報告
「ここでお茶でも飲んで、待っていてくれたまえ」
屋敷に到着し応接室だろう、豪華な部屋に通されたルイスは、ソファを勧められて座ると、そう言われる。
「はい! ありがとうございます」
と返事をすると、ウィンストン辺境伯は部屋を出ていき、代わりにメイドであろう女性が、ティーセットを持って入室してくる。
ビスケットのような焼き菓子に、高価そうなカップに注がれた紅茶を置くと、メイドも退室していく。
そっとカップを持ち上げ、香りを嗅いだルイスは、
「ダージリンっぽいな」
と言って一口飲んでみるルイスであった。
ちなみにルイスはアールグレイの方が好きであったが。
既にルイスが紅茶を楽しんでから、1時間以上過ぎた頃。
「で?」
執務室に座ったウィンストン辺境伯が、兵士、それもかなり上役であろう者に聞く。
「はい、炭焼きのルイスの小屋付近で、例の五人の死体を発見いたしました。獣用の罠で二人。毒殺されたのが二人。斧のようなもので、顔面を割られたのが一人で、罠の二人と、毒殺一人はキラービーと思われる刺し傷だらけで、おそらくキラービーを誘導して殺したものと思われます。もう一人の毒殺された死体は、足が腐っていて、バイパーの毒のような症状でしたので、そちらはたまたま噛まれたのかもしれません」
ルイスの小屋まで馬で走り、周囲を確認した後、もう戻ってきていたのだ。この世界の馬は速い。
「なるほどな。山に熟知していたから殺せたという感じか。それでも一人は斧か何かで顔面を割っているのだし、なかなかの手練れではあるな。ルイス少年の評判はどうだ?」
「そちらは、街の商店などで聞いてみましたが、あの少年、かなり評判が良いです。炭の質が良いのに、他の炭焼き職人と同じ買取額でも、文句一つ言わないとか、高品質の毛皮を安値で卸してくれるとか、悪く言う者は一人もいませんでした」
「サラから聞いた話でも、良い男だと言っていたからな。奴らがルイス少年の小屋に隠れようとしたのが、幸いしたな。他の場所だったら、サラがどうなっていたか、わかったもんじゃない」
「ですな。褒美はどうします?」
と聞いたのは、ウィンストン辺境伯屋敷の家令、セバスチャンだ。
「金で済ますのが簡単だが、金には困っていなさそうだな」
そう言って顎に手をやり、考え込むウィンストン辺境伯。
「小屋には風呂まであったらしいので、金には困ってはいないでしょう」
兵士が言うと、
「山の中の小屋に風呂とは、贅沢だな」
「私の家にも有りませんからね」
と、兵士が笑う。
「とりあえず奴らに掛けた懸賞金は、彼にちゃんと渡すとして、何か他にも褒美をやりたいな……」
このウィンストン辺境伯は、領民からの評判が良いのだが、おそらくこういう思考が評価されているのだろう。
「この後、一緒に夕食を取られるのでしょう? 本人に聞いてみては?」
セバスチャンの提案に、
「そうだな。そうするか!」
と、決めたウィンストン辺境伯であった。




