生活
ルイスが、自分に何が出来るのかを、ひたすら考えて思いついたのが、前世?の記憶にある炭焼きであった。
そんなわけで、この世界でもルイスは前世の記憶を活かして、山で木を切り炭を作り、イノシシなどの獣を罠で捕らえたりして、生活していた。
ルイスが暮らしている山は、魔物の数が少ないため、狩りの目標となる獣が多かったし、薬草が豊富であったため、冒険者が頻繁に出入するため、ゴブリンやオークといった人型魔物は、冒険者によって討伐されているので、ルイス一人でも暮らせたのだ。
ルイスも一応、冒険者の登録をしている。
冒険者とは魔物を倒したり、素材を集める者達の総称だ。
ちなみにルイスの冒険者ランクは、下から二番目のブロンズクラスである。
まあ、依頼を受けたりしていないので、ランクが上がるわけがないのだが、ゴブリン程度なら、倒せる腕を持っていた。
たまに顔馴染みになった冒険者が、山で薬草を採取し、街に帰るのが面倒だといって、訪ねてくることもある。
ルイスは、冒険者を自宅の隣の小屋に泊めて、お礼を貰ったりもしていた。
山奥の質素で静かな宿という側面もあり、それなりに客が来たので、ルイスは暮らす金には困ってはいなかった。
二週に一度、リアカーに炭や獣の毛皮などを積み込み、街に出てそれらを売った金で、塩や小麦粉を買って帰る。それがルイスのいつもの日常であった。
今日も朝から仕掛けた罠を見て回る。いつもはイノシシや兎などが獲れるのだが、この日の獲物は無かった。
「ちぇ、ツイてないな」
そう言ってルイスは罠を整えてから、小屋に戻る。
炭焼き小屋の前で、昨日切り倒した木を適当な大きさに斧で切り分け、乾燥させるための、屋根だけ設置してある場所に運ぶと、自身が生活する小屋で、昼食代わりの干し肉を齧り、タンポポの根を煎じた飲み物を飲む。
ほんのりコーヒーのような味がするのだ。
ルイスが生活するほうの小屋にあるのは、ベッドにカマドと小さなテーブルに二脚の椅子、あとはトイレと浴室にある風呂釜である。
風呂のある家というのは、この世界では珍しい。特に庶民の家にはシャワーすらない家も多い。
シャワーには、魔物から取り出された魔石というものを使う。
人型の魔物の魔石は、火を当てると長時間発熱し続けるので、その熱を利用して水を温めて、天井に吊るした穴の空いた桶にお湯を入れ、そのお湯を浴びるという方式だが、魔石だって安くはないので、シャワーのない家は、薪で沸かしたお湯で濡らしたタオルで身体を拭く程度か、公衆サウナなどで汗を流し、その汗を水で流して終わりである。
日本人の記憶があるルイスにとって、風呂は必須であったので、コツコツと貯めた金で小さな風呂を作ってもらったのだ。
近くの谷川から水を引くために、竹の節を抜いた管も這わせ、排水も同じくであり、トイレが水洗という徹底ぶりである。
ルイスが生活する小屋の横には、元々両親と一緒に住んでいた小屋がある。両親はここに住み薬草を採って生計を立てていたのだ。
そちらは幾分広くて、ベッドが3つとカマドにトイレがある。
こちらが今、貸し出し宿に使ってるほうの小屋である。
19時に4話目を投稿できたらいいなぁ