再編
さて、身辺調査はどうやったのかと疑問に思うだろう。
新興のディトロナクス家に調査能力など、あるわけがない。
だが、妻のサラの父親は、現在イスディニア王国では最も力のある貴族と言っても過言ではない。
当然、それなりの力を持っている訳で、ウィンストン辺境伯家には調査部という部署が存在する。
まあ、昔から有ったのだが、人員を大幅に増やしていた。
ルイスは義父に、
「応募してきた者達の調査って出来ます?」
と聞いてみたら、
「今の私に不可能は無い」
とウィンストン辺境伯が笑って答え、数日後には、調査結果が出揃ったというから、貴族とは怖い生き物であると、ここでもルイスは実感する事になった。
まあ、それはどうでもいいとして、イスディニア王国の軍は、アズマッシュ国に対抗するため、軍組織の改編を行った。
貴族としての格より、個人の武力や戦闘を指揮する能力を重んじ、戦争中の役職を決めたのだ。
上から元帥、大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉、曹長、軍曹、伍長、上等兵、一等兵、二等兵である。
もちろん、言い出したのはルイスだ。
先の戦でのミューラーのような貴族の暴走はそれなりにあり、それにより戦線が崩壊した事を受け、指揮能力の低い貴族の下につくのはまっぴらゴメンというルイスの考えから、チェリオット王にこっそりルイスが頼んだら、そのまま採用された。
元帥はもちろん国王である、チェリオット王だ。
次に大将は王太子であるヘンドリック王太子。
中将は数人の武闘派貴族が任命されており、その中に国軍指揮官のリベアランス伯爵や、大規模な兵を持つウィンストン辺境伯も名を連ねている。
一方ルイスはというと、武力が有るのは示したが、大部隊を指揮した訳ではない事と、ルイスの特殊な戦闘の仕方を、チェリオット王が秘匿する方が良いと判断したため、特任少佐という変わった役職に任じられた。
そうして先の戦闘において、失態を演じた貴族達から、軍の指揮権を奪う事に成功したイスディニア王国。
どういうことかというと、もちろん領地においては貴族領軍として、治安維持などの指揮権は領主にあるのだが、他国との戦闘においては、兵士を出せども指揮権が無いということになったのだ。
もちろんこの改革には、かなりの反発があったのだが、
「じゃあ失敗した責任は、領主の交代でいいか?」
と、チェリオット王が言い出して、家督を息子などに譲るのならともかく、交代という事は別の貴族家を興してその者に任せるとか、法衣貴族を領地持ちに変更するなどと同義であり、領地を失くすよりはマシと泣く泣く了承した経緯がある。
まあ、ほとんどの暴走した貴族当主は、だいたい戦死しており、それにより家を継いだ息子へは罰金となったのだが、それなりの金額だったため、親の尻拭いをさせられた息子達は大変だっただろう。
ちなみにミューラー家は、大規模な戦闘地区で、戦線を崩壊させた一番の戦犯とされ、子爵から男爵へと格下げされており、領地もかなり減らされているため、今は風前の灯と噂である。




