爆発後
轟音と共に爆発した敵を見たルイスが、
「お! 大成功〜」
と軽い感じで声をあげる。
その隣では、
「あ……アレは……アレはいったい何ですかっ⁉︎」
ヴィオラ男爵が震えながらルイスに聞くと、
「さっき言ったでしょう? 粉塵爆発って言って、黒いのは炭の粉で、それが大量に舞っているところに、火矢で火を着けたら爆発するんですよ」
と軽く説明したルイス。
別に炭の粉ではなくても、小麦粉などでも起こる事もある現象だが、炭のほうが再現しやすい。
本当は硫黄や硝石なども加えたかったルイスだが、配合率を知らないので、適当に加えて失敗しては元も子もないので、今回は炭の粉だけだ。
「本当だったんですか? 冗談だとばかり思っていましたが。だいたいそんなの聞いた事もありませんよっ!」
「今見たでしょ?」
「そりゃ見ましたけど……うっ」
そう言いながら、爆発のあった場所を見てしまったヴィオラ男爵は、跡地に見える数分前まで人の手足や首“ だった ”ものをみて、吐き気を覚えた。
そんなヴィオラ男爵など気にもせず、
「さて、敵はどうなったかなぁ?」
と呑気な声で、ベガに聞くルイスに、
「前にいた騎兵数騎と、後方の歩兵が、まだ動いてます! 中央の兵は倒せた模様!」
と報告がくる。
「ちっ! 運が良い奴らが居たか。 ヴィオラ領兵の弓兵達! おそらく来るぞ! 撃ち方用意! ベガッ! 騎兵で突撃もあり得るから気を抜くなよ」
と気持ちを切り替え指示するルイス。
「お任せを。拾ってもらった恩を返すチャンスです」
と返したベガに、
「俺は普通に雇っただけだが?」
とルイスが横目で言うと、
「従士にまでして貰ったんですよ? リーナまでメイドにしてもらっているんですから、何があってもディトロナクス閣下を守りぬきますよ」
「俺は危なくなったら逃げるから、ベガも逃げろよ?」
「閣下が逃げたのを確認した後でならば!」
ベガの意思は堅そうだ。
そうこうしているうちに、生き残り達がルイスに向かって走ってくる。
「きたぞっ! 弓兵放てぇ!」
ベガが声を上げる。
「ヤバイ、先頭のやつはバケモノか? この距離で矢を避けるばかりか、他の兵に当たりそうな矢まで、槍ではたき落としてやがるぞ」
唯一、多少は傷を負ってはいるが走れる馬に乗る者が、槍で矢を叩き落としているのを見て、ルイスが驚きの声を上げる。
「アレがパロウでしょうか?」
ベガが指さした先にいる、件の馬上にいる人物。
細身な体に赤く染められた革鎧を装着し、豪華な槍を振り回している。
顔まで覆う革の兜で、目元しか見えないが、青い瞳をしている事は確認できた。
「だろうな。思ってたより線が細いがな。俺より細そうだ。とりあえずベガは部下達と共に、他の騎兵や歩兵を頼む。俺がやつを食い止めてる間に倒してこい」
そう指示したルイス。
ルイスはこの国の人、特に男達に比べて、何故か少し細い。
「閣下が危険です!」
ベガが言うと、
「お前がさっさと雑魚どもを倒してくれりゃ、二人でやつに挑めるんだよ。つべこべ言わずに行け!」
「すぐ戻りますから、耐えてて下さいよ!」
とベガがルイスから離れる。
ルイスは時間を稼ぐべく、
「アズマッシュの指揮官パロウ殿とお見受けする! 我が名はイスディニア王国の男爵、ディトロナクスである。指揮官同士の対決といこうではないか!」
と遠くから声を張り上げた。
「邪教徒が偉そうにっ! お前がさっきの魔術を仕掛けたのかっ!」
「魔術? あれは科学だ」
「カガク? 訳のわからん事を言うなっ! 貴様魔族だろう!」
パロウが叫んだ。