郷愁
昔懐かしい景色、どこかで見たことがある。
そんなときは前世を疑ったほうがいい。
どこか、懐かしくて郷愁的な詩たち。
想い出の電車が荒れ野を渡ります。
がたんがたん、ああ今君は何処にいるのだろう。
亡くしたルーペには君から盗んだ小鳥の羽が映っています。
鉱石ラジオでは相撲中継。
お父さん、お盆の時期はいつですか?
迎え火、送り火、しなくてはね、燈篭流し。
川が黄金色に輝いていて、道端のお地蔵さんも、微笑んでおります。
嗚呼、此処は夏の鳥籠の中。
電信柱の影から青入道がこちらを覗き込んでいる。
深淵とは、深い闇だ。好きな人がいるから、殺してしまおうと想ふ夕暮れ時。
ブリキのおもちゃが人知れず行進して、メトロポリタン美術館へ、誘ってきます。
その頃学校のトイレでは、赤い着物の少女が櫻の枝を片手に舞っています。
夜の学校は、墓場だ。昼間の子供たちの亡霊が徘徊する。
美術室の粘土の手や足。
音楽室のバッハやベートーヴェン。
トイレの中では、着物姿の少女が、花占いをしているよ。
机の上に花を置く遊び、
誰もゐない図書室で声を張り上げる遊び、
誰もゐないはずなのに…声が返ってくる。
夕暮れ黄昏。学校の中は亡霊で一杯だ。
夕暮れ黄昏の國。
お寺のお堂で、毬遊びをしている妹は、先日死んだばかりのはず。
祖父が、仏壇を磨いている、みな、死んだはずの昔の人。
思い出は、時に亡くなった人を蘇らせる。
荒れ野を行く電車は魂を運ぶよ。
彼岸と此岸の狭間を行く回送列車。
電柱の人影が警官になって、此方を見てかすかに嗤っているやうだ。
夕暮れの回送電車は、死んだ人を引きずっているよ。
此岸と彼岸のはざまで揺らめく列車の中の窓辺。
道のわきにはお地蔵様と、彼岸花。




