の妹が嫁いだ家であり、国内では多くの鉄の鉱山を持つ家であり、鍛治職人を多く抱えており、この戦では大量の武具を生産していた。
この家の協力なくして、戦はできないと言っても過言では無い。
ルイスも色々注文しており世話になっているし、領地を訪ねた時には、タライトンとも何度か模擬戦をしており、よい腕をしているのは知ってはいたが、まさか参戦するとは思ってもいなかった。
なお、魔物大戦において、ルイスの三番弟子を自称しているリーディング侯爵当主でもある。
一番弟子はウィンストン辺境伯であるのは言うまでも無いが、二番弟子はリベアランス伯爵である。
ちなみにチェリオット王だが、王を三番弟子と言うわけにもいかず、名誉弟子ということになっている。
まあ、どうでもよいのだが。
「山道抜ける数じゃねーな。敵さん何考えてやがるのか」
呆れたようなルイスの声に、
「前回、我らイスディニアの後方に回れなかったから、今回こそって感じですかね?」
ベガが答え、
「あの旗はどこか知ってるか?」
と、ルイスがタライトン中尉に聞くと、
「見たことない旗ですから、分かりかねますね」
と首を左右に振るタライトン中尉。
「とりあえず敵戦力を削っていくしかねぇなぁ」
ルイスの言葉がその場に響く。




