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郷愁

作者: 瀬川なつこ
掲載日:2020/12/08

昔懐かしい景色、どこかで見たことがある。

そんなときは前世を疑ったほうがいい。

どこか、懐かしくて郷愁的な詩たち。

想い出の電車が荒れ野を渡ります。

がたんがたん、ああ今君は何処にいるのだろう。

亡くしたルーペには君から盗んだ小鳥の羽が映っています。

鉱石ラジオでは相撲中継。

お父さん、お盆の時期はいつですか?

迎え火、送り火、しなくてはね、燈篭流し。

川が黄金色に輝いていて、道端のお地蔵さんも、微笑んでおります。

嗚呼、此処は夏の鳥籠の中。


電信柱の影から青入道がこちらを覗き込んでいる。

深淵とは、深い闇だ。好きな人がいるから、殺してしまおうと想ふ夕暮れ時。

ブリキのおもちゃが人知れず行進して、メトロポリタン美術館へ、誘ってきます。

その頃学校のトイレでは、赤い着物の少女が櫻の枝を片手に舞っています。


夜の学校は、墓場だ。昼間の子供たちの亡霊が徘徊する。

美術室の粘土の手や足。

音楽室のバッハやベートーヴェン。

トイレの中では、着物姿の少女が、花占いをしているよ。

机の上に花を置く遊び、

誰もゐない図書室で声を張り上げる遊び、

誰もゐないはずなのに…声が返ってくる。

夕暮れ黄昏。学校の中は亡霊で一杯だ。


夕暮れ黄昏の國。

お寺のお堂で、毬遊びをしている妹は、先日死んだばかりのはず。

祖父が、仏壇を磨いている、みな、死んだはずの昔の人。

思い出は、時に亡くなった人を蘇らせる。

荒れ野を行く電車は魂を運ぶよ。

彼岸と此岸の狭間を行く回送列車。

電柱の人影が警官になって、此方を見てかすかに嗤っているやうだ。

夕暮れの回送電車は、死んだ人を引きずっているよ。

此岸と彼岸のはざまで揺らめく列車の中の窓辺。

道のわきにはお地蔵様と、彼岸花。

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