ヴィオラ
ルイスは最初こそ、ウィンストン辺境伯と共に同じ戦場にて、戦闘に参加していたのだが、ルイスの戦果が高かった事もあり、総指揮官の命令でウィンストン辺境伯軍とは、別のところに配置されることになる。
ルイスが配置されたのは、テレス男爵領の山間部の山道であった。
何故この位置に配置されたのかというと、まずルイスが強い事。
数度の戦闘で、ルイスの武力が高い事を自ら証明してしまったので、言い逃れできない。
イスディニア王国軍としては、この山道を通られてしまうと、背後から攻められることになってしまう。
それをやられて前後から挟み撃ちにされては、さすがにもたない。
だがしかし、大部隊を主戦場に置きたいので、極力戦力は分けたくない。なので山道に裂ける兵力は少ない。
だが弱兵を置いて突破される訳にもいかず、ルイスに白羽の矢が立ったのだ。
それに、貴族達がルイスが居なくなると、新しい問題集が出なくなる事を恐れた事。
山の中ならば、何かあった時に逃げ延びる事ができる可能性が、草原で戦うよりも多少なりとも上がるというのも、重要な事であった。
それほどまでに、ルイスを失いたく無いという思いが、王家、いや王を筆頭にかなりの数の貴族達にあったのだ。
それほどまでに、遊戯や酒という新しいモノに飢えていたし、これからも期待しているのだ。
ルイスがいれば、また何かを生み出すだろうという、根拠はないが今までの実績による期待が、そこに見て取れる。
さて、ルイスの部下に話を移すと、ディトロナクス兵士が身にまとう鎧は、ルイスのモノとほぼ同じである。
色が緑に変わっただけだ。
流石に武器は槍と剣だし、頭部にツノは無いが。
このディトロナクス家の鎧は、後にディトロナクス家の精鋭だけが身に纏う事を許される、特別な鎧という位置付けになるのだが、それはまだ先の話である。
纏っている者達に、この鎧がルイスの悪ノリにより作られたモノだと知る術は無い。
ところで、ルイスと共に山道に配置された貴族が他にも居る。
名を、オルス・ポール・ヴィオラ男爵。
領地持ちの貴族で、オルスはヴィオラ男爵家の7代目になる。
年は30で、少し太った体に頑丈な金属鎧を纏い、馬に乗っている。
金色の長髪に緑色の瞳をしている。
戦などの荒事は不得意らしく、本人曰く『来たくなかったのに、先日父上が他界したから仕方なかった』という事らしい。
オルスは、バイオリンの名手であり、各家の舞踏会などにオルスを呼ぶ事は、貴族達の間でステータスになっているほど、人気者である。
ヴィオラ男爵がここに配置された理由は、ルイスにヴィオラ男爵を守ってもらいたいという貴族達の願いが込められている。
当主の参戦は特別な理由が無い限り、絶対なのだ。
部下100人の内訳は、騎兵20、歩兵の弓兵兼槍兵が70と、馬車の御者兵が10である。




