後悔はない
その頃、大柄な男は小屋から少し離れた場所で、小便をしようとしていた。
ズボンをずり下げ、大きなお腹と小さなブツを放り出し、いや放り出すほどもない、ちんまりしたブツだったが、それをかなり大きい木に向け、黄色い液体を放出していた。
「ふぅ」
そんな感じで、一息ついた大柄な男の横を、ルイスが駆け抜ける。
大きな木が邪魔で、男からはルイスが見えていなかったのだ。
「あ!」
と、声を漏らした大柄な男は、慌てズボンを上げようとしたが、その時、黄色と黒の物体が、大柄な男の下半身で、いまだに収納されていない二つのぶら下がるモノを攻撃した。
もう一つの物体は、あまりにも小さいため攻撃されなかったのだろう。
「ウギャー!」
大柄な男が、毒針を刺された痛みに思わずチンマリしたブツを両手で押さえた。
だが、これにより男は、キラービーを握り潰してしまうことになる。
潰されたキラービーから他のキラービーの仲間に、“ココ”に敵がいるという事を教えるフェロモンが放出される。
フェロモンに導かれて、大量のキラービーが大柄な男を襲い出す。
刺されて悲鳴をあげる大柄の男だったが、逃げようにもずり落ちたままのズボンが、男の移動を妨げる。
上手く移動出来ずにその場に倒れた男は、倒れた時にさらに数匹のキラービーを潰すことになり、無数のキラービーに刺されまくる。
哀れ、大柄な男は全身をキラービーの毒針に刺され、下半身丸出しのままショック死してしまうのだった。
ちんまりしたブツが、キラービーに刺されたことにより、多少大きくなったので、本人も後悔はないかもしれない。
大柄な男が倒れる少し前、男の叫び声にルイスの小屋の外にいた残りの3人が、叫び声がした方に向かって走り出す。
そして、前方から走ってくるルイスを発見した。
「たぶんあのガキだ! 殺せ!」
モヒカンが小柄の男に命令する。
「わかった! だが、ブーのやつは何故叫んだ?」
小柄な男がモヒカンに聞く。
「あんなガキにやられたとも思えんが、俺はブーを探しにいくから、チョロとヒョロ2人は、ガキを!」
モヒカンの言葉に、
「任せろ!」
「ういっす!」
そう返事をして、小柄の男とノッポの男は、ルイスに向けて走り出す。
ルイスは前だけ向いて走っている。
後ろを振り返ると走るスピードが、どうしても遅くなるからだ。
そうしてルイスの視界に、2人の人影が見えたのだが、山に薬草を取りに来た、通りすがりの冒険者だと思ったルイスは、前方の2人に注意を促すため、
「ハチハチハチ! キラービーが来るから逃げて!」
と、叫んだ。
だが、二人は逃げるどころか、ルイスに向かって走ってくるではないか。
それを見て、少し苛立ったルイスは、
「危ないから逃げろって!」
そう叫んだ時、足下の注意が疎かになったのだろう、ルイスは地面から飛び出た木の根に足を取られて、頭部を地面に突っ込むように転倒してしまう。
その拍子に、右手に持っていた斧がするりとルイスの手から飛んでいく。
空を舞い飛ぶルイスの斧が、小柄な男の頭のすぐ上を通り、その後ろを走っていたノッポの顔面に、グサリと刺さってしまった。