披露パーティー
ルイスの結婚披露パーティーは、盛大に行われた。
ウィンストン辺境伯の屋敷に集まる、イスディニア王国貴族。
集まった貴族家の数は、イスディニア王国貴族の半数にもなったという。
ウィンストン辺境伯派の貴族はもちろん、ルイスと王城で魔物大戦を指した貴族や、その派閥の貴族が、ワンサカ押し寄せたからだ。
ウィンストン辺境伯が、いったいどれほどの貴族に招待状を送ったのか気になるところだが、招待状が届かなかった貴族から、参加したいと要望があったと言うから驚きである。
しかも王家から王の代理として、ヘンドリック・イスディニア王太子まで参加したのだ。
ヘンドリック王太子は28歳で、すでに妻が2人居る。今回妻2人も同行している。
ヘンドリック王太子は、ルイスと王城で魔物大戦を指した事もあるので、ルイスとはかなり打ち解けている。
「父は来たがっていたが、さすがにここは遠いのでな。往復二十日も城を空けるわけにはいかないしな。それはそうと、あの馬車凄いな。乗り心地が前のとは雲泥の差だったよ」
とは、到着したヘンドリックが言った言葉だ。
あの馬車とは、ディトロナクス家から王家に献上した、コイルスプリング付きの馬車の事だ。
そりゃそうだ。それ以前の馬車は板バネスプリングだ。
あんなのは、トラックの荷台に乗っているのと、たいして変わらない。
王家用に豪華な造りで献上したが、王専用としてルイスの後から、ウィンストン辺境伯家からも、献上してあるらしい。
さて、ヘンドリック王太子が見届け人となり、式は滞りなく終わり、披露パーティーが開始される。
乾杯の挨拶をするウィンストン辺境伯は、ルイスに縁談を持ち掛けていた他の貴族に対して、ドヤ顔である。
乾杯のために用意した酒は、男女で分けてある。
男達には、強めのルイスブランドの透明なウォッカだったが、女性には酒精度の弱い、リンゴから造るスパークリングアップルワインにした。
女性はお酒に弱い方が多いし、普段飲まない人も多いからだ。
「ルイス・ウィンストン・ディトロナクスと、私の娘サラフィスの婚姻を、こんなにも多くの人達に祝って貰えて、こんなに嬉しい事はない。それに今日の料理も、ディトロナクス男爵考案の料理なので、楽しみにしていてくだされ! では、2人を祝して、乾杯っ!」
ウィンストン辺境伯が、杯を上に掲げる。
「「「乾杯!」」」
と、皆がそれに続いた。
「おい、あのディトロナクス卿の考案した料理というの、楽しみだな」
「イスディニアの風雲児が考えた料理だ。普通なはずがない!」
「このお酒美味しいわ。口の中でパチパチと弾ける感じが堪らない」
「おい、あまり飲みすぎるなよ。何やら凄い料理が出てきそうだから、味が分からなくなっては、勿体ないぞ」
「ウィンストン辺境伯が羨ましいな。あんな義息子を持てるなど、よほどの強運が無ければ無理だ」
乾杯の後、あちこちでそんな声が聞こえるのだった。




