ユリウス
「その少年を私に売ってはくれないだろうか?」
「えっ? 本当に此奴を買うのかい?」
「今日売れなければ、殺すつもりだったのだろう?」
「半年売れなければ殺処分する決まりだからな。買ってくれるのであればこっちとしては有難い話なんだが……、何というか大丈夫か?」
「君の言いたいことは分かる。この子には魔力回路が無く、使い道がないとでも言いたいんだろう。私にはね、この子でなければならない理由があるのさ」
「買ってくれるのなら何だっていい。書類を用意するから少し待っててくれ」
「待つ間、少し彼と話しても良いだろうか?」
「アンタが飼い主だ。好きにしな」
………………。
…………。
……。
…………。
……。
「初めまして。ギルド【ライオネルハート】のリーダー、ユリウスという者だ」
「だーう?」
「見た目に反して君の精神は赤ちゃん並みに退化してしまっているようだね」
「?」
「言葉の意味が通じないとは思うが聞いてくれ。私は後継を探していてね。一目見た時、是非とも君にお願いしたいと思ったんだ」
「こ、け?」
「そうだ。安心してくれていい。君が立派な戦士になれるよう、責任を持って私が育てると約束しよう」
「きゃはは」
「そうか、そうか。喜んで受け入れてくれるか」
……。
…………。
……。
…………。
「大事に握りしめているボロ杖は大切なモノらしいね。失礼、外装はボロを装っているが中身は大したモノだ」
「うー、うー」
「あまり振り回すと外装が割れてしまうぞ。この杖がレア度Sランク級の武器だということがバレてしまうではないか」
「?」
「これは君が作った杖だろう。巧みだな。芸術的とも言える。持ち主の力を最大限に引き出すことを目的とした良い杖だ」
……。
…………。
……。
「店主が戻ってきたようだね。さて、始めるとしよう」
「あう?」
「ギルド【ライオネルハート】のリーダーとなる勇者の物語を……」