傘とゼリーとポテチ
「雨かぁ〜」
朝、ベッドから這い出して、窓のカーテンを開けて窓の外を眺めて、サラがそう言った。
真っ裸で。
「サラ、どうしたの?」
ルイスが裸のまま、ベッドの上からサラに尋ねる。
「雨だと馬車から下りるときに、フード付きの外套を着るじゃない? アレ嫌いなのよね。髪型が乱れるから」
いかにも女性らしい理由であった。
「ふむ。確かにな。大雨だと厳しいけど、小雨程度なら濡れなくなる道具があるけど、使う?」
とルイスが言うと、振り返ったサラが、
「エッ? 本当に?」
と言いながらルイスに近づく。
「とりあえず作ってみようかな」
と言ったルイスに、
「お願い!」
と言いながら抱きついたサラ。
そうして始まった傘の製作。
骨組みなどを鍛治職人に説明して、製作などを任せ、ルイスは布のほうにこだわった。
というか、柄に拘ったというのが正しいだろうか。
黒や白はもちろん、柄入りや端にレースを付けたりなど、女性ウケを狙ったモノを多数作った。
男は色柄などに拘ることが少ないから、どうでもよいのだ。そういうものなのだ。
だが、女性は色や形に大変拘る。
色々作って、サラに気に入ったやつを選んでもらうために、多数の傘が完成する。
それをずらりと並べて、サラに見せると、
「私、コレがいい!」
サラが選んだのは、ピンクの布地に白い水玉模様でレースのついた物だった。
残り? 当然、王族やウィンストン辺境伯、知り合いの貴族達に、見本として配られる。
この男、傘も商売にする気だ。
実際、注文が殺到した。
色や大きさなど、全てオーダーメイドなので高額になるのにもかかわらず、大量のバックオーダーを抱えることになり、ルイスは職人に丸投げして逃げたが。
何故そんなに注文が殺到したかというと、それは雨傘としてだけでなく、日傘としての使い方も提案したため、日焼けしたくない貴族の女性が飛びついたからだ。
どの時代、どの世界でも女性は美に対して、貪欲なのだ。そういうものなのだ。
そうそう女性と言えば最近、貴族の女性達の悩み事が増えた。
お肉だ。
食べるほうの肉ではなく、自身の体に付いたお肉だ。
原因と思われるのは、とある男爵が考案したデザートだ。
美味しすぎて1個では物足りなくて、2個3個と食べ過ぎてしまうからだ。
一つにしろ? デザートの囁きに打ち勝てる者など、そう多くはない!
「ねえルイス?」
「どうしたのサラ?」
「私、最近重くない? その、上に乗った時とか……」
何故上に乗るのかは、読者の想像に任せる。多分それが正解だとここに記しておく。
「重くないけど、どうしたの?」
「なんか、腰のあたりのお肉が増えた気がする……」
「そう? 変わってないように見えるけどなぁ?」
「スカートが少しキツイんだもの。絶対太った……絶対プリンのせいよ!」
「うーん、太りにくいデザートでも考えようか……」
「お願いっ!」
「あの芋あるのかなぁ?」
「お芋? お芋は太るわよ?」
「スィートポテトじゃないよ?」
ルイスの探している芋は、芋は芋でも蒟蒻芋だ。
食物繊維が豊富で、お通じにも効く、女性の味方だ。
ルイスの指示により、商人達が探し回った。
何せ見つけた者の店に、ルイス考案の酒のツマミの販売を認めると宣言したからだ。
ルイス考案ならば、絶対売れること間違い無しだ。
そうして早々に蒟蒻芋が見つかった。
ついでにジャガイモも。
出来上がってデザートは、当然コンニャクゼリーだ。
リンゴ味、ブドウ味など、フルーツの味で美味しい。
サラが喜んだのはもちろんだが、貴族の女性達は、この太りにくいデザートに飛び付いた。
プリンを食べた翌日は、コンニャクゼリーにという訳だ。
あと、酒のツマミはジャガイモを使ったポテトフライとポテチだ。
このポテチから揚げ物文化が発展していく事になる。
金儲け編はこれで終わります




