表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/81

待遇から


 屋敷に戻ったウィンストン辺境伯は、


「ルイスを従士待遇から従士に変更しろ。給金も出せ。預かっている金に上乗せしていけ」

 と、家令のセバスチャンに指示する。


「何故それほどまでに?」

 セバスチャンの疑問は、同然の反応だろう。

 ウィンストン辺境伯が、小さな壺からカップへと柄杓で液体を移し、


「この酒飲んでみろ」

 と、セバスチャンに差し出す。

 それを受け取り一口飲んだセバスチャンは、目を見開いて、


「美味い!」

 と声を漏らす。


「だろう? 売れると思わんか?」


「確実に売れます!」


「ルイスが作った酒だ。二週間後、ルイスが来る時に作り方を伝授すると、確約を貰ってある。我がウィンストン辺境伯家の武器になるだろう?」


「さすが閣下。これならば王家にも献上できます!」


「我が領は特産品がリンゴしか無かったからな。広さだけは一番と言われていたが、資金面ではそれほどでは無かったが、巻き返せるかもしれん。使っているのがリンゴで良かった」

 ウィンストン辺境伯が言う。

 ルイスがリンゴを使ったのは、ウィンストン辺境伯領での果実の中では、流通量が多くて安かったからであり、必然とも言える。


「準備しておきたいのですが、何か必要なものがごさいますか?」


「見たところ、瓶にエールとリンゴを入れて作っておったな」


「では、二週間後にはある程度数を揃えておきます!」


「任せたぞ!」


「は!」

 と、話がまとまるのだった。



 そして一週間後、サラが馬に乗ってルイスの小屋へとやって来る。

 護衛は6人。


「ルイス来たよ!」

 と笑顔のサラ。


「いらっしゃいサラちゃん。護衛の方達もご苦労様です。厩舎もどきを作ってありますので、馬はそちらに。あと、まだ途中ですが小屋も作ってますので、休憩されるならそちらでどうぞ。あの大きめの小屋がそうです」

 と説明したルイスに、


「まだ一週間しかたってないのに、もうあんなものまで作ったのかい?」

 と驚く護衛達。


「暇だけはあるもんで」

 そう笑って答えたルイス。


「ルイス、今日は何する?」

 と聞いて来たサラに、


「サラちゃんのために、ゲームを作ったよ?」


「げーむって何?」


「遊戯って言えば分かる?」


「ゆうぎ?」

 全く分からないという感じのサラに、


「コレだよ」

 と実物を見せるルイス。


「何コレ?」


「将棋っていうんだ」


「しょうぎ?」

 首をコクンと傾け、尋ねるサラ。


 非常に可愛い仕草だが、狙ってやっているので、悪女である。


「遊び方を教えるね!」

 そう言ってルイスが説明するのを、サラ達は興味深げに聞くのだった。


 王はオーガ、金はオーク、銀はレッドベア、桂馬はロックウルフ、香車は一角兎、角は地竜、飛車はワイバーン、歩はゴブリンと書き換えられてはいるが、紛れもなく将棋である。


 ワイバーンの裏には翼竜、地竜の裏にはアースドラゴンと書かれているし、ゴブリンや他の駒の裏には、オークと書かれている。


 説明を書き終えたサラや護衛達は、激しく食いついた。

 この世界は娯楽が乏しいのだ。


 夜は酒ぐらいしか楽しみがないのだ。


 慌ててルイスはもう1組、護衛達のために将棋セットを作る事になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いきなり将棋! ハードル高いですね こういう文化ものは大抵は最初はリバーシが出てきますので ちょっと驚きました
[気になる点] 娯楽が乏しいなら、トランプ的カードやサイコロや、それらに基づいたゲームも受けそうです。 [一言] エールを蒸留して、アルコール度数の高い酒を作って、それに砂糖と果実を浸けたりは、如何な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ