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サラの母と兄


「待たせてすまんな」

 そう言いながら応接室に入ってきた、ウィンストン辺境伯。一緒に女性も入ってきた。


「いえいえ。美味しいお茶を頂いていましたので」

 立ち上がって二人に頭を下げながら、ルイスが言うと、女性が、


「サラの母のマリアナです。私からもお礼を。ありがとう」

 と頭を下げた。


 優しい顔付きの上品な女性だった。

 サラによく似ている。

 いや、サラがマリアナに似ているのだ。


「いえいえ、私などに頭を下げてはいけませんよ」

 ルイスがそう言うと、


「娘の恩人に頭を下げるのは当然ですよ」

 そう言って微笑むマリアナ。


「サラも、すぐに来ると思うよ」

 ウィンストン辺境伯がそう言った時、ドアが開いて、


「ルイスお待たせ」

 と、サラが現れる。平民の服ではなく、貴族令嬢らしい豪華な服を着ていた。


「ほう! 当たり前だけど、平民の服を着ていた時とは、美しさが数段上だね。洗練されてると言えばいいのかな? 平民の服の時は、可愛い感じだったけどね」

 とルイスが褒めると、


「お世辞を言わなくてもいいのよ?」

 と言ったサラに、


「本心です」

 と、胸を張ってルイスが言う。


「サラの美しさは完璧なのだよ!」

 ウィンストン辺境伯が言う。

 完全に親バカ全開である。


「ですね!」

 と応じたルイスに、


「もう! 揶揄わないでよ」

 サラが顔を赤らめる。


「そんなつもりは無いけど」

 とルイスが言った時、バタンとドアが開くと、


「サラ! 無事で良かった!」

 と、サラの兄のケビンが入るなり、そう叫ぶ。


「お兄様! ご心配をおかけしました」

 サラがケビンに頭を下げる。


 兄妹仲は良さそうだ。


「サラが無事ならそれで良い! 君がサラを助けてくれた少年か! 礼を言う!」

 ケビンがルイスに握手を求めてきたので、ルイスは両手でケビンの右手を掴むと、


「ルイスと申します。お助けできて幸運でした」

 と名乗って応じた。


「ケビンだ。よく助けてくれたな」

 掴んだルイスの手を、ブンブンと振るケビン。


「全員揃ったな。では、食事にしよう!」

 とウィンストン辺境伯が言うと、その声に反応して応接室の横にある食堂で、メイド達がテキパキと夕食の準備に入る。


「美味しいなぁ。こんなに凝った味付けの料理は久しぶりだなぁ」

 そう言ったルイスのテーブルマナーは、そこそこであるが、ウィンストン辺境伯一家には、平民なのに上品に食べているように見えた。


「いつもは何を食べているんだね?」

 と尋ねたウィンストン辺境伯に、


「自分で捕まえた獣の肉を、香草で臭みを消して、塩をかけるだけです。それも獲れた日だけで、残りは干し肉にしちゃいますから」

 そう説明したルイス。


「干し肉は日持ちするが、味は落ちるからな」


「ですです。それに山の中だと獲れるのは、猪や鹿か兎なので、牛は久しぶりです」


「喜んでもらえて良かったよ。だいたい食べ終わったところで、君に聞きたい事があるんだけど、いいかい?」

 と聞かれたルイスは、


「なんなりと!」

 ウィンストン辺境伯の眼を、真っ直ぐ見つめて答えたルイス。



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