アップルパイ
リンゴシャーベットを食べた後、物足りなさげなサラを見て、
「よしっ! サラのために色々作ってあげる!」
と、ルイスが笑顔でそう言ったら、
「嬉しいっ!」
と、サラがルイスに抱きつき、イチャコラ始めたので、作るのは翌日になったが。
まず最初にルイスが手掛けたのは、ウィンストン辺境伯領の特産品である、リンゴを使った焼き菓子。
まあ、アップルパイだ。
コレを、サラはもちろん、屋敷で働く者や護衛達に振る舞ったルイス。
あまりにも大好評だったので、それならばとサラの実家のウィンストン辺境伯の屋敷にも、お裾分けとばかりに持っていって振る舞ったルイス。
何せディトロナクス男爵の屋敷と、ウィンストン辺境伯の屋敷との距離は、歩いて5分なのだから。
ここでも好評だったので、ルイスは人を雇って、スイーツ店を開業する事にした。
店を始めるにあたって、メニューがアップルパイだけでは成り立たないと思い、プリンやリンゴシャーベットはもちろん、パンケーキ、そしてクレープやショートケーキまで作らせたのだ。
この店は、値段は少しお高いが、裕福な平民や商人達に大変ウケた。
お茶の方も紅茶だけではと思い、ハーブティーやマテ茶、ルイボスティーなど、種類を増やしたのも良かった。もちろん紅茶も、ダージリンのようなものから、アールグレイのようなものと、色々種類を増やしてある。
コーヒー豆が見つからないから、大豆でやってみたものの、ぜんぜん別物になってしまった。
まあ、これはこれでそれなりに美味かったのだが。
そもそも、喫茶店という概念がこの世界には無かったのか、食事の出来るレストランや酒場はあっても、お茶とスイーツだけを楽しむ店が無かった。
ルイスの経営する、デザートサラフィスという名の店は、ウィンストン辺境伯領で、大人気店になる。
毎日大行列で、1時間2時間待ちは当たり前になった。
お遊び程度でやり出した店は、とてもお遊びの範疇ではなくなってしまった。
従業員を増やしはしたが、ルイスはこの店だけに構ってはいられない。
なので、デザートサラフィスは従士の一人を責任者として任命して、その従士に専属で業務を任せる事にした。
ルイスは、ウィンストン辺境伯領で商売をするという気持ちで任せたのだが、この男、商才があった。
いや、あり過ぎた。
次々と従業員を雇い、店長候補まで募集し、教育してから各地へと出向かせ、大きな街に支店を出店させていき、ウィンストン辺境伯領発のアップルパイと、デザートサラフィスの名は、イスディニア王国全土に瞬く間に広がったのだった。




