密談からの
「あと、ルイスに護衛をつけましょう」
と、さらに提案するセバスチャン。
「ん? 何故だ?」
「もしルイスに誰か……仮に他の貴族が目をつけたとします」
と声のトーンを少し下げて、セバスチャンが話し出す。
「無いとは言えんな……」
と神妙に答えたウィンストン辺境伯。
「ルイスは山で一人暮らしですから、大勢で囲まれては勝てないでしょうし、簡単に拉致されて利用されてしまうかも知れません。それにゴブリン程度なら倒せるとの事ですが、魔物との戦闘に絶対はありません!」
そう、世の中に絶対などということは無いのだ。
想定外の事象は、いつどこで起こるか分からないから想定外なのだから。
「たしかにそうだが、ルイスが承諾するだろうか?」
と聞き返すウィンストン辺境伯。
「それですが、ルイスの炭は好評ですよね?」
「ああ、使用人達はルイスの炭を望んでいるから、うちに全て卸してくれと頼んでいるくらいだ」
「それを利用して、炭を増産したいから、弟子をとってくれないかと頼んでみては? その弟子候補を従士のところの、ニ男や三男を行かせて、弟子兼護衛として、ルイスを守るのです」
「うーむ。それはルイスの負担にならんか?」
「金銭面なら、ウチで出すと言えばよいかと。他はどうにもなりませんけども」
「話はしてみるが、ルイスの機嫌を損ねるようなら、やめるからな?」
ルイスの知らない所で、話は進んでいくのだった……
そうして時は過ぎ、ルイスの住む山小屋がだんだん賑やかになっていった。
炭焼きの弟子希望とやらが、ルイスの下に10人も来たのだ。
歳の頃はルイスよりも年下の少年から、けっこうよい歳の、おそらく30歳ぐらいの青年まで。
その10人が住む小屋が建ち、炭焼き窯も増設し、ルイスの住む山だけでは木が無くなってしまうため、別の山から切り出された薪が、馬車で運び込まれる事になったため、山道は整備され、ちょっとした小さな集落村のように様変わりした。
二週間に一度、ルイスの小屋を訪れるサラとウィンストン辺境伯。
二週間に一度、ウィンストン辺境伯の屋敷に出向くルイス。
つまり毎週、ルイスはサラやウィンストン辺境伯に会う事になる。
今日はルイスが出向く日だ。
「じゃあ行ってくるから、残りの皆は今日は休養日という事で」
そう言って、ルイスは弟子5人を引き連れ、5台のリアカーを引きながら街を目指す。
屋敷に到着すると、
「ルイス様、おはようございます」
顔馴染みの門番の男がそう言って、門を開けてくれる。
門番は数ヶ月前から、ルイスを様付けで呼ぶようになった。
何故なら、ルイスが正式に従士だと発表されたからだ。
ルイスにとっても寝耳に水であったが。
そして、この時からさらに数ヶ月後、ルイスは騎士になる事になる。




