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キレる


 そうしてアリスト子爵の館に到着した、ウィンストン辺境伯率いるイスディニア王国の軍勢。

 だが、予想とは異なる展開であった。

 館の門にぶら下がる物体。


「盾にするどころか、アリスト子爵の首を刎ねて、門に晒しているとはな……」

 ウィンストン辺境伯が怒りに声を震わせ、絞り出すように声を出す。


「普通に戦闘に突入って事ですよね。奴らには後悔させてやりましょう。そろそろ工兵が門を破壊しそうですね。では、私も行きます」

 ルイスがそう言って馬の手綱を握り直す。


「気をつけろよ」

 ウィンストン辺境伯が少し心配そうに、ルイスに声をかけた。


「はい。閣下は打ち合わせ通り外で全体の指揮を。ディトロナクス男爵兵にウィンストン辺境伯の騎兵! 突入するぞ! 我に続け!」

 とルイスが叫んで破壊された門から、馬で突入する。


「はっ! ディトロナクス男爵兵突撃だ!」

 ベガが復唱して馬の腹を蹴る。

 その他の騎兵も続く。


 館の窓などから飛んでくる矢を避け、斧ではたき落としながら、ルイスは突入した。

 庭に居たアズマッシュ兵が、ルイスの振るう赤い斧に、胴体を真っ二つにされるたのを皮切りに、激しい戦闘が始まる。


 ルイスの青い革鎧に、赤い返り血が飛び散り、鎧を朱に染め上げていく。

 庭に居たアズマッシュ兵をあらかた倒すと、ウィンストン辺境伯の歩兵達が、矢を避けながらなだれ込んで来る。


 屋敷の扉を破壊して、屋敷に踏み込んだイスディニア兵は、廊下を埋め尽くすように配置された、アズマッシュ兵を相手に苦戦している。


 兵士がなかなか屋敷内に入って行かないのを不審に思ったルイスが、馬から下りてその場の指揮官に、


「何故進まんのです?」

 と聞いてみると、


「廊下に敵兵が多すぎて進めんのです」

 と困り顔で返されたので、


「廊下に拘るからですよ。外から窓を破壊すれば良い」

 と、屋敷の横へと移動して、窓を叩き割り侵入したのだか、その部屋に入ったルイスが、


「うげっ」

 と、声を漏らす。


 そこにあったのは、無惨に乱暴され殺された女子供。

 後に続いたベガも口を押さえている。


 それを見たルイスがわなわなと震えだと思うと、まさに鬼のような形相をして、


「ヤツら生きて帰れると思うなよっ!」

 と叫んだ。

 ルイスは完全にキレた。 


 ドアを開けてその部屋から出たルイス。

 敵兵士を左腕の盾で殴り、右手に持つ斧で頭をかち割り、行手を阻む全てのものを排除していくルイス。

 血みどろになりながら、敵兵に一切の遠慮や躊躇無く、まさに殲滅していった。


 この男、前世から女と子供には優しかった。

 好意を寄せられた事はなかったが。


 屋敷の食堂にたどり着いたルイスが見たものは、屋敷で働いていたであろうメイド達を盾にして布陣する、アズマッシュの兵達であった。


「街から出て行け! 言うことを聞かなければコイツらを殺す!」

 と、メイドの一人の首に、剣を当てて兵が言ったのだが、


「すでに散々殺しておいてかっ! 言うことを聞いても殺すくせに、戯けたことを抜かすなああ!」

 とルイスが叫ぶ。

 ここで大人しく出ていけば、より多くの血が流れるのは分かりきっている。

 言う事を聞くわけにはいかないのだ。


「ならばコイツらもろとも死ねっ!」

 と敵兵がメイドの首に当てた剣を一度引き、再びメイドの首を目掛けて振り抜こうとするが、


「はいそうですかと、死ぬとでも思ったかぁあ!」

 ルイスが敵に突っ込むと、敵兵が振り抜こうとした剣を、斧で弾いた後、その兵士の頭部に斧を振り下ろす。


 ソレに続くベガも、他の兵士に斬りつける。


 二人にいきなり飛びかかられて、敵兵は人質どころではなくなった。


 ルイスとベガを殺すために群がる兵士を、斧で次々と斬り殺すルイスと、高速で剣を振り抜くベガ。


 その中にここを占領していた部隊の指揮官も居たが、雑兵と同じように斬られたのを知ったのは、二人で屋敷を占領していたアズマッシュ兵士を、一人残らず斬り倒した後であった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 侵攻前に命からがら逃げた町民たちも戦後には戻ってくるだろうけど、あまりに悲惨で可哀想なので、敵軍殲滅のご褒美としてアリスト子爵の町を拝領して、復興させてやってほしいなぁ。
[一言] 人質は生きていてこそ価値がある 領主さえも殺しておいて メイドを盾に引けと言われて引くバカはいないよねぇ 領主さえ殺すなら 領内も掠奪、殺人横行するなら よろしい、一人残らず殺すか殺られる…
[良い点] 戦とはそういうもの・・・ とは言え、蛮行犯す軍と行わない軍。 まぁ、色々あるけど、やった事は返ってくると覚悟の上でやりましょうねと。 それにしても、ルイス。 前世は報われない男だっての…
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