外でBBQ
「ほう! 外での食事とは戦の時ぐらいだったが、のんびりとした雰囲気で、外で食べたことはないな」
ウィンストン辺境伯が、嬉しそうに言う。
戦との発言が出た訳だが、イスディニア王国は周辺国とたまに揉めて、戦争になることがあるのだ。
揉める原因は様々だが、一番多いのは土地や食糧問題であり、次に多いのが宗教である。
ルイスの居るイスディニア王国は多神教国家で、創造神は他の神々を誕生させ、その神々が世界を見守っているという教えだが、この世界では少数派であり、周辺国は一神教の創成神教が主流である。
全ては一柱の神によって造られ、その神を信じていれば、死後に神の下へ召されるというものだ。
なので他の宗教を信じてる国は、邪教によって支配されている国なので、占領して邪教から解放してあげようという、詭弁が成り立つのである。
閑話休題
「護衛の方達には申し訳ありませんが、この丸太を椅子代わりに。閣下とサラちゃんはこの椅子でお願いします」
丸太を切っただけの椅子を護衛達に勧め、ウィンストン辺境伯とサラには、小屋にあった椅子を持ち出していた。
もちろんルイスは丸太の椅子だ。
椅子はバカ長い急造テーブルの周りに配置されている。
「では皆様、まずは鹿肉の香草焼きからどうぞ。フキの葉で包んで蒸し焼きにしてありますので、葉を開いて刺してある串を持ち、そのまま齧る感じでお召し上がりを」
そう言って、ウィンストン辺境伯から順に、フキの葉っぱで包んだものを、木皿に乗せて並べるルイス。
「ふむ。料理も興味深いが、この皿はルイスが作ったのか?」
木皿を見て、ウィンストン辺境伯が尋ねる。
「はい。木皿で申し訳ございません。陶器の食器がないもので」
「本当に器用だな。ほう、良い香りだ。うむ。美味い。鹿の臭みを香草で消してあるのか」
一口齧ったウィンストン辺境伯が、美味そうな顔で言うと、
「ステーキのような料理は食べ慣れているでしょうから、このような感じにしてみました。お次も同じく串をお持ち頂き、同じように」
そう言って、数本の串焼きを、皆に配るルイス。
「これは?」
「モモ肉を細かく砕いて、小麦粉を合わせて練ったものを焼きました」
「ふむ。柔らかいな。鹿肉は固いのが難点だが、これなら老人でも食べられよう。美味い食事だ。酒が欲しくなるな」
無いと思って言ったウィンストン辺境伯だが、
「自家製の酒ならありますが、お飲みになりますか?」
「何? 酒まで作っているのか!」
「買ってきた酒を、自分で作り直しているだけですが」
「飲んでみたい」
「少々お待ちを」
そう言ってルイスは、小屋に向かうのだった。




