少年は全てを奪われた
なろう初心者です。
お作法など右も左も分かりませんがご指摘頂ければ随時修正していきます。
興味があればブクマ、評価のほど入れて頂けると更新頻度が上がるかもです。
※あらすじの内容はプロローグ後から開始します(プロローグは2000字くらい)
「魔力回路の移植が成功しました。身体の調子はどうですか、勇者様」
「問題ない。驚きだな、これが僕の新しい力なのか……」
全身が熱い。
灼熱の鉛を血管に流されたかのような痛みが襲う。
徐々に意識が遠のいていく。
助けて。
隣に立つ2つの人影に手を伸ばそうとするが身体が動かない。
声を発することもできない。
歩み寄る死の恐怖。
嫌だ、死にたくない。
「動かないな。魔力回路を抜くと死んでしまうのか?」
「死にはしませんが、魔力回路は全身に流れる血流のようなモノ。無理矢理抜けば脳にも影響を与え、廃人同然となる可能性が高いでしょう」
魔力回路を抜かれた?
廃人?
何をされたか思い出せない。
今この瞬間も記憶のひとつひとつが零れ落ちていく感覚に恐怖している。
急速に知能が低下してるのか、言葉の意味すら理解できなくなっている。
「何にせよ、これで誰に邪魔されることなく聖女様は貴方のモノとなりますよ」
「そうか……。聞こえてるか分からないがアリアは僕が必ず守ると約束しよう」
聖女……、アリア、幼馴染。
君を守るために全てを捧げてきた。
でも、顔が思い出せない。
ずっと、側にいた筈なのに。
どうして、どうして、どうして?
忘れたくない。
右手にかろうじて触れていた杖の感触を確かめる。
アリアの誕生日に送ろうと準備していた杖。
これに触れていればキミを忘れることは無い。
きっと、繋ぎとめて、くる。
もう、自分の名前すら、分からないでも、君の記憶だけは……。
勇者でない、男が腰のロッド、取る。
「殺すつもりか?」
「跡形も無く消した方が今後のためですよ。いずれは心の無い木偶人形になってしまうのですから」
「それでも本能的に生きようとする意志はあるんだろう?生かしておいてやれ」
「確かに勇者として人殺しを容認した、という事実はまずいですか……。では、こうしましょう」
黒い、紙。
白文字の羅列。
文字、記号、分からない、あの字は、奴隷?
「奴隷として売る……か」
「運が良ければ心優しい主人が現れるでしょう。その可能性は低いでしょうが」
「分かった。それでいい」
「手続きは私の方で進めておきますよ。多少は報酬も入りますしね」
売られる。
消える。
意識も。
記憶も。
キミの声、姿……。
声、する。
「ユーリ君、貴方に素晴らしき第二の人生が訪れんことを」
………………。
…………。
……。