羞恥心
剣と書いたが、ソレは片刃で反りのあるルイスの特注品であり、この世界の人々は見たこともない剣であった。
まあ、刀だが。
ルイスの撫で斬りした刀先が、パロウの腰へと向かった。
驚いたパロウが慌て避けたが、わずかに避けきれずパロウの腰にあるベルトを斬り裂き、ベルトが切れたことにより、パロウのズボンがそれによりずり落ちる。
そうして見えたのはパロウの下着。
「んっ⁉︎ た、玉がねえ? チンも⁉︎」
ルイスの眼が見開かれて、驚きの声を上げた。
そう、それはまさしく女性ものの下着であった。しかもレースの透け透けのやつだ。
男性ならば有るはずのコンモリした膨らみが、そこには無かった。
小さいとかそういう事ではない!
下着の透け具合は、筋が確認出来るくらい透け透けだった。
股間の膨らみだけでなく、毛が無いのも確認できてしまったぐらいだ。
「え? あ! キャァアアッ!」
慌てて剣を離して、ズボンをずり上げるパロウ。
そのパロウの首に、刀を当ててルイスは、
「降伏するなら殺しはしない。替えのベルトも貸してやる。俺は女性には優しいほうだからな。王子と聞いていたんだけど、まさか王女だったとは。道理で細身なはずだ」
そう言いながら、パロウを睨むルイス。
パロウの本当の名は、パトリシア・アズマッシュであるが、アズマッシュ王家の第一王子が幼少期に病弱だった事と、現王が異母弟と対立していたという事情もあり、その当時、唯一の男子である第一王子を暗殺されてしまうと、世継ぎ問題が混乱すると危惧した王が、まだ他にも男児が居ると思わせるために、パトリシアを王子として育てたのだ。
なお、今は他にも側室にだが王子が居る。
そうして男児のように育てられた、パトリシアは槍や剣の腕をメキメキと上達させてしまい、本人も軍に入りたいと言ったため、王はパトリシアにパロウと名乗らせ、将軍として配置し重用して今に至る。
「ううう……降伏……する……」
パロウことパトリシアは、首に当てられた刀により勝てないと判断したようだ。
そのまま地面に座りこんだ。
パトリシアは男のように生活していても、女性用の下着を愛用しているあたり、心は女性のままなのだろう。
羞恥心もそりゃ出るはずだ。
なお、偉そうな口調は、男と思わせるためのものだが、言動はパトリシアの性格によるものである。
どこの王族もそうだが、特にアズマッシュ国王家は傲慢で有名である。
「しかしまあ、女とは思わなかったなぁ。パロウさんよ」
ルイスがパトリシアに声をかけたが、
「うるさい! 魔族モドキめ!」
と座りこんだまま、ルイスを睨むパトリシア。
「魔族じゃねーけど、聞く耳持たないだろうから、別にいいや」
「閣下っ!」
ベガが部下と共に、ルイスの下に駆け寄ってきた。
「おうベガ。なんか勝っちゃったよ。あ、お前ちょっとベルトの予備取ってきて」
と笑いながら言い、ベルトを取りに行かせるルイス。
「手間取ってしまい、閣下を危険に晒してしまい、申し訳ありません」
「気にするな。とりあえずこのままこの場を死守だ。まあもう来ないだろうけどな」
「はっ! ベルトを取りに行って、ヴィオラ男爵様にもそのように伝えて参ります」
「ああ、頼んだ。あと腹減ったから飯の用意もな」
「了解致しました」




