復興と準備
ルイスが領地に到着して、まず最初に行ったのが、領民達への食糧の配布である。
新ディトロナクス領では、全てでは無いがかなり食糧奪われ、また戦地にもなったので農地も踏み荒らされていたので、食糧が不足気味だったため、ウィンストン辺境伯領をはじめ、戦地では無かった地域から大量に食糧を買い付けた。
もちろん国からの支援金はあったのだが、その金のほとんどを戦死者への見舞金と、食糧の確保に充てたルイス。
これにより、新領主としてディトロナクス領民からは、好意的に受け入れられたルイス。
領民の協力無くして、領地の発展などあり得ない訳で、出だしは上々である。
次におこなったのは、戦で戦死した兵や領民達の慰霊塔の設置。
コレを職を失った領民にやらせて給金を払うことにより、失業者や貧困層の者達への補償と、治安回復策代わりにした。
次に着手したのは、国境地帯に簡素な砦と壁の建設である。
猶予は二年しか無いので、本格的なものは作れないから、あくまでも簡単なものだ。
そして領兵の募集というか、スカウト。
砦などの建設で、サボらずに真面目に取り組んだ者をピックアップし、兵士として雇った。
真面目に働く者というのは、それだけで価値ある人である。
ちなみに、労働もせずに適当な理由をでっち上げ、金をせしめようとした者達には、キツイ罰があった。
無賃労働というか強制労働というか、まあ強制労働が正解だろうか。
ルイスの命令により、本人達は何を作らされているのか、全く理解出来ない労働を二年間、休み無しでさせられることになる。
あとは従士の補充。
コレは募集するまでも無く、あちこちの貴族の家から紹介状が届いていたので、その人物を試験する形で採用する事にした。
紹介状を書いた貴族の思惑は色々ある。
純粋な好意から悪意まで。
純粋にルイスの力になるために、優秀な人物を紹介した貴族は勿論多い。
だが、ディトロナクス子爵家の秘密を探るために、貴族家から遣わされた者もかなり居る。
探る秘密も様々。
ルイスの料理のレシピの入手を目論む者、コレはまだ許せる範囲なので、数は少ないが優秀な者は採用した。
だが、先の戦闘で使われた魔術モドキを手に入れたい者、ルイスの個人的な弱みを握りたい者達の手先の者は、ことごとく不採用であった。
ルイスは、ルイス個人の秘密を探ろうとする者には、容赦なく接することに決め、ディトロナクス家産のあらゆる製品を、売るのをやめた。
魔術モドキの秘密については、仮に謀反を企む者に使われてはいけないと思い、仕組みをチェリオット王にだけ説明し、他の貴族への公開は拒否している。
知りたければ王に聞けと戦後に言い放ったのだ。
なので、王に聞かずに探りに来ている時点で、その家の事は王家に報告済みである。
まあ色々あるのだが、色々察知されないように、ルイスはそれを試験という形で、角が立たない様に取捨選択をしたのだ。
『紹介された人物より優秀な人が居たので』と、断れるわけだ。
ちなみにヴィオラ男爵はルイスの魔術モドキこと、粉塵爆発を目の当たりにしているが、ルイスに詳細を話さないように、“ キツく ”言われているし、仕組みも理解していないので、他の貴族に聞かれても『何が何だかサッパリ分からなかった』と答えている。
ヴィオラ男爵は、賢明な判断をしたと思う。




