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嫉妬


 さて、ルイスがイスディニア王国貴族達から、畏敬の眼で見られだしてかなり経つが、それを羨ましい者も多い。


 羨ましいと思うのは、人として当然の感情だと思うが、それを拗らせ、ズルいなどと僻み、妬む者が出て来るのも、人の性というものなのかもしれない。


「アイツだけ儲けて狡い。アイツが儲けるハズのものを掠めとってやる」

 と、言い出す者が出てくる。


 当人が努力して、ルイスが創り出す物の上を狙えば問題無いのだが、得てしてそういう輩というのは、自尊心だけは高いが能力は足りないもので、創り出すことが出来ないから、パクる事になる。


 それでも自分なりにアレンジしていれば、酒などなら問題なかったのだろうが、よりにもよってパクったのが、魔物大戦だった。


 魔物の駒の種類を人に書き換えただけという、なんともお粗末な物であり、当然バレる。

 そしてそれは販売している、ウィンストン辺境伯の耳に入ることになる。


「魔物大戦の紛い物が?」

 セバスチャンからの報告に、ウィンストン辺境伯が聞き返すと、


「はい、売り上げ金額的には誤差の範囲ですが、ミューラー子爵領で出回っているとの情報を得まして、部下を派遣して調べさせましたら、製造はミューラー子爵領の街の、スラムの木工職人らしいのですが、作らせていた者が問題でして」

 と説明したセバスチャン。


「誰だ?」

 との問いに、


「ミューラー子爵本人でして」


「あの馬鹿は、私が陛下から独占販売の許可を頂いたのを知らぬのか?」


「知っているはずですが、バレないとでも思ったのでしょうか」


「いくら南と北で領地が離れているといっても、同じ国内でバレないはずがないのにな。陛下に報告しても良いが、私とルイスを舐めるとどうなるのか見せしめに丁度良いかもな」

 王が独占販売を認めたという事は、模倣品を売った者は処罰の対象になる。ただし、訴えればである。


「動きますか?」


「陛下に内密に許可を頂いてからだ。さすがに無断で兵を動かすのは、謀反の疑いを掛けられては困る」

 いくらウィンストン辺境伯でも、王に無断で兵を動かして他の領地に移動させる事はできない。


「承知しました。準備だけ進めます」


「ああ、ルイスには私から話すとするか」

 と、その日の話は終わり、二十日後ルイスが呼び出される。

 まあ、徒歩で5分の距離だが。


「紛い物?」

 説明されたルイスが、そう聞き返すと、


「ああ、ミューラー子爵が魔物大戦の紛い物を作って、こそこそ売り出している」


「ミューラー子爵って、確か北側の領地持ちで、良い土の産地で陶器でかなり儲けているハズですよね? 金に困ってないと思うのですが?」

 ミューラー子爵領産の陶器は、芸術性が高く、貴族や裕福な者達にウケが良いため、高値で取引されている。


「金はそれなりに有るはずだがな。ウチやお前から金を掠めとって、悦に浸っているのかもな」

 と忌々しげな表情で、ウィンストン辺境伯が言うと、


「ふーん、で、どうするのです?」

 と対して気にした様子でもないルイス。


「陛下に許可は頂いた。なるべく穏便に、特に民に被害を出さぬようにとは厳命されたが、ヤツに制裁を加えても良いとの事だ。ただし命は奪うなと」

 ようはやり返しても良いが、国内で戦闘はするなと言われたわけだ。

 王としては当然だろう。国内で戦闘などされてはたまったもんではない。


「殺さなければ良いんですよね?」

 ルイスの眼が怪しく光ったように見えた、ウィンストン辺境伯。


「ああ、何か策はあるか?」


「ええまあ」


「とのような?」


「えっとですね……」

 と説明したルイスに、


「ルイス……よくそんな事思いつくな……」

 想定の斜め上の説明に、ウィンストン辺境伯が、娘の嫁ぎ先ながら、ちょっと引いたのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] この世の理の様に物語は流れる・・・ まぁ、人が一定数いれば何故かこういう事って起こるのよねぇ。
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